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ニ章
31話 大地の精霊
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「く、来るな! おいっ! テメェら俺の盾になれ!! 奴を近付けさせるな!!」
「だ、だが相手は大地の精霊様だ、我々の力でも抑え切れるものでは……!」
「黙れ! 黙れ黙れ黙れ!! 亜人如きが人に楯突くんじゃねぇ!!」
自分が標的とされている事に気付いた盗賊の男が慌てて背中を見せた。
察しが悪くとも、上位存在から殺意を向けられると危機感は抱くみたいだ。
呆然と立ち竦む獣人たちを押し遣り我先に逃げ走っている。
「そうやって仲間を見捨てて逃げるのですね……仕方がありません」
仮面の少女はゆっくりと確かな歩みで沼地を踏み抜いていく。
そこに泥濘なんて存在しない。彼女が足を乗せるだけで道になっている。
獣人たちが男の命令に従い壁となり始めた。
例え精霊様が相手であろうと、譲れないものがあるらしい。
「道を開けてください。邪魔立てするのであれば誰であろうと容赦はしません」
「我々も後には引けないのです! ここを通す訳には――なっ!? あ、足が動かない!?」
「に、逃げろっ! 石化だ!! 石化魔法だああああああ!!」
「手が、手がああああ!!」
「た、助けてくれええええええ!」
「駄目だ……精霊様に敵うはずがない……!」
「戦って死ぬならともかく、石像として生き恥を晒すのはごめんだ!!」
土属性でも最上位に属する石化魔法によって肉の壁が次々と石の彫像へと成り果てる。
生きたまま石にされる恐怖、それはただの死よりも恐ろしく冷酷だ。
磨き上げられた拳を振るう事も叶わず、誇りも尊厳も捨てて獣人たちは逃げ惑う。
「ひぃっ! く、来るな! 来るなあああああ!!」
「貴方に逃げ場なんてありません」
男の前方に巨大な山が立ち塞がった。
土人形の岩石の腕が大地を叩き割る。
揺れる樹海、衝撃で男は沼の中へと転がり落ちていく。
胸を強打しもがき苦しみながら沼地から這い上がるも、その腕を少女は容赦なく踏み抜く。
「イギャッ、だ、助けてぐれ……! お、俺は、ただ、オヤジに命じられて……! 俺だけ力を……得られなかったから……だがらっ!!」
「命乞いですか。……愚かしい男ですね」
顔中を泥と鼻水で汚し救いを求める盗賊の男。
元冒険者である犯罪者に対してのギルドの対応は非常に厳しいものだ。
財産没収もそうだけど、討伐依頼を受けたパーティには生殺与奪の権利も委ねられている。
端的に言えば誤って殺してしまっても罪には問われないという。
捕縛の際に、抵抗されたと誤魔化してしまえばそれだけで話が済まされてしまうのだ。
彼らの命の価値はその辺の魔物と同義といってもいい。もちろん最善なのは生きたまま捕らえることだけど。
それを一番理解しているであろう男は死の恐怖にのたうち回っていた。
「ヒィィィィィ、い、嫌だあああああ!! 殺さないでくれええええ!!」
「ノート様、待ってください! この男はまだ生かしておいた方が有益な情報を得られるかもしれません!」
「……との事ですが、貴方はどうしますか? このまま石像として朽ち果てるのか、仲間を売り生き恥を晒すか、どちらを選択するのですか?」
「話す! 何でも話すから!! だから命だけは!!」
「……お利口さんですね」
男の石化が止まった。
それに合わせて獣人たちの石化も解除される。
「はぁ……止められて良かった。……傍から見ていただけなのに冷や汗が止まらなかったよ」
「流石は精霊様ですね……。今の一連の流れが演技だったとは思いもしませんでした」
「いやぁ、本気で殺すつもりだったような気がするけど……?」
ノート様の怒りは同調している僕にもしっかりと伝わっていた。
距離が近いからか感情が直接的に届いて、僕まで殺されそうな錯覚を受けた。
盗賊団はこの男も含めて六人存在している。
ここで末端の一人を仕留めたところで何の解決にもならない。
少しは気分が晴れるのかもしれないけど、ただそれだけだ。
こんな小悪党の為に、ノート様の手を汚させる訳にはいかない。
「そ、それで、何から話せばいいんだ? ど、どうすれば許してくれる?」
「まずは組織の目的、それからあの子の情報を話してもらいましょうか」
「あの子だと……? ま、まさかオヤジが――」
――シュッ
「グェッ」
短い断末魔。
盗賊の男は口を開いた瞬間、血泡を吐き出す。
首の中心に一本の矢が貫いている。誰も気付く事ができなかった不可視の一矢だった。
「セレーネ、何故奴を殺した!? 我々にとっても有益な情報になり得たかもしれないんだぞ!」
「……裏切者は消すように命じられている。どこで奴らに監視されているかもわからん――精霊相手は分が悪すぎる、一旦退くぞ」
「くっ、そうか……わかった。おいっ、お前たち村に戻るぞ!」
獣尾を持つ闇妖精の少女の指示の元、獣人たちがこの場を去っていく。
男の亡骸は誰にも回収されず沼に放置されていた、遺体がそのまま地中深くへと沈んでいく。
見下していたはずの亜人に口封じとして消されてしまう皮肉。自業自得とはいえ哀れな末路だった。
「これで……終わり? ねぇねぇ。油断したところで襲って来たりしないよね?」
「……周囲に獣人の気配はありません。どうやら本当に村に戻られたみたいですね」
「は、はぁ……何とか生き延びる事ができた。今回も危なかった……!」
とりあえず一難去って安堵の溜め息を漏らす、僕たちは下が沼地なのも気にせず座り込んだ。
赤く滲んだ泥で身体を汚しながらも、生還した事実を噛みしめ互いに笑い合った。
ケイシアさんは仮面の少女の元に近付いていく。
「大地の精霊様、助けていただきありがとうございます。この御恩は一生涯忘れません」
「で、ですから……私は沼の精霊なのです! 大地の精霊では……!」
「えぇ……でも素顔は隠していても属性力までは隠せていませんよ? 獣人も大地の精霊様だって言ってたし。あっ、私みたいな青二才が生意気な事を言ってごめんなさい!」
ケイシアさんとリディアさんに詰め寄られ、仮面の少女は焦った様子で首を何度も横に振っていた。
多少魔法に精通している人なら子供でも気付ける変装だった、ノート様も意外とお茶目だ。
もしかしたら存外に力を隠すのは得意ではないのかもしれない。
「ニノはこちらを見ないでください! お願い……冷静でいられなくなるから……!」
今にも消え入りそうな小さな声。
僕の視線に気付いて肌を真っ赤にさせている。仮面を決して外れないように固定していた。
「…………」
幼い頃からずっと夢見てきたノート様との邂逅。
それが今叶ったというのにどうにも実感が湧かない。
岩の仮面という目に見える障害があるからだろうか。
それに彼女の拒絶とも取れる対応。
かといって嫌われているとも思えない、ノート様の好意はしっかりと伝わってくる。
これまで何度も助けてもらったのだからそれは疑いようがない。
……僕は一体どういう反応をするのが正解なんだろうか?
「え、何、この可愛い反応。乙女って感じがする――って痛っ!」
「もう、馬鹿な事を言っていないで。リディア、足の怪我は大丈夫なのですか?」
「さっきまで必死で忘れてたけど、意識したら痛くなってきた……つ、辛いかも……!」
リディアさんの足の傷は深く放置しておくのは危険だった。特にここは沼地で衛生状態も悪い。
かくいう僕も血が足りなくなってきた。世界が白く輝いている、酷い眩暈がしてきた。
「……私について来てください。落ち着ける場所で治療をしましょう」
◇
仮面の少女の後を追って樹海を進むと開かれた場所に出た。
薙ぎ倒された木々が積み重なっていて、綺麗に並べられている。
平たい丘にある小屋から一人の男性が出てきた。獣の耳がある。
「こんなところにも獣人!? まさか、私たちを追って……!」
「お、お待ちください。私は敵ではありません。……ノート様もご無事でしたか!」
「もうっレックまで! いいです。どうせ私はこういう立ち位置ですから。いつも空回りしてばかり……!」
誰からも本名で呼ばれてしまい、ノート様は渋々と正体を認めてしまった。
肩を落としながら小屋の中に入っていく、僕の知らない彼女の一面が次々と露呈して混乱する。
それでも嬉しく感じてしまう、もっと知りたいと思ってしまう。
「……? まぁとにかく皆さんもこちらへ。誰に見られているかもわかりません、急いで」
レックと呼ばれる獣人に通された小屋には、多くの廃材や道具が乱雑に置かれていた。
元は村の資材置き場として機能していたんだろうか、今は使われていないのか埃の量が凄まじい。
レックさんは邪魔な物を豪快に外に放り投げていく。
「狭苦しい場所ですみません。清掃も行き届いていなくて……ゴホッゴホッ、こりゃ酷い。これでしたらすぐ近くにある私の家の方がマシだったかもしれません。まぁそこは連中に見つかっているんですがね」
「お、お構いなく……」
先程まで獣人に手痛い歓迎を受けたのに、今度は手厚い歓迎をされている。妙な気分だった。
ゴミ処理を手伝いながら座れるだけの空間を作り、全員で腰を落ち着かせる。
それから早速本題に移る、今一番気になる部分を質問した。
「どうしてレックさんは僕たちの味方を? ノート様とも顔見知りみたいですけど……」
「いやぁ、それがですね。偶然にもつい最近まで私は買い出しに村を離れていまして、奴らに顔を覚えられていないのですよ。おかげでこうして自由に行動ができる訳でして。あっ、ちなみにギルドに盗賊団の討伐依頼を申請したのも私です。中級試験の課題として特別格安で受理してもらいました。ただその時はここまで事態が深刻になるとは思ってもいませんでしたがね」
レックさんは朗らかな性格なのか物言いがどこか軽い。
獣人らしいがっしりとした体躯と、威圧感のある彫りの深い顔つきに似合わない柔らかさだった。
どうやら僕たちが依頼を受け、樹海を彷徨っている間に連中は獣人を味方につけてしまったらしい。
問題はその方法だった。普通の盗賊が実力の上で勝る彼らを力尽くで従わせるなんて不可能だ。
何らかの魔法による洗脳であればまだ多少は納得できる。
でも明らかに彼らは自分たちの意思で行動を共にしていた。
「実はですね。我々の故郷であるアズバール村が今、存亡の機に陥っていまして。あぁ困りました」
「あの、それ、本当に困っているんですか……? 何かゆるくないですか?」
「リディア、レックさんに失礼です。それで……一体どのような危機が村を?」
「ここからカーマイル泉に繋がる山道までの道中に、川の氾濫を防ぐ為の堰と水門が設けられているのですが、それを盗賊団に占領されてしまったんです。ひとたび破壊されれば樹海ごと村を沈められてしまうのですよ」
「一大事じゃないですか!」
最近の不安定な気候による強い雨で、泉も含めて辺りを流れる川が危険水域に達しているらしい。
それだけでもかなり危うい状況なのに、増水した水を堰き止める水門を破壊されてしまえばどうなる事か。
「村の連中は私を除く全員が奴らに従っています。聞けば家畜のような扱いを受けていたり、女子供はいずれ物好きな貴族連中に売られるとかなんとか」
「そんな、酷い……!」
「でも、村を捨てて逃げる事はできなかったのかな……? みんなで抵抗すれば負けるとは思えないけど」
「私もそう思うのですがね。説得はしているのですが彼らも強情なもので……はぁ困った困った」
レックさんは相変わらず他人事のように話していた。
亜人にしては珍しく、故郷に特別な想いは秘めていないらしい。
何に増しても命の方が大事だという、現実的な思考の持ち主だった。
それでも、その考え方はあくまで少数派のもので。
亜人の多くは生まれ育った土地を何よりも大切にしている。
戦争に敗れ行き場を失った彼らが、一から築き守り続けてきた自分たちの世界。
数百年が経ち子孫に託された想いは、命よりも大切な誇りとして昇華されているはずだ。
「ニノが中級試験でこの地を訪れると知り、有事の際に隠れ家として機能できるよう、前もって行き場を失っていたレックに管理人となってもらったのです。御覧の通り、掃除はサボっていたようですが。――身体に触れますね」
ノート様はそう補足すると、鞄から消毒液と包帯を取り出し僕の腕に巻いていく。
事前に必要物資を揃えてくれたみたいだ、この状況下ではとてもありがたい。
レックさんは買い出しの帰りだと言っていただけに、食料も豊富に蓄えられていた。
「痛くはありませんか……? 初めてですので、上手くできているかどうか……」
「あ、いえ……全然大丈夫です。これくらい我慢できますよ。僕も男ですから!」
「そうですね。ニノも大きくなりましたものね……」
痛みはあるけどそれ以上にむず痒かった。直接触れた肌が熱を帯びだしている。
仮面が邪魔なのかノート様の指が微かに震えていた、気付かせないようにしているのもわかる。
優しくも不器用な手つきだった。
「あー痛い! ケイシア不器用! もっと優しくしてよ!!」
「ご、ごめんなさい。昔からこういった細かい作業が苦手でして……って大きな声を出したら他の獣人の方々に気付かれてしまうでしょ!」
「それは大丈夫です。村の連中はここに私が潜んでいる事を把握していて、あえて周辺には近付かないようにしているみたいですから。それに実はこっそり連絡も取り合っているんですよ?」
「よかった。これで遠慮なく声が出せる。あーーーー痛い!!」
「もう、だからってリディアは調子に乗り過ぎです!」
それもそうか。
レックさんが村を離れているのを獣人たちが知らないはずがなかった。
多分、時間を稼いでいる間に彼に何とかしてもらう算段……なんだと思う。
肝心のレックさんのやる気が見られないのが少しアレだけど、連絡手段があるのを知れたのは僥倖だった。
これで取れる作戦の幅が広がる。
「ギルドへの報告はどうしましょうか、カイルとエイルは街で待機しているみたいですが」
「彼らと連絡を取り合えるんですか?」
ケイシアさんは片耳に付けていた薄い赤色の耳飾りを外すと手のひらに乗せる。
そこからは転移石と似た小さな魔力の反応が発せられていた。
「ニノさんはご存じないかと思われますが、ユニオンではギルド登録の際に互いに連絡を取り合える道具を共通装備として贈る慣わしがあるのです」
「ふふ~ん、便利でしょ? まぁ妨害魔法に感知されないくらいの必要最低限の魔力しか籠められていないから、伝えられる言葉数に限度があるんだけどね」
リディアさんからは鈍く輝く玩具の指輪を見せてもらう。
それぞれ異なった形をした道具なのらしい。早速、街に戻った二人に言付けをお願いする。
その際、ギルド長にのみ詳しい事情を通しておく事にした。
この一件が街に伝わり大事になれば獣人たちの立場が危うくなる。
村の存亡に関わらず、それだけは何としてでも避けないといけない。
僕たちを匿ってくれているレックさんも、街の住人と関係が悪化するのは望んでいないはず。
闇精霊であるフィアーを庇ってくれたダブラスさんなら、悪いようにはならないと信じている。
「皆様のご配慮に感謝します。問題が解決した暁には、数百倍にして返させて頂きますので。これ、獣人の信条でしてね。受けた恩は相手が死ぬまで返せという先代からの教えです」
「それはちょっと重いかなぁ……?」
「お気持ちだけ受け取っておきますね」
彼と話していると何だか力が抜けてしまう。
とにかく僕たちの方針はこれまでと変わらない、このまま自力で盗賊団を壊滅させる。
ギルドからの援軍は望めないけど、個人での頼みなら問題ないだろう。
街にいる二人にもう一つお願い事をしておいた。
「そういえばもう一つ気になった事があるんですが」
「はて? 一体何でしょうか? 答えられるなら何でもお答えしますが」
「僕には盗賊団が水門を破壊するほどの力を有しているとは思えないんです。どうやら中央から逃げ込んできた弱小勢力らしいですし、殺された男も大した実力じゃなかった。どういった手段で獣人たちを出し抜き占領したんでしょうか?」
長年に渡り村を守り続けてきたであろう重要な施設だ。
そう簡単に破壊できる代物ではなさそうだし、当然管理者もいたはず。
「確かに、たかだか数人程度の人族に破壊されるほどやわな造りはしていません。ですが……裏に人族以外の人物がいたとなれば話は別です」
それ以上は話し辛そうに言葉を濁すレックさん。
頻りに隣に座る精霊様の顔色を覗っている。
黙り込んでしまった彼の代わりに、ノート様が後を引き継いだ。
「盗賊団に力を貸している精霊がいます。彼女の力を得る事で、一時的に獣人を上回る戦闘力を手にしたのでしょう。これは忌々しき事態です、私の力でも抑えられるかどうか……」
「精霊様が盗賊団にですか!? そんな……考えられない!!」
精霊様は性格にやや難のある方が多いとはいえ、上位存在としての矜持というものがある。
悪党に堕ちてしまえば当然、人族からの信仰も得られず、ゆくゆくは衰退してしまう。
そんな自らの尊厳を傷付けるような行動を取るとは到底思えない。
「ニノ、安心してください。あの子は――ウィズリィは生まれ直したばかりで、きっと善悪の区別がついていないだけなの。しっかりと説明すればわかってくれるはずです」
「生まれ直したって……もしかして転生ですか? ウィズリィ様が?」
精霊術師として、転生の知識は当然持ち合わせている。
肉体と精神を一度リセットして、力を保持したまま赤ん坊の状態に戻る。
永劫の時を生き続ける精霊様独自の技能だ。なるほど、それなら納得ができる。
ウィズリィ様は転生の最中に、領域内に踏み込んで来た盗賊団に興味を示してしまったんだ。
そして当然、奴らも精霊様の強大な力に興味を持ち、そして渇望した。
生まれたばかりの精霊様は、子供のような真っ白な純粋さから他者と同調しやすい。
それが誰であろうと無意識に力を貸してしまうんだ、つい最近トルがアーダンと繋がったみたいに。
「と、いう事は盗賊団は全員……水の精霊術師ですか」
「えぇ……このまま戦って私たちに勝ち目あるのかな? 明らかに戦力が足りていない気が……!」
「参ったな、フィリスが五人いるのと同じなのか……あっ、フィリスっていうのは僕の幼馴染でして、水の精霊術師なんですよね」
水の精霊様が相手となれば水門や堰は意味を成さない。
獣人たちが素直に従っている理由もわかる、この場合ノート様でも下手に動く事ができない。
精霊様同士がぶつかれば建物はおろか、土地環境さえも破壊しかねないから。氾濫どころの騒ぎじゃない。
「そのフィリスさんという方がいらっしゃれば、水の精霊様の力を抑制できるのでは?」
「ケイシアさんよくご存じですね。確かに、同じ属性の精霊術師が一カ所に集まればどちらか一方に力が偏るはず」
「へーそうなんだ、ちなみにその人は強いんですか? ニノさんと同じ精霊術師なんですよね?」
「僕より少し強いくらいかなぁ……? 何度も手合わせしたけど一度も勝てた覚えがないかも」
「ええっ!? ニノさんより強いって……ポートセルトのギルドは化け物揃い!?」
「世界は広いのですね……中央では常にユニオン単位で動いているので基本的に腕前の近い方々と関わる事が多いのですが、個人主義だからこそ強者と交わる機会が増えるのですね」
「そ、そうなのかなぁ? ……何だか僕の周りにだけ密集しているような気もするけど」
フィリスの力さえ借りられれば、きっと上手くいく。
ウィズリィ様との付き合いも盗賊団より長いんだ、必ず主導権を握ってくれるはず。
あとはどうやって連中と接触するかだろうか、その辺は主役が揃ってから考えても遅くないかな。
◇
「ニノ、ニノ! 会いたかった……!」
「わっ、四日ぶりだねトル。元気にしてた? 寂しくなかった? フィアーに虐められていない?」
「……寂しかった。フィアは、いつも……意地悪。嫌いな……野菜、トルに食べさせるもん」
飛び込んできた小さな身体を全身で受け止める。
若干傷に響くけど、それ以上に喜んでくれるトルを見ていると嫌な事も全て吹き飛んでしまう。
彼女と別れて寂しかったのは僕の方だ、すっかり子離れができない親みたいになってる。
「ちょっと、トルはまた誤解されるようなことを! 私は貴方の将来を考えて――ゴホッゴホッ、何、この汚い家畜小屋は……ってニノ、その怪我はどうしたの? 誰にやられたの!?」
次に顔を出したフィアーは、コロコロと表情を変えては悪態をついていた。
そして僕の状態に気付いて、身体をペタペタと必要以上に触れて問い詰めてくる。
「い、痛いから優しくして欲しいかな……。というかあんまり触らないで……」
「久しぶりに再会したというのに生意気な口を開くのね。トルはよくて私が駄目な道理はないでしょ?」
「や、やめっ! 久しぶりって……まだ四日目だよ?」
「ふんっ、何よ、心配してあげていたのに。ニノの馬鹿!!」
不機嫌を隠さずに、僕の義手を何度も叩いている。
もしかしてフィアーも寂しかったとか? 聞くと怒られそうだ。
「あぁ……死ぬかと思った……。空を飛ぶのはもう懲り懲りだよぉ……」
最後に死人みたいな血色の悪い顔で扉前に倒れ込む幼馴染。
二人の精霊様に引き連れられ空の散歩を楽しんできたらしい、既にフィリスはボロボロだった。
「事情は……《風炎》の人たちから全部聞いてきたけど……。ちょっと休ませて……ヴォエ」
「だ、大丈夫ですか!? お背中を擦りますね」
「あ……ありがとう、ケイシアさん。鎧が邪魔だけど意外とお胸大きいね」
「ひゃっ!? 何を仰っているのですか!? 私たち初対面ですよね……?」
「うぅ……膝枕して欲しいなぁ……。柔らかい膝をご所望だよぉ……」
「あはは、フィリスさんって面白い人だね」
さっそくフィリスお得意のスキルが発動している。
ああやっていつも他人の懐の隙に入り込み仲を深めていくんだ。
友人が少ない僕には遠い世界の住人だった。まぁそれでも今回は本当に気分が悪そうだけど。
「あの調子で大丈夫かな……? 今回の作戦の要なのに心配だ」
「ニノの周りはいつも賑やかですね。退屈している暇もなさそうです」
「そ、そうですか? 大体の原因はフィリスだと思いますけど……!」
「それが悪いだなんて一言も言ってませんよ。ふふっ、いい友人を持ちましたね?」
隣でノート様は本当に嬉しそうに微笑んでいる。
確かに僕には勿体ないくらいできた友人だ、本当は――これは思うだけでも許されない事だけど。
僕と同じ精霊術師になってくれて、同じ道を進んでくれて心の底から感謝していたりする。
代償があまりにも大きくて、決して本人を前にして言葉には出せないけど。
「そこにいるのは……もしかしてノート? こんな所で何をやってるのよ。それにその仮面……ふーん」
「……何か言いたい事でもあるのですか?」
「ヘタレ」
「……意地悪です」
フィアーはノート様を相手に挑発していた。
二人が何かと競い合う関係なのは以前から知っていたけど、ここまでムキになるのも珍しい。
昔からの付き合いらしいので、僕にも知らない因縁でもあるんだろう。
「はいはーい。こうして新顔もたくさん集まったんだからみんなで親睦会でもしない? どうせもう時間も遅いし、作戦は明日に持ち越しでしょ?」
「それはいいですね! 都合よくここには材料もたくさんありますし、せっかくですから皆様に獣人族に伝わる伝統料理を振る舞いますよ! 豪快に焼きますよ!」
「フィリスさんにレックさんも……そんな悠長な事をしている場合では……!」
「別にいいじゃない。大事な決戦を前に英気を養うのも冒険者の務めでしょ!」
「リディアまで……! ニノさんからも何か言ってください!」
陽気な三人組に囲まれて弱腰になるケイシアさん。
対して僕も三人の精霊様に囲まれていて、何とも反論し辛い空気に巻き込まれていた。
「ちょっとノート、もう少し離れなさいよ。ニノは私の物なのよ、気安く触らないでくれる?」
「どうしてですか? ニノを治療したのは私なのですから傍にいる権利ぐらいはあるでしょう? それにいつから彼はフィアーの所有物になったのですか? それなら私は幼少の頃から――」
「うわぁ……その頃から狙っていたのね。………危険思想だわ」
「違います! 見守っていただけです! 彼に誤解されるような事を言わないでください!!」
「……ニノ、あっち、行こう? 静かだよ?」
フィアーとノート様の間で謎のポジション争いが始まり、トルはこっそり僕を連れ出そうとしている。
下手に刺激して機嫌を悪くさせてしまうと、今後の戦いに大きな影響が生まれそうだ。
ここは少しでも僕が間に入って仲を取り持つ必要がある気がしてきた。
「ケイシアさん、諦めて――親睦会を開きましょうか……!」
「ニノさんもですか……!」
「だ、だが相手は大地の精霊様だ、我々の力でも抑え切れるものでは……!」
「黙れ! 黙れ黙れ黙れ!! 亜人如きが人に楯突くんじゃねぇ!!」
自分が標的とされている事に気付いた盗賊の男が慌てて背中を見せた。
察しが悪くとも、上位存在から殺意を向けられると危機感は抱くみたいだ。
呆然と立ち竦む獣人たちを押し遣り我先に逃げ走っている。
「そうやって仲間を見捨てて逃げるのですね……仕方がありません」
仮面の少女はゆっくりと確かな歩みで沼地を踏み抜いていく。
そこに泥濘なんて存在しない。彼女が足を乗せるだけで道になっている。
獣人たちが男の命令に従い壁となり始めた。
例え精霊様が相手であろうと、譲れないものがあるらしい。
「道を開けてください。邪魔立てするのであれば誰であろうと容赦はしません」
「我々も後には引けないのです! ここを通す訳には――なっ!? あ、足が動かない!?」
「に、逃げろっ! 石化だ!! 石化魔法だああああああ!!」
「手が、手がああああ!!」
「た、助けてくれええええええ!」
「駄目だ……精霊様に敵うはずがない……!」
「戦って死ぬならともかく、石像として生き恥を晒すのはごめんだ!!」
土属性でも最上位に属する石化魔法によって肉の壁が次々と石の彫像へと成り果てる。
生きたまま石にされる恐怖、それはただの死よりも恐ろしく冷酷だ。
磨き上げられた拳を振るう事も叶わず、誇りも尊厳も捨てて獣人たちは逃げ惑う。
「ひぃっ! く、来るな! 来るなあああああ!!」
「貴方に逃げ場なんてありません」
男の前方に巨大な山が立ち塞がった。
土人形の岩石の腕が大地を叩き割る。
揺れる樹海、衝撃で男は沼の中へと転がり落ちていく。
胸を強打しもがき苦しみながら沼地から這い上がるも、その腕を少女は容赦なく踏み抜く。
「イギャッ、だ、助けてぐれ……! お、俺は、ただ、オヤジに命じられて……! 俺だけ力を……得られなかったから……だがらっ!!」
「命乞いですか。……愚かしい男ですね」
顔中を泥と鼻水で汚し救いを求める盗賊の男。
元冒険者である犯罪者に対してのギルドの対応は非常に厳しいものだ。
財産没収もそうだけど、討伐依頼を受けたパーティには生殺与奪の権利も委ねられている。
端的に言えば誤って殺してしまっても罪には問われないという。
捕縛の際に、抵抗されたと誤魔化してしまえばそれだけで話が済まされてしまうのだ。
彼らの命の価値はその辺の魔物と同義といってもいい。もちろん最善なのは生きたまま捕らえることだけど。
それを一番理解しているであろう男は死の恐怖にのたうち回っていた。
「ヒィィィィィ、い、嫌だあああああ!! 殺さないでくれええええ!!」
「ノート様、待ってください! この男はまだ生かしておいた方が有益な情報を得られるかもしれません!」
「……との事ですが、貴方はどうしますか? このまま石像として朽ち果てるのか、仲間を売り生き恥を晒すか、どちらを選択するのですか?」
「話す! 何でも話すから!! だから命だけは!!」
「……お利口さんですね」
男の石化が止まった。
それに合わせて獣人たちの石化も解除される。
「はぁ……止められて良かった。……傍から見ていただけなのに冷や汗が止まらなかったよ」
「流石は精霊様ですね……。今の一連の流れが演技だったとは思いもしませんでした」
「いやぁ、本気で殺すつもりだったような気がするけど……?」
ノート様の怒りは同調している僕にもしっかりと伝わっていた。
距離が近いからか感情が直接的に届いて、僕まで殺されそうな錯覚を受けた。
盗賊団はこの男も含めて六人存在している。
ここで末端の一人を仕留めたところで何の解決にもならない。
少しは気分が晴れるのかもしれないけど、ただそれだけだ。
こんな小悪党の為に、ノート様の手を汚させる訳にはいかない。
「そ、それで、何から話せばいいんだ? ど、どうすれば許してくれる?」
「まずは組織の目的、それからあの子の情報を話してもらいましょうか」
「あの子だと……? ま、まさかオヤジが――」
――シュッ
「グェッ」
短い断末魔。
盗賊の男は口を開いた瞬間、血泡を吐き出す。
首の中心に一本の矢が貫いている。誰も気付く事ができなかった不可視の一矢だった。
「セレーネ、何故奴を殺した!? 我々にとっても有益な情報になり得たかもしれないんだぞ!」
「……裏切者は消すように命じられている。どこで奴らに監視されているかもわからん――精霊相手は分が悪すぎる、一旦退くぞ」
「くっ、そうか……わかった。おいっ、お前たち村に戻るぞ!」
獣尾を持つ闇妖精の少女の指示の元、獣人たちがこの場を去っていく。
男の亡骸は誰にも回収されず沼に放置されていた、遺体がそのまま地中深くへと沈んでいく。
見下していたはずの亜人に口封じとして消されてしまう皮肉。自業自得とはいえ哀れな末路だった。
「これで……終わり? ねぇねぇ。油断したところで襲って来たりしないよね?」
「……周囲に獣人の気配はありません。どうやら本当に村に戻られたみたいですね」
「は、はぁ……何とか生き延びる事ができた。今回も危なかった……!」
とりあえず一難去って安堵の溜め息を漏らす、僕たちは下が沼地なのも気にせず座り込んだ。
赤く滲んだ泥で身体を汚しながらも、生還した事実を噛みしめ互いに笑い合った。
ケイシアさんは仮面の少女の元に近付いていく。
「大地の精霊様、助けていただきありがとうございます。この御恩は一生涯忘れません」
「で、ですから……私は沼の精霊なのです! 大地の精霊では……!」
「えぇ……でも素顔は隠していても属性力までは隠せていませんよ? 獣人も大地の精霊様だって言ってたし。あっ、私みたいな青二才が生意気な事を言ってごめんなさい!」
ケイシアさんとリディアさんに詰め寄られ、仮面の少女は焦った様子で首を何度も横に振っていた。
多少魔法に精通している人なら子供でも気付ける変装だった、ノート様も意外とお茶目だ。
もしかしたら存外に力を隠すのは得意ではないのかもしれない。
「ニノはこちらを見ないでください! お願い……冷静でいられなくなるから……!」
今にも消え入りそうな小さな声。
僕の視線に気付いて肌を真っ赤にさせている。仮面を決して外れないように固定していた。
「…………」
幼い頃からずっと夢見てきたノート様との邂逅。
それが今叶ったというのにどうにも実感が湧かない。
岩の仮面という目に見える障害があるからだろうか。
それに彼女の拒絶とも取れる対応。
かといって嫌われているとも思えない、ノート様の好意はしっかりと伝わってくる。
これまで何度も助けてもらったのだからそれは疑いようがない。
……僕は一体どういう反応をするのが正解なんだろうか?
「え、何、この可愛い反応。乙女って感じがする――って痛っ!」
「もう、馬鹿な事を言っていないで。リディア、足の怪我は大丈夫なのですか?」
「さっきまで必死で忘れてたけど、意識したら痛くなってきた……つ、辛いかも……!」
リディアさんの足の傷は深く放置しておくのは危険だった。特にここは沼地で衛生状態も悪い。
かくいう僕も血が足りなくなってきた。世界が白く輝いている、酷い眩暈がしてきた。
「……私について来てください。落ち着ける場所で治療をしましょう」
◇
仮面の少女の後を追って樹海を進むと開かれた場所に出た。
薙ぎ倒された木々が積み重なっていて、綺麗に並べられている。
平たい丘にある小屋から一人の男性が出てきた。獣の耳がある。
「こんなところにも獣人!? まさか、私たちを追って……!」
「お、お待ちください。私は敵ではありません。……ノート様もご無事でしたか!」
「もうっレックまで! いいです。どうせ私はこういう立ち位置ですから。いつも空回りしてばかり……!」
誰からも本名で呼ばれてしまい、ノート様は渋々と正体を認めてしまった。
肩を落としながら小屋の中に入っていく、僕の知らない彼女の一面が次々と露呈して混乱する。
それでも嬉しく感じてしまう、もっと知りたいと思ってしまう。
「……? まぁとにかく皆さんもこちらへ。誰に見られているかもわかりません、急いで」
レックと呼ばれる獣人に通された小屋には、多くの廃材や道具が乱雑に置かれていた。
元は村の資材置き場として機能していたんだろうか、今は使われていないのか埃の量が凄まじい。
レックさんは邪魔な物を豪快に外に放り投げていく。
「狭苦しい場所ですみません。清掃も行き届いていなくて……ゴホッゴホッ、こりゃ酷い。これでしたらすぐ近くにある私の家の方がマシだったかもしれません。まぁそこは連中に見つかっているんですがね」
「お、お構いなく……」
先程まで獣人に手痛い歓迎を受けたのに、今度は手厚い歓迎をされている。妙な気分だった。
ゴミ処理を手伝いながら座れるだけの空間を作り、全員で腰を落ち着かせる。
それから早速本題に移る、今一番気になる部分を質問した。
「どうしてレックさんは僕たちの味方を? ノート様とも顔見知りみたいですけど……」
「いやぁ、それがですね。偶然にもつい最近まで私は買い出しに村を離れていまして、奴らに顔を覚えられていないのですよ。おかげでこうして自由に行動ができる訳でして。あっ、ちなみにギルドに盗賊団の討伐依頼を申請したのも私です。中級試験の課題として特別格安で受理してもらいました。ただその時はここまで事態が深刻になるとは思ってもいませんでしたがね」
レックさんは朗らかな性格なのか物言いがどこか軽い。
獣人らしいがっしりとした体躯と、威圧感のある彫りの深い顔つきに似合わない柔らかさだった。
どうやら僕たちが依頼を受け、樹海を彷徨っている間に連中は獣人を味方につけてしまったらしい。
問題はその方法だった。普通の盗賊が実力の上で勝る彼らを力尽くで従わせるなんて不可能だ。
何らかの魔法による洗脳であればまだ多少は納得できる。
でも明らかに彼らは自分たちの意思で行動を共にしていた。
「実はですね。我々の故郷であるアズバール村が今、存亡の機に陥っていまして。あぁ困りました」
「あの、それ、本当に困っているんですか……? 何かゆるくないですか?」
「リディア、レックさんに失礼です。それで……一体どのような危機が村を?」
「ここからカーマイル泉に繋がる山道までの道中に、川の氾濫を防ぐ為の堰と水門が設けられているのですが、それを盗賊団に占領されてしまったんです。ひとたび破壊されれば樹海ごと村を沈められてしまうのですよ」
「一大事じゃないですか!」
最近の不安定な気候による強い雨で、泉も含めて辺りを流れる川が危険水域に達しているらしい。
それだけでもかなり危うい状況なのに、増水した水を堰き止める水門を破壊されてしまえばどうなる事か。
「村の連中は私を除く全員が奴らに従っています。聞けば家畜のような扱いを受けていたり、女子供はいずれ物好きな貴族連中に売られるとかなんとか」
「そんな、酷い……!」
「でも、村を捨てて逃げる事はできなかったのかな……? みんなで抵抗すれば負けるとは思えないけど」
「私もそう思うのですがね。説得はしているのですが彼らも強情なもので……はぁ困った困った」
レックさんは相変わらず他人事のように話していた。
亜人にしては珍しく、故郷に特別な想いは秘めていないらしい。
何に増しても命の方が大事だという、現実的な思考の持ち主だった。
それでも、その考え方はあくまで少数派のもので。
亜人の多くは生まれ育った土地を何よりも大切にしている。
戦争に敗れ行き場を失った彼らが、一から築き守り続けてきた自分たちの世界。
数百年が経ち子孫に託された想いは、命よりも大切な誇りとして昇華されているはずだ。
「ニノが中級試験でこの地を訪れると知り、有事の際に隠れ家として機能できるよう、前もって行き場を失っていたレックに管理人となってもらったのです。御覧の通り、掃除はサボっていたようですが。――身体に触れますね」
ノート様はそう補足すると、鞄から消毒液と包帯を取り出し僕の腕に巻いていく。
事前に必要物資を揃えてくれたみたいだ、この状況下ではとてもありがたい。
レックさんは買い出しの帰りだと言っていただけに、食料も豊富に蓄えられていた。
「痛くはありませんか……? 初めてですので、上手くできているかどうか……」
「あ、いえ……全然大丈夫です。これくらい我慢できますよ。僕も男ですから!」
「そうですね。ニノも大きくなりましたものね……」
痛みはあるけどそれ以上にむず痒かった。直接触れた肌が熱を帯びだしている。
仮面が邪魔なのかノート様の指が微かに震えていた、気付かせないようにしているのもわかる。
優しくも不器用な手つきだった。
「あー痛い! ケイシア不器用! もっと優しくしてよ!!」
「ご、ごめんなさい。昔からこういった細かい作業が苦手でして……って大きな声を出したら他の獣人の方々に気付かれてしまうでしょ!」
「それは大丈夫です。村の連中はここに私が潜んでいる事を把握していて、あえて周辺には近付かないようにしているみたいですから。それに実はこっそり連絡も取り合っているんですよ?」
「よかった。これで遠慮なく声が出せる。あーーーー痛い!!」
「もう、だからってリディアは調子に乗り過ぎです!」
それもそうか。
レックさんが村を離れているのを獣人たちが知らないはずがなかった。
多分、時間を稼いでいる間に彼に何とかしてもらう算段……なんだと思う。
肝心のレックさんのやる気が見られないのが少しアレだけど、連絡手段があるのを知れたのは僥倖だった。
これで取れる作戦の幅が広がる。
「ギルドへの報告はどうしましょうか、カイルとエイルは街で待機しているみたいですが」
「彼らと連絡を取り合えるんですか?」
ケイシアさんは片耳に付けていた薄い赤色の耳飾りを外すと手のひらに乗せる。
そこからは転移石と似た小さな魔力の反応が発せられていた。
「ニノさんはご存じないかと思われますが、ユニオンではギルド登録の際に互いに連絡を取り合える道具を共通装備として贈る慣わしがあるのです」
「ふふ~ん、便利でしょ? まぁ妨害魔法に感知されないくらいの必要最低限の魔力しか籠められていないから、伝えられる言葉数に限度があるんだけどね」
リディアさんからは鈍く輝く玩具の指輪を見せてもらう。
それぞれ異なった形をした道具なのらしい。早速、街に戻った二人に言付けをお願いする。
その際、ギルド長にのみ詳しい事情を通しておく事にした。
この一件が街に伝わり大事になれば獣人たちの立場が危うくなる。
村の存亡に関わらず、それだけは何としてでも避けないといけない。
僕たちを匿ってくれているレックさんも、街の住人と関係が悪化するのは望んでいないはず。
闇精霊であるフィアーを庇ってくれたダブラスさんなら、悪いようにはならないと信じている。
「皆様のご配慮に感謝します。問題が解決した暁には、数百倍にして返させて頂きますので。これ、獣人の信条でしてね。受けた恩は相手が死ぬまで返せという先代からの教えです」
「それはちょっと重いかなぁ……?」
「お気持ちだけ受け取っておきますね」
彼と話していると何だか力が抜けてしまう。
とにかく僕たちの方針はこれまでと変わらない、このまま自力で盗賊団を壊滅させる。
ギルドからの援軍は望めないけど、個人での頼みなら問題ないだろう。
街にいる二人にもう一つお願い事をしておいた。
「そういえばもう一つ気になった事があるんですが」
「はて? 一体何でしょうか? 答えられるなら何でもお答えしますが」
「僕には盗賊団が水門を破壊するほどの力を有しているとは思えないんです。どうやら中央から逃げ込んできた弱小勢力らしいですし、殺された男も大した実力じゃなかった。どういった手段で獣人たちを出し抜き占領したんでしょうか?」
長年に渡り村を守り続けてきたであろう重要な施設だ。
そう簡単に破壊できる代物ではなさそうだし、当然管理者もいたはず。
「確かに、たかだか数人程度の人族に破壊されるほどやわな造りはしていません。ですが……裏に人族以外の人物がいたとなれば話は別です」
それ以上は話し辛そうに言葉を濁すレックさん。
頻りに隣に座る精霊様の顔色を覗っている。
黙り込んでしまった彼の代わりに、ノート様が後を引き継いだ。
「盗賊団に力を貸している精霊がいます。彼女の力を得る事で、一時的に獣人を上回る戦闘力を手にしたのでしょう。これは忌々しき事態です、私の力でも抑えられるかどうか……」
「精霊様が盗賊団にですか!? そんな……考えられない!!」
精霊様は性格にやや難のある方が多いとはいえ、上位存在としての矜持というものがある。
悪党に堕ちてしまえば当然、人族からの信仰も得られず、ゆくゆくは衰退してしまう。
そんな自らの尊厳を傷付けるような行動を取るとは到底思えない。
「ニノ、安心してください。あの子は――ウィズリィは生まれ直したばかりで、きっと善悪の区別がついていないだけなの。しっかりと説明すればわかってくれるはずです」
「生まれ直したって……もしかして転生ですか? ウィズリィ様が?」
精霊術師として、転生の知識は当然持ち合わせている。
肉体と精神を一度リセットして、力を保持したまま赤ん坊の状態に戻る。
永劫の時を生き続ける精霊様独自の技能だ。なるほど、それなら納得ができる。
ウィズリィ様は転生の最中に、領域内に踏み込んで来た盗賊団に興味を示してしまったんだ。
そして当然、奴らも精霊様の強大な力に興味を持ち、そして渇望した。
生まれたばかりの精霊様は、子供のような真っ白な純粋さから他者と同調しやすい。
それが誰であろうと無意識に力を貸してしまうんだ、つい最近トルがアーダンと繋がったみたいに。
「と、いう事は盗賊団は全員……水の精霊術師ですか」
「えぇ……このまま戦って私たちに勝ち目あるのかな? 明らかに戦力が足りていない気が……!」
「参ったな、フィリスが五人いるのと同じなのか……あっ、フィリスっていうのは僕の幼馴染でして、水の精霊術師なんですよね」
水の精霊様が相手となれば水門や堰は意味を成さない。
獣人たちが素直に従っている理由もわかる、この場合ノート様でも下手に動く事ができない。
精霊様同士がぶつかれば建物はおろか、土地環境さえも破壊しかねないから。氾濫どころの騒ぎじゃない。
「そのフィリスさんという方がいらっしゃれば、水の精霊様の力を抑制できるのでは?」
「ケイシアさんよくご存じですね。確かに、同じ属性の精霊術師が一カ所に集まればどちらか一方に力が偏るはず」
「へーそうなんだ、ちなみにその人は強いんですか? ニノさんと同じ精霊術師なんですよね?」
「僕より少し強いくらいかなぁ……? 何度も手合わせしたけど一度も勝てた覚えがないかも」
「ええっ!? ニノさんより強いって……ポートセルトのギルドは化け物揃い!?」
「世界は広いのですね……中央では常にユニオン単位で動いているので基本的に腕前の近い方々と関わる事が多いのですが、個人主義だからこそ強者と交わる機会が増えるのですね」
「そ、そうなのかなぁ? ……何だか僕の周りにだけ密集しているような気もするけど」
フィリスの力さえ借りられれば、きっと上手くいく。
ウィズリィ様との付き合いも盗賊団より長いんだ、必ず主導権を握ってくれるはず。
あとはどうやって連中と接触するかだろうか、その辺は主役が揃ってから考えても遅くないかな。
◇
「ニノ、ニノ! 会いたかった……!」
「わっ、四日ぶりだねトル。元気にしてた? 寂しくなかった? フィアーに虐められていない?」
「……寂しかった。フィアは、いつも……意地悪。嫌いな……野菜、トルに食べさせるもん」
飛び込んできた小さな身体を全身で受け止める。
若干傷に響くけど、それ以上に喜んでくれるトルを見ていると嫌な事も全て吹き飛んでしまう。
彼女と別れて寂しかったのは僕の方だ、すっかり子離れができない親みたいになってる。
「ちょっと、トルはまた誤解されるようなことを! 私は貴方の将来を考えて――ゴホッゴホッ、何、この汚い家畜小屋は……ってニノ、その怪我はどうしたの? 誰にやられたの!?」
次に顔を出したフィアーは、コロコロと表情を変えては悪態をついていた。
そして僕の状態に気付いて、身体をペタペタと必要以上に触れて問い詰めてくる。
「い、痛いから優しくして欲しいかな……。というかあんまり触らないで……」
「久しぶりに再会したというのに生意気な口を開くのね。トルはよくて私が駄目な道理はないでしょ?」
「や、やめっ! 久しぶりって……まだ四日目だよ?」
「ふんっ、何よ、心配してあげていたのに。ニノの馬鹿!!」
不機嫌を隠さずに、僕の義手を何度も叩いている。
もしかしてフィアーも寂しかったとか? 聞くと怒られそうだ。
「あぁ……死ぬかと思った……。空を飛ぶのはもう懲り懲りだよぉ……」
最後に死人みたいな血色の悪い顔で扉前に倒れ込む幼馴染。
二人の精霊様に引き連れられ空の散歩を楽しんできたらしい、既にフィリスはボロボロだった。
「事情は……《風炎》の人たちから全部聞いてきたけど……。ちょっと休ませて……ヴォエ」
「だ、大丈夫ですか!? お背中を擦りますね」
「あ……ありがとう、ケイシアさん。鎧が邪魔だけど意外とお胸大きいね」
「ひゃっ!? 何を仰っているのですか!? 私たち初対面ですよね……?」
「うぅ……膝枕して欲しいなぁ……。柔らかい膝をご所望だよぉ……」
「あはは、フィリスさんって面白い人だね」
さっそくフィリスお得意のスキルが発動している。
ああやっていつも他人の懐の隙に入り込み仲を深めていくんだ。
友人が少ない僕には遠い世界の住人だった。まぁそれでも今回は本当に気分が悪そうだけど。
「あの調子で大丈夫かな……? 今回の作戦の要なのに心配だ」
「ニノの周りはいつも賑やかですね。退屈している暇もなさそうです」
「そ、そうですか? 大体の原因はフィリスだと思いますけど……!」
「それが悪いだなんて一言も言ってませんよ。ふふっ、いい友人を持ちましたね?」
隣でノート様は本当に嬉しそうに微笑んでいる。
確かに僕には勿体ないくらいできた友人だ、本当は――これは思うだけでも許されない事だけど。
僕と同じ精霊術師になってくれて、同じ道を進んでくれて心の底から感謝していたりする。
代償があまりにも大きくて、決して本人を前にして言葉には出せないけど。
「そこにいるのは……もしかしてノート? こんな所で何をやってるのよ。それにその仮面……ふーん」
「……何か言いたい事でもあるのですか?」
「ヘタレ」
「……意地悪です」
フィアーはノート様を相手に挑発していた。
二人が何かと競い合う関係なのは以前から知っていたけど、ここまでムキになるのも珍しい。
昔からの付き合いらしいので、僕にも知らない因縁でもあるんだろう。
「はいはーい。こうして新顔もたくさん集まったんだからみんなで親睦会でもしない? どうせもう時間も遅いし、作戦は明日に持ち越しでしょ?」
「それはいいですね! 都合よくここには材料もたくさんありますし、せっかくですから皆様に獣人族に伝わる伝統料理を振る舞いますよ! 豪快に焼きますよ!」
「フィリスさんにレックさんも……そんな悠長な事をしている場合では……!」
「別にいいじゃない。大事な決戦を前に英気を養うのも冒険者の務めでしょ!」
「リディアまで……! ニノさんからも何か言ってください!」
陽気な三人組に囲まれて弱腰になるケイシアさん。
対して僕も三人の精霊様に囲まれていて、何とも反論し辛い空気に巻き込まれていた。
「ちょっとノート、もう少し離れなさいよ。ニノは私の物なのよ、気安く触らないでくれる?」
「どうしてですか? ニノを治療したのは私なのですから傍にいる権利ぐらいはあるでしょう? それにいつから彼はフィアーの所有物になったのですか? それなら私は幼少の頃から――」
「うわぁ……その頃から狙っていたのね。………危険思想だわ」
「違います! 見守っていただけです! 彼に誤解されるような事を言わないでください!!」
「……ニノ、あっち、行こう? 静かだよ?」
フィアーとノート様の間で謎のポジション争いが始まり、トルはこっそり僕を連れ出そうとしている。
下手に刺激して機嫌を悪くさせてしまうと、今後の戦いに大きな影響が生まれそうだ。
ここは少しでも僕が間に入って仲を取り持つ必要がある気がしてきた。
「ケイシアさん、諦めて――親睦会を開きましょうか……!」
「ニノさんもですか……!」
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