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SS置き場(一巻分)
『噂の真相』
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「確かに依頼の品を受け取りました。こちらが今回の報酬になります。お疲れ様でした!」
ギルド窓口にて、硬貨が入った麻袋を受け取り中身を確認する。
間違いがないことを伝えて僕とフィリスは人混みを避けて外に出る。
「うーん。中級冒険者になったといっても、ドーンと稼ぎが増える訳じゃないんだね。この分だと日々の生活で精一杯、先は遠いなぁ……!」
フィリスは銀色に輝く硬貨を指先で回しながら愚痴を零した。
ギルドへの借金に加えて屋敷の維持費、四人分の生活費まで必要になるから。
自由に使えるお金なんてほんの僅かで、装備どころか着るものにさえ困っているのが現状だ。
一応、冒険者殺し関連の仕事で貯金ができているとはいえ、あまり取り崩したくはないし。
「それを覚悟で屋敷を買い取ったんだから。弱音はなしだよ?」
「うそうそ。これからの私の頑張りに期待! お姉ちゃん、頑張るぞー!」
「……僕もそろそろ復帰できそうだし。少しは楽にさせられると思うよ」
新品同様の義肢が、活躍の場を求めてうずうずしている。
まだ病み上がりだから軽い運動で済ませているけど。僕の今日の仕事は彼女の付き添いだった。
「あ、フィリスだ! 久しぶりだね!」
「よう、噂は聞いているぜ。どうやら大活躍しているらしいな」
「みんな! ごめんニノ君、ちょっとだけ行ってくるね!」
「いってらっしゃい」
以前、フィリスが借りていた宿の同居人である新人冒険者たちだ。
お互い和気藹々と近状報告をしている。これから依頼に向かうらしく、数分ほどして戻ってきた。
「ただいま!」
「おかえり、どうだった?」
「やっぱり驚かれたよ。それからすっごい褒められた!」
「だろうね、フィリスは誰よりも早く中級冒険者になっているから」
フィリスの昇級の早さはポートセルトでは歴代最速に近いらしい。
巷での活躍の噂を聞いていれば、当然の結果だと思うけど。
「でもでも、何だか変な噂ばかりながれちゃってるんだよね……!」
「ん? そうなんだ。それじゃ上級の戦士の人への弟子入りとかの話は?」
「個人的に話す機会があった程度だよ。そもそも私は剣なんて使えないし、その時点で落第だし」
「盗賊団を単身で壊滅させたってのは?」
「酒場での喧嘩を止めるのに男の人を数人ぶん投げたくらいかな?」
「噂話って……蓋を開けばそんなものだよね」
僕が聞いていた話とは大分違う。大袈裟に脚色されていた。
とはいえ、そこに説得力を持たせるほどの実力があるのは確かなんだ。
遅かれ早かれ結果は変わらなかったと思う。あとを追いかける方も大変だ。
「そうだよね。冷静に考えると素手で巨人のオーガを倒すなんて無理に決まってるよね」
僕自身も噂に踊らされ、フィリスを誤解していたのかもしれない。
いくら化け物染みた身体能力を持っているといっても、女の子が一方的に巨人を殴り殺すなんて――
「――あ、それは本当。さすがに硬くて最後には拳が真っ赤になっちゃったけどね!」
「………………は?」
幼馴染が耳を疑うようなことを言い出した。
いや、これはきっと冗談か何かだろう、そうに決まっている。
拳が赤くなったって、それってただの返り血では? とか、そんなくだらない返事もできなかった。
人の数十倍もの質量を持つ生物を、拳一つで倒すだなんて、それこそ……!
「ニノ君どうしたの? 立ち止まっちゃって」
「……どうかしているのは、フィリスの方だと思う……!」
「えぇ!? 意味わかんないよぉ!」
フィリスは疑問符を浮かべながら、僕の背中を軽く叩いてくる。
噂の真相はともかく、怖いから彼女を怒らせるのだけは避けようと心に刻んだ。
ギルド窓口にて、硬貨が入った麻袋を受け取り中身を確認する。
間違いがないことを伝えて僕とフィリスは人混みを避けて外に出る。
「うーん。中級冒険者になったといっても、ドーンと稼ぎが増える訳じゃないんだね。この分だと日々の生活で精一杯、先は遠いなぁ……!」
フィリスは銀色に輝く硬貨を指先で回しながら愚痴を零した。
ギルドへの借金に加えて屋敷の維持費、四人分の生活費まで必要になるから。
自由に使えるお金なんてほんの僅かで、装備どころか着るものにさえ困っているのが現状だ。
一応、冒険者殺し関連の仕事で貯金ができているとはいえ、あまり取り崩したくはないし。
「それを覚悟で屋敷を買い取ったんだから。弱音はなしだよ?」
「うそうそ。これからの私の頑張りに期待! お姉ちゃん、頑張るぞー!」
「……僕もそろそろ復帰できそうだし。少しは楽にさせられると思うよ」
新品同様の義肢が、活躍の場を求めてうずうずしている。
まだ病み上がりだから軽い運動で済ませているけど。僕の今日の仕事は彼女の付き添いだった。
「あ、フィリスだ! 久しぶりだね!」
「よう、噂は聞いているぜ。どうやら大活躍しているらしいな」
「みんな! ごめんニノ君、ちょっとだけ行ってくるね!」
「いってらっしゃい」
以前、フィリスが借りていた宿の同居人である新人冒険者たちだ。
お互い和気藹々と近状報告をしている。これから依頼に向かうらしく、数分ほどして戻ってきた。
「ただいま!」
「おかえり、どうだった?」
「やっぱり驚かれたよ。それからすっごい褒められた!」
「だろうね、フィリスは誰よりも早く中級冒険者になっているから」
フィリスの昇級の早さはポートセルトでは歴代最速に近いらしい。
巷での活躍の噂を聞いていれば、当然の結果だと思うけど。
「でもでも、何だか変な噂ばかりながれちゃってるんだよね……!」
「ん? そうなんだ。それじゃ上級の戦士の人への弟子入りとかの話は?」
「個人的に話す機会があった程度だよ。そもそも私は剣なんて使えないし、その時点で落第だし」
「盗賊団を単身で壊滅させたってのは?」
「酒場での喧嘩を止めるのに男の人を数人ぶん投げたくらいかな?」
「噂話って……蓋を開けばそんなものだよね」
僕が聞いていた話とは大分違う。大袈裟に脚色されていた。
とはいえ、そこに説得力を持たせるほどの実力があるのは確かなんだ。
遅かれ早かれ結果は変わらなかったと思う。あとを追いかける方も大変だ。
「そうだよね。冷静に考えると素手で巨人のオーガを倒すなんて無理に決まってるよね」
僕自身も噂に踊らされ、フィリスを誤解していたのかもしれない。
いくら化け物染みた身体能力を持っているといっても、女の子が一方的に巨人を殴り殺すなんて――
「――あ、それは本当。さすがに硬くて最後には拳が真っ赤になっちゃったけどね!」
「………………は?」
幼馴染が耳を疑うようなことを言い出した。
いや、これはきっと冗談か何かだろう、そうに決まっている。
拳が赤くなったって、それってただの返り血では? とか、そんなくだらない返事もできなかった。
人の数十倍もの質量を持つ生物を、拳一つで倒すだなんて、それこそ……!
「ニノ君どうしたの? 立ち止まっちゃって」
「……どうかしているのは、フィリスの方だと思う……!」
「えぇ!? 意味わかんないよぉ!」
フィリスは疑問符を浮かべながら、僕の背中を軽く叩いてくる。
噂の真相はともかく、怖いから彼女を怒らせるのだけは避けようと心に刻んだ。
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