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第一章
作戦開始
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ロースター軍曹に連れられて歩くこと30分くらい、そこには静かな森の中に佇む湖があった。
その湖には魚が泳いでいて、任務中でなければ釣りが楽しめそうなのどかな場所だ。
でも、今はとてもじゃないけど、そんな気分になれそうにない。
俺は目の前の信じられない光景が広がっているせいでね。
「軍曹……まさかとは思いますが、あれが領主のライエル男爵って言うんじゃありませんよね?」
俺が視線を軍曹に疑いの眼差しを向けると、軍曹は申し訳なさそうに視線を落とした。
「……信じられないのも無理はないが、あの方こそ我がライエル領領主のダニート・フォン・ライエル男爵だ」
マジ? あの湖畔に隠しもせずに天幕をドンと張って、女を数人を侍らせながら悠々と酒を呑んでいる軍服を着た男が?
全く信じられない。
でも、周りには武器を持った警備兵みたいなのが5人いるし……
ん? あの卑しい顔で揉み手を繰り返している小太りの男は誰だ?
「軍曹、あの小太りの男は?」
「ああ、あれは隣接する伯爵領から来た商人だ。伯爵様の紹介だとかで、家督を継いだ頃から出入りしている。貴族の必須だとか何だと理由を付けて様々な品を売りつけに来るが、どうにも私には怪しく見える。先代様であれば、あの様な者など屋敷に入れる事すら拒まれただろう」
いや、誰が見てもあいつは怪しいでしょ?
だってあの顔にあの風体だよ?
見た目で判断してはいけないと分かっていても、初見なら先ずは疑うよ。
絶対にまともな商売をしてそうには見えない。
ライエル男爵って馬鹿なのか?
ここからじゃ顔はよく見えないけど、態度はデカそうだし、周りの女の人達も嫌そうにしているのに気がついてないみたいだから馬鹿なんだろうな。
それにしても、こっちは命がけで斥候の任務やってるってのに、あっちは女の人侍らせて酒とはね……気に入らないな。
よし、殴ろう。
いや、斬っちゃおう!
「ちょっと待て」
俺が刀に手をかけたのを見て、軍曹が止めた。
今更命乞いは聞きませんよ?
「軍曹、小官はあの人を斬りますよ」
「わかっている。今更、お館様の助命を請うつもりはない。ただ、女達は見逃せよ」
確かに女の人を斬るのは気が咎めるけど、女性でも強い軍人はいるからなぁ。
襲ってきたら無抵抗ってわけにはいかないぞ。
「敢えて斬ることはしませんが、何か理由があるんですか?」
「彼女達は民間人だ。帝国軍規で民間人への暴行、掠奪行為は禁止されている。抵抗してくればこの限りではないが、逃げようとするだけなら見逃さないと貴官が罰せられる可能性があるのだよ」
民間人? ああ、そういう事か。
あいつは領民の中から綺麗な人を選んで、貴族の権力を使って無理やり連れてきたってわけだ。
情けない奴だなぁ。
無理やりでなければ連れてこれないって事は、自分自身に魅力がないって言ってるのと同じだろ?
恥を晒しておきながらあの態度とは、厚顔無恥とはよく言ったもんだよ。
まぁ、となれば女性達は逃す方向でいかないといけないから作戦を考えないと駄目だな。
人質にでもとられたら困るしね。
それと軍曹はどうしよう。
今のところ協力的だが、この後はわからないよなぁ。
信じたい気持ちもあるが、それだけで後背を晒す事は出来ないし、軍曹には悪いけど、やっぱり縛って放置するか。
あとは敵の戦力だけど、護衛の5人は全員が胸部鎧に長柄槍、腰には長剣か。
盾や弓がないとはいえ、装備は充実してる。
1人でも逃がしたら敵が大勢やってくるだろうから、全員斬らないといけないけど、俺の武器はこの刀だけ。
さっきと同じで奇襲をかけるにしても
、5人となると時間はかかる。
護衛を倒せても男爵に逃げられたら意味がないからな。
さて、どうするか。
待てよ……あの位置ならもしかして……いけそうだな。
なら、あそこから行くしかないか。
「軍曹。申し訳ないのですが……」
「決意は変わらないようだな。わかった。俺も軍人の端くれだ。覚悟を決めよう。俺を好きに使うがいい。人質にはならないだろうが、盾くらいにはなるだろうからな」
いやいやいやいや、この軍曹はお人好しにしても本当に度が過ぎてるな。
いくら何でも盾扱いなんかしませんよ。
「お心遣いには痛み要りますが、敵陣へは小官一人で行きます」
「お、おいっ! あっ……こ、声を荒げてすまない……し、しかし、本当に一人で行くつもりか? あの5人は我が領内の腕自慢達だ。階級こそ伍長や上等兵だが、正面からではいくら貴官でも無茶だ!」
「正面からは行きませんよ。小官は田舎の山育ちなもんで、少々泥臭い作戦で行かせてもらいます」
俺は手早く軍曹を後ろ手に縛り、口を猿轡で塞がせてもらった。
「むごっ! むごむむむごご!?」
すいません、軍曹。
何を言ってるかわかりません。
これ以上話をしていて、敵の位置が変わると厄介になるので許してください。
さて、行くとしますか!
その湖には魚が泳いでいて、任務中でなければ釣りが楽しめそうなのどかな場所だ。
でも、今はとてもじゃないけど、そんな気分になれそうにない。
俺は目の前の信じられない光景が広がっているせいでね。
「軍曹……まさかとは思いますが、あれが領主のライエル男爵って言うんじゃありませんよね?」
俺が視線を軍曹に疑いの眼差しを向けると、軍曹は申し訳なさそうに視線を落とした。
「……信じられないのも無理はないが、あの方こそ我がライエル領領主のダニート・フォン・ライエル男爵だ」
マジ? あの湖畔に隠しもせずに天幕をドンと張って、女を数人を侍らせながら悠々と酒を呑んでいる軍服を着た男が?
全く信じられない。
でも、周りには武器を持った警備兵みたいなのが5人いるし……
ん? あの卑しい顔で揉み手を繰り返している小太りの男は誰だ?
「軍曹、あの小太りの男は?」
「ああ、あれは隣接する伯爵領から来た商人だ。伯爵様の紹介だとかで、家督を継いだ頃から出入りしている。貴族の必須だとか何だと理由を付けて様々な品を売りつけに来るが、どうにも私には怪しく見える。先代様であれば、あの様な者など屋敷に入れる事すら拒まれただろう」
いや、誰が見てもあいつは怪しいでしょ?
だってあの顔にあの風体だよ?
見た目で判断してはいけないと分かっていても、初見なら先ずは疑うよ。
絶対にまともな商売をしてそうには見えない。
ライエル男爵って馬鹿なのか?
ここからじゃ顔はよく見えないけど、態度はデカそうだし、周りの女の人達も嫌そうにしているのに気がついてないみたいだから馬鹿なんだろうな。
それにしても、こっちは命がけで斥候の任務やってるってのに、あっちは女の人侍らせて酒とはね……気に入らないな。
よし、殴ろう。
いや、斬っちゃおう!
「ちょっと待て」
俺が刀に手をかけたのを見て、軍曹が止めた。
今更命乞いは聞きませんよ?
「軍曹、小官はあの人を斬りますよ」
「わかっている。今更、お館様の助命を請うつもりはない。ただ、女達は見逃せよ」
確かに女の人を斬るのは気が咎めるけど、女性でも強い軍人はいるからなぁ。
襲ってきたら無抵抗ってわけにはいかないぞ。
「敢えて斬ることはしませんが、何か理由があるんですか?」
「彼女達は民間人だ。帝国軍規で民間人への暴行、掠奪行為は禁止されている。抵抗してくればこの限りではないが、逃げようとするだけなら見逃さないと貴官が罰せられる可能性があるのだよ」
民間人? ああ、そういう事か。
あいつは領民の中から綺麗な人を選んで、貴族の権力を使って無理やり連れてきたってわけだ。
情けない奴だなぁ。
無理やりでなければ連れてこれないって事は、自分自身に魅力がないって言ってるのと同じだろ?
恥を晒しておきながらあの態度とは、厚顔無恥とはよく言ったもんだよ。
まぁ、となれば女性達は逃す方向でいかないといけないから作戦を考えないと駄目だな。
人質にでもとられたら困るしね。
それと軍曹はどうしよう。
今のところ協力的だが、この後はわからないよなぁ。
信じたい気持ちもあるが、それだけで後背を晒す事は出来ないし、軍曹には悪いけど、やっぱり縛って放置するか。
あとは敵の戦力だけど、護衛の5人は全員が胸部鎧に長柄槍、腰には長剣か。
盾や弓がないとはいえ、装備は充実してる。
1人でも逃がしたら敵が大勢やってくるだろうから、全員斬らないといけないけど、俺の武器はこの刀だけ。
さっきと同じで奇襲をかけるにしても
、5人となると時間はかかる。
護衛を倒せても男爵に逃げられたら意味がないからな。
さて、どうするか。
待てよ……あの位置ならもしかして……いけそうだな。
なら、あそこから行くしかないか。
「軍曹。申し訳ないのですが……」
「決意は変わらないようだな。わかった。俺も軍人の端くれだ。覚悟を決めよう。俺を好きに使うがいい。人質にはならないだろうが、盾くらいにはなるだろうからな」
いやいやいやいや、この軍曹はお人好しにしても本当に度が過ぎてるな。
いくら何でも盾扱いなんかしませんよ。
「お心遣いには痛み要りますが、敵陣へは小官一人で行きます」
「お、おいっ! あっ……こ、声を荒げてすまない……し、しかし、本当に一人で行くつもりか? あの5人は我が領内の腕自慢達だ。階級こそ伍長や上等兵だが、正面からではいくら貴官でも無茶だ!」
「正面からは行きませんよ。小官は田舎の山育ちなもんで、少々泥臭い作戦で行かせてもらいます」
俺は手早く軍曹を後ろ手に縛り、口を猿轡で塞がせてもらった。
「むごっ! むごむむむごご!?」
すいません、軍曹。
何を言ってるかわかりません。
これ以上話をしていて、敵の位置が変わると厄介になるので許してください。
さて、行くとしますか!
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