闇精霊に好かれた精霊術師(旧題:ダンジョン最下層でパーティに見捨てられた精霊術師の少年、闇精霊に気に入られ最強の精霊使いになる。)

お茶っ葉

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三章

45話 認定試験

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「ささっ狭い部屋ですがどうぞお寛ぎになってください。今、美味しい茶葉を仕入れたところでしてな」

 白髪白髭の年老いた男が部屋の中を活発に動き回っている。
 その見た目に反した高い運動能力を持って、瞬く間に人数分のカップが机の上に並べられていく。
 香しい匂いが湯気と共に立ち込め、客人を歓迎する空気を作り出していた。
 
「ふーん良い匂いね。この茶葉お土産として貰って帰ってもいいのかしら?」 
「わぁ……変なのが、いっぱい。これ、香水の匂い……?」
「まるで異国を訪れたみたいですね。興味深いです」
「相変わらず良い趣味をしてるのう」

 ポートセルトギルド二階にあるギルド長室。
 色調が統一された床と壁。高級感のある執務机が中央奥の窓際に鎮座している。
 彼の趣味だろうか、黒魔術めいた異国感溢れる怪しい道具が周囲に散りばめられていた。

「……ふぅ……ふぅ……」

 精霊たちの先頭に立つのは褐色肌の少女。
 獣の尾をピンッと伸ばし、緊張からか動作が固い。

「もう、落ち着きなさいセレーネ。誰も貴方を虐めようだなんて考えていないわよ」
「で、ですが闇精霊様。この中で明らかに私だけ浮いています……!」
 
 セレーネは過呼吸気味になりながらも、ギリギリのところで立っていた。
 屋敷の中をうろついているところを精霊たちに見つかったのが最後、強引に連れてこられたのだ。
 崇拝するフィアーに頼まれて断るという選択肢は彼女にはなかった。
 
「中間者を置けば話が通しやすくなるじゃろうと思って連れてきたのじゃが。……失敗じゃったか?」
「わ、私には一応、屋敷の使用人としての役目が……!」
「……? でも、セレーネ暇そう……だった」
「うぐっ……!」

 トルの純粋で悪意のない、それでいて容赦ない一言にセレーネは呻く。

「それはパパが年甲斐もなく張り切るからで、私の分の仕事がなくなって……決してサボっていた訳では!」
「ま、まぁ、思いの外レックが優秀でしたからね。本当に……意外でしたが」

 彼女の父親は今もたった一人で大きな屋敷の清掃を続けている。
 元々簡単な手伝い程度しかできないセレーネは補助係に徹する場合が多かった。
 それに最近はニノもフィリスも屋敷から出ていない。軽い雑務くらいなら自分でこなしてしまうだろう。

 つまりセレーネは暇を持て余していたのだ。

「そこの闇妖精ダークエルフの少女も冒険者志望という事でよろしいですかな?」
「…………!!」
「少々予定と違うがここにいる全員がそうじゃな。この際一人増えたところで問題はないじゃろう」
 
 闇妖精という言葉が出た瞬間。セレーネは驚き後退る。
 すぐにダブラスは安心させるように柔らかい声で手を上げた。 

「そう固くなるな、ワシは種族で差別はしない主義でな。もちろんギルド長として能力で区別はするがね」
「それではワシらは今からお主に試されるという訳じゃな。果たしてお望みに叶うかどうか心配じゃのう」
「くっくっく。これはこれは御戯れを。精霊様に敵う者などワシも含めてこの世界にはおりませんよ」
「よく言う。かつて戦場で数百の魔物をたった一人で撃ち滅ぼし、大賢者として讃えられておったではないか。……おっと失礼。今のお主は身分を隠し後進の育成に努めておるのじゃったな? くっくっく」

 ウィズリィとダブラスの不気味な笑い声が室内に連鎖する。
 魔族でもここまで悪魔めいた声は出さないだろう。それくらいの酷さだった。

「何よコイツら……気味が悪いほど息が合ってるわね」
「どうやらダブラスさんはウィズリィの旧友らしいですよ?」
「……この人、何歳?」
森妖精エルフ、またはそれに近い種族の亜人だな。あの容姿からして少なく見積もっても二百年は生きているだろう」

 同じ種族の血を持つ者として、セレーネはダブラスに敵意を滲ませた視線を向けていた。
 仲間に捨てられた過去がある彼女にとって、その心中は複雑であった。

「あーコホンッ。お話の途中に失礼します。そろそろ本題に移らさせていただきたいのですが」

 部屋の隅に控えていたギルド職員であり、現在はニノの担当でもあるザイルが前に出る。
 百数名もの職員が在籍しているギルド内において彼は一目置かれていた。最近ではギルド長の補佐も務めている。
 精霊が相手でも、しっかりと自分の意見を述べられる数少ない人物だった。

「ギルドの規則上いきなり上級冒険者からとはいきませんので。精霊様といえど例外なく試験を受けてもらいます」
「試験……? また盗賊退治かしら?」
「いえ、ただの認定試験なのでそこまで難易度の高いものでは……」
「……新人はベテランの背中を見て育つもの……ってニノが言ってった」
「そ、そうですね。大体あってます。新人として現場の空気に触れてもらうのが目的ですね」

 ザイルは努めて冷静さを保ちながら話を続けていく。
 今回はニノが間に立っていないので、その声は若干緊張気味に震えていた。
 
「あの、一つ疑問なのですが。私たちをパーティに誘ってくださる方はいらっしゃるのでしょうか? 行動を共にする以上身分を隠すのはおかしいですし、かと言って精霊として受け入れてもらえるかどうか不安なのですが」
「……ど、どうでしょうかね? 直接頼んでみない事にはわかりませんが」
「ちょ、ちょっと、そんな曖昧では困るのよ! 誰にも誘われずに試験すら受けられないって嫌よ!?」
「い、いやぁ……こちらとしても必死に探してはいるのですが……! ひぃっ、ニノ……助けてくれぇ!」
 
 フィアーは大きく詰め寄ってザイルを威嚇する。
 蛇に睨まれた蛙の如く、体格のいい男が助けを求めて後退していた。
 その様子を後ろで見ていたトルは、頬を膨らませてフィアーの行動を咎める。

「フィア……怖いもん。だからみんな逃げる……」
「何よ、それじゃトルは誰か当てがあるっていうの? 言ってみなさい」
「……アーダンがいる」

 トルは唯一親交のある人物の名を口にした。
 瞬間、フィアーは苦虫を噛み潰したよう顔を見せる。 
 
「嫌よ! あんな男。偉そうで、いつもニノに対抗してくるし、論外よ論外!」
「偉そうなの……フィアも一緒だと思う」
「残念ながらアーダンは現在長期依頼で席を外しておりまして、他に目ぼしい奴は――」

 ザイルは必死に資料を読み漁っていた。
 視線は何度も同じ個所を往復しており、一種の現実逃避にも見える。

「いやはや申し訳ない。我がギルドも精霊様が相手となると腰が引ける軟弱者ばかりでしてな。事前に希望者を募ったところ、このように誰一人名乗り出る者がいないという始末。まったく……情けない」
「立場上、不自由を強いられるとは思っていましたが。まさかこんな初っ端から躓くとは、ままなりませんね」

 ギルド内でニノの実績が上がるのと同時に精霊の存在もまた隠し切れなくなっていた。
 誰しもが関心を持ちながらも一定の距離を保っている。当然だ、人にとって精霊は神に近い存在。
 普段から交流があるニノとフィリスが特別なのだ。精霊術師でもなければそもそも関わる機会もない。
  
「これはこれは……困りましたな。いよいよもって特例措置を施すしかありませんな?」
「お主にはこの結果が見えていたはずじゃ。初めからそのつもりでおった癖に一々回りくどい奴じゃのう」
「……回りくどさで言えば貴方も同類でしょ?」

 ダブラスは前もって用意していたのか、引き出しから一枚の用紙を取り出す。
 それはギルドの掲示板クエストボードに貼られている冒険者には馴染み深い依頼書だった。

「ここは一つ、ワシの個人的な依頼クエストを引き受けてもらってもよろしいですかな?」



 ◇



「で、結局頼まれたのがただのお使いって……。何だか都合よく扱われていないかしら?」
「ダブラスさんには日頃からお世話になっているのですから。これも恩返しだと思って頑張りましょう」
「それはわかるけど、でも納得し難いわね……!」

 再びノートの部屋に集った五人は全員で一枚の紙を覗き込む。
 ギルド長自筆の依頼書には細かな指示がびっしりと書き記されていた。

「人数分の月光草とやらを持ってこいって。わざわざ自分の手で採取するようにと指定までされているわ。誰かに持って来てもらうとかは禁止。買い取るのも禁止。一々無駄に細かいわね……」
「元来、試験とはそういうものですよ。……それにしても月光草ですか。かつては大陸中に自生していましたが、良質な魔力回復薬マナポーションの材料になるとして乱獲されて以降ほぼ姿を消してしまった種ですね。今でも大きな街の自然保護区などで育てられていますが。個人の都合で採取の許可を取るのは難しそうです」
「別名『真実草』。月の力を宿した繊細な植物で悪しき心の持ち主が触れるとたちまち枯れてしまう。古では魔女狩りの道具として人に化ける悪魔を見つけるのに使われておったそうじゃ」
「……フィアじゃ枯れちゃう」
「うるさいわね! 私の心はそこまで薄汚れていないわよ!」
「そうだそうだ。闇精霊様をそんな有象無象と一緒にするな!」
「うぅ……。フィアに仲間が……できてる」

 セレーネはすっかり闇精霊親衛隊として馴染みつつあった。
 フィアーとよく喧嘩するトルにとって最大の敵になりつつある。
 
「月光草……ニノの家の近くにあった」
「そういえばそうね。なら話が早いわ、もう認定試験も殆ど終わったようなものじゃない?」
「随分と簡単な依頼なんだな……あの森妖精の事だ、無理難題を押し付けてくるかと思ったのだが」
「簡単とは言いますが偶然が重なっただけで、これも相当意地悪な依頼だと思いますけど」

 希少素材の採取は上級冒険者でも難儀する高難度依頼だ。
 本人の能力素質以上に運と人脈が試される。場合によっては最初から達成不可能なものまであるのだ。
 ただパーティに参加するだけで合格できる認定試験とはまるで次元が違う。

「……ダブラスめ、また酷な事を。相変わらず底意地の悪い爺じゃ」
「ウィズリィ? どうかしましたか?」
「何でもない。まずは手始めにニノニノの許可を取りにいくところからじゃな」
「えー、せっかくだからニノとフィリスを驚かせる為に内緒にしておきましょうよ」

 フィアーは身体を左右に揺らしながら一人微笑んでいた。
 悪戯好きでもある彼女は二人の驚く姿を想像して楽しんでいるのだろう。

「これから思い出の地に再び土足で踏み込むのじゃ、一言添えておくのが筋というものじゃろう?」
「うーん、まぁ……それもそうよね。それじゃなるべく気付かれないように誤魔化さないと」
「どうでしょう? あの子は勘が鋭いですから。怪しまれると思いますが」
「トルも、驚かせたい……ニノに喜んで欲しい……! 内緒にする!」
「こうなったら是が非でも押し通すしかないわね。ニノは押しに弱いからいけるはずよ!」

 ギルド長の依頼については、ここにいるメンバーで内密にする事となった。
 身支度を済ませてから一人ずつ部屋を後にしていく。まるで散歩に出掛けるような気軽さだった。

「……あの、ところで私も冒険者になる事が確定されたのですか? 使用人はクビですか!?」

 セレーネの呟きは誰の耳にも届く事なく隙間風によってかき消されていた。

 

 ◇



「薬草採取の為にわざわざ僕に許可を? 黙っていても気付かれないのに律儀だね」

 僕の前に精霊様たちが勢ぞろいしていた。
 神妙な面持ちで立ち入りの許可を求めてくるものだから何事かと思ったけど。
 
「あそこの希少な草を調合して薬として売れば儲かるって聞いたから試そうかと思ったの」
「あー、なるほど。そういう稼ぎ方もあったんだ、考えもしなかったなぁ。……あれ、でも調合した薬を売るには特別な資格が必要だった気が……ほら、やっぱり危険だったりするし」
「え、えーと、私の古い知り合いに薬剤師の仕事をされている方がいまして。協力をお願いしようかと」

 強張った表情でノート様はすぐさま補足していた。
 いつも柔らかい印象がある彼女にしてはらしくない反応だった。
 精霊様も長く生きているし、そういう当てがあってもおかしくないか。

「別にあそこは元々誰も所有していない土地だし、自由にしてもらっていいよ?」

 土地だけは広い田舎村だから、その辺の管理は結構杜撰だったりする。
 増えても減っても暮らしていく分には困らないから。寧ろ多くても邪魔なだけだし。
 母さんも精霊様に利用してもらえるならきっと喜んで差し出すはずだ。

「それでも心配だったらついて行くけど? 多分、僕が頼めば村の人も納得してくれるだろうから」
「だ……駄目! ニノは来ちゃ駄目!!」
「えっ……トル?」

 軽い気持ちで提案したんだけど押し返されてしまった。
 彼女にここまで強く拒絶されるとは思っていなかったので驚いた。
 と、いうより少しショックだった。これが反抗期? 

「あっ……えっと、その、ごめん……なさい……ニノは……待ってて」
「ニノも偶にはゆっくりと休んではいかがですか? あっ、そうです。二ヵ月の休養を貰ったと考えればいいのです。私たちの事は気にせずに、フィリスさんと良い休日をね?」

 ノート様もトルを援護するように続ける。
 後ろでウィズリィ様が声を抑えて笑っている。
 セレーネは私に話を振るなと言わんばかりに視線を逸らしていた。

 よくわからないけど五人が何かを企んでいるのは察した。
 どうやら僕に知られたくない事情があるみたいだし、深く追及しないであげよう。
 
「とにかく結果を楽しみにしておいて! 絶対に悪いようにはならないはずだから!」

 最後にフィアーはそう締め括ると勢いよく玄関から飛び出ていった。
 その後ろをぞろぞろと続いていく。最後尾のノート様が扉をしっかりと閉める音がした。
 住人の半数以上が去っていった屋敷は静まり返り、少し肌寒い風が窓から吹き込んでくる。

「結局、気を遣わせちゃったのかな。これも僕たちの謹慎と関係があるんだよね?」
《んー、まぁ楽しそうだからいいんじゃない? 保護者もついている事だし》

 レムちゃんが僕の中でそう呟いた。
 ノート様とウィズリィ様、それにセレーネもついているんだから万が一は起こらない。
 みんなの事は信頼しているし。それでも少しだけ胸がモヤモヤする。

 以前も同じ感覚に陥っていた。
 あれは、義肢が届くまで一人で屋敷に待機していた時だ。
 多分、僕は寂しいんだと思う。置いていかれた気分になっているんだ。

 楽しそうにやっている輪に入れない感じ。
 小さい頃はこうしてよく遠巻きに眺めていたっけ。
 
「……最近思い出したけど僕って結構女々しかったんだよね。男らしくありたいと願っているはずなのに」
《それだけ心に余裕が生まれたんだよ。いい傾向だと思うけどね?》

 自分が大切だからこそ周囲との関係にやきもきする。
 自暴自棄になっていた頃はそんなもの意識する必要もなかった。
 それは、ずっと思考停止していたようなもので。だから今更子供っぽい悩みに苦しめられる。

《ノートが言っていた通り、君は少し休むべきだよ。今まで頑張って無理してきた分も。肉体の損傷ならともかく擦り減った精神はボクの力でも治せないんだから》
「でも同期の冒険者たちが今もどこかで活躍しているかと思うと……置いていかれたくない」
《わあ、これが職業病かぁ。そんなんじゃフィリスちゃんに偉そうに言えないんじゃないかな?》
「……ぐっ。痛いところを突いてくるね?」
《少しは立ち止まって周りを見回すのも大事、だっけ? どこかの誰かさんに聞かせたい言葉だね》

 レムちゃんは軽い口調で僕に釘を刺してくる。
 いつも自分の言葉が自分に返ってきている気がするなぁ。
 
《ほらほら、時間もあるんだし今からフィリスちゃんをデートにでも誘ったら? きっと彼女も凄く喜ぶはずだよ》
「自由にできるお金はないけどね。うん、散歩に出掛けるくらいなら。水筒とパンでも持っていこうかな」 
《……何だか色々と飛び越えて老夫婦になったみたい。二人がのんびりお茶を啜る絵が思い浮かぶよ》
「それは言わないでよ。僕も年寄り臭いのは自覚しているから」
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