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第三章 争奪戦
第62話 誰にも言えない
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サリオンはレナの言葉を遮って、真実だけを口にした。
真正面からレナを見た。
狡くて弱くて卑劣な自分を晒け出し、身のすくむ思いで目を据える。
こんなにも醜い自分は見せたくなかった。嫌われたくないからだ。
だからといって、隠しているのは嘘と一緒だ。
レナはそれを怒っているのだ。
「その中で今、何を俺が一番に優先したいのかを考えるのなら、アルベルトだ」
レナの目を見てサリオンは、決然として言い切った。
レナは大きく目を見張り、息を呑むのが気配でわかる。
窓から射し込む月光が、立ちすくむレナを蒼く照らし、薄い影を床に伸ばした。
「アルベルトには、今すぐにでも世継ぎがいる。だけど俺には子供はできない。だからレナに助けて欲しい。アルベルトの子を産んでくれ」
「サリオン、だって……」
「きっとアルベルトも、自分の子供を産んでくれた相手になら、情だって湧くだろう。国の法でも世継ぎを産めば、オメガからアルファ階級に格上げされる。皇妃として王宮に迎え入れてもらえるはずだ。その子が帝位を継いだなら、番になった二人で平和に暮らしてくれ。お前もアルベルトも、俺には絶対手の届かない別世界の人達なんだと、俺に納得させてくれ」
そうでなければ誰もが何も、断ち切れない。
アルベルトへの思慕もレナへの嫉妬も胸にくすぶり、あるはずのないアルベルトとの未来を夢に見て、そのたび落胆するだろう。
「どうして子供ができないなんて……」
レナは納得いかない顔をした。
クルム人は、たとえ番を亡くしても、心から愛し合える相手ができれば、再び受胎が可能になる。
気持ちはあるのに、どうして子供ができないなんて決めつけるのだと、レナが目顔で訴える。
「ユーリスのことが……、忘れられない?」
「それもある」
「それも……って、じゃあ、他にも何かあるってこと?」
おずおずと遠慮がちに訊ねられたが、サリオンは眉をひそめて黙っていた。
「サリオン」
と、語気を強めたレナに腕を掴まれる。
返答をせがむように揺さぶられたが、サリオンは口を閉ざして目を逸らす。
これ以上はレナにも言えない。
アルベルトにも話せない。
言えばレナもアルベルトにも危害を及ぼす。危険に巻き込むことになる。
だから言わない。話せない。
頑なに口を噤むサリオンの腕をレナは離して、退いた。
火がついたように怒り狂っていたレナも、気が抜けたような顔になり、長椅子に座り込む。
「サリオンは……、陛下の御子を身籠れない……」
「そうだ」
「陛下はサリオンを愛していて、サリオンも陛下が好きなのに?」
真正面からレナを見た。
狡くて弱くて卑劣な自分を晒け出し、身のすくむ思いで目を据える。
こんなにも醜い自分は見せたくなかった。嫌われたくないからだ。
だからといって、隠しているのは嘘と一緒だ。
レナはそれを怒っているのだ。
「その中で今、何を俺が一番に優先したいのかを考えるのなら、アルベルトだ」
レナの目を見てサリオンは、決然として言い切った。
レナは大きく目を見張り、息を呑むのが気配でわかる。
窓から射し込む月光が、立ちすくむレナを蒼く照らし、薄い影を床に伸ばした。
「アルベルトには、今すぐにでも世継ぎがいる。だけど俺には子供はできない。だからレナに助けて欲しい。アルベルトの子を産んでくれ」
「サリオン、だって……」
「きっとアルベルトも、自分の子供を産んでくれた相手になら、情だって湧くだろう。国の法でも世継ぎを産めば、オメガからアルファ階級に格上げされる。皇妃として王宮に迎え入れてもらえるはずだ。その子が帝位を継いだなら、番になった二人で平和に暮らしてくれ。お前もアルベルトも、俺には絶対手の届かない別世界の人達なんだと、俺に納得させてくれ」
そうでなければ誰もが何も、断ち切れない。
アルベルトへの思慕もレナへの嫉妬も胸にくすぶり、あるはずのないアルベルトとの未来を夢に見て、そのたび落胆するだろう。
「どうして子供ができないなんて……」
レナは納得いかない顔をした。
クルム人は、たとえ番を亡くしても、心から愛し合える相手ができれば、再び受胎が可能になる。
気持ちはあるのに、どうして子供ができないなんて決めつけるのだと、レナが目顔で訴える。
「ユーリスのことが……、忘れられない?」
「それもある」
「それも……って、じゃあ、他にも何かあるってこと?」
おずおずと遠慮がちに訊ねられたが、サリオンは眉をひそめて黙っていた。
「サリオン」
と、語気を強めたレナに腕を掴まれる。
返答をせがむように揺さぶられたが、サリオンは口を閉ざして目を逸らす。
これ以上はレナにも言えない。
アルベルトにも話せない。
言えばレナもアルベルトにも危害を及ぼす。危険に巻き込むことになる。
だから言わない。話せない。
頑なに口を噤むサリオンの腕をレナは離して、退いた。
火がついたように怒り狂っていたレナも、気が抜けたような顔になり、長椅子に座り込む。
「サリオンは……、陛下の御子を身籠れない……」
「そうだ」
「陛下はサリオンを愛していて、サリオンも陛下が好きなのに?」
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