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第一章
斬捨御免
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全く面倒な事だ!
帝国貴族の名誉ある男爵家の当主であるこのダニート・フォン・ライエルが、このような場所におらねばならんのだ!
貴族同士の戦の作法だと?
ロースター軍曹め、偉そうなことを言いおって!
たかが名士階位の者が、事もあろうに男爵位の私に提言など許されん!
それに発端である山火事とて奴のせいだ!
狩りの途中で獣に放った火球が木に当たる事なんか良くあることではないか!
傍にいた軍曹がさっさと火を消しておれば山火事なんぞにならずに済んだものを!
何のために連れて来ていたのか分からんではないか!
それに獣も獣だ!
何故逃げるのか?
この私の手にかかって死ねるのだから本望であろう?
我が領地に住んでおきながら恩を仇で返すとは許せん!
この戦のついでに山狩りをし、獣を一匹残らず処分してくれるわ!
それに周りにいる女達もビクビクとして可愛げのない!
私の側に置いてやっていると言うのになんたる不遜だ!
ったく! どいつもこいつも私を苛つかせよってからに!
酒が不味くなるわ!
それと、この軍服とやらは何とかならんのか?
帝国貴族の当主がこのような服を纏うなど末代までの恥ではないか!
「貴族としてはもっと華やかな衣装に身を包まねば、男爵家の名折れというもの。そうは思わないか? コルベッツよ」
傍に控えていたオーマン伯爵の紹介で我が家に出入りする商人のコルベッツが相変わらずの低頭平身の姿勢で頷いた。
私の偉大さを理解しているのは、やはり此奴しかおらんな。
「その通りでございます、男爵様。軍服のような無骨な衣装は男爵家の当主様には些か……いかがでしょう? 私が帝都で流行の衣装を仕入れて参りましたので、後ほどお召し替えされては?」
「おおおっ! 相変わらず気がきくではないか! それで値は幾らだ? 安物はいらぬぞ?」
「金貨78枚でございます」
「むぅ……金貨78枚か。この間は120枚だったが、まぁ普段着としてはそれぐらいで良いか。私も節約せねばならんからな。だが、次からはもっと良い品を持ってくるのだぞ。でなければ帝国貴族としての品位が下がるからな。ハッハハハハハハ!」
「ははぁ! かしこまりました。このコルベッツは男爵様の忠実な僕にございます。今後とも誠心誠意お仕え致しますので、商会共々、何卒お引き立ての程、よろしくお願い致します」
このコルベッツは使えるな。
私の重要性を理解しておる。
それに此奴の商会を後盾にして社交界に颯爽と参入し、他貴族との関係を強くする事が出来れば、いずれは皇帝陛下のお目にも止まり、陞爵は間違いないだろう。
それにより我がライエル家は更なる栄達の道を進むのだ。
もっと早く私が男爵位についていれば今頃はとっくに伯爵位くらいにはなっていただろうに。
思えば父上がいけないのだ。
さっさと私に爵位を譲れば良いものを、頑なに拒みよって!
「父上がなかなか私に爵位を譲らなかったために、遅咲きではあったが、私こそがライエル男爵家を未来永劫残すことができる唯一の……」
「御免」
なんだ?
誰だ貴様は? 無礼な!
私を誰だと思っている!
私はダニート・フォン・ライエル男爵であるぞ。
挨拶もせずに急に湖から出て来おって!
そのような湖に浸かったまま、私に剣を突き出すなど、一体何を考えて……剣を突き出す?
な、何故……貴様は私の首を剣で貫いているのだ?
貴様は何者……な……のだ……。
く、暗い……何故、急に我が頭上に夜が降りてくるのだ?
帝国貴族の名誉ある男爵家の当主であるこのダニート・フォン・ライエルが、このような場所におらねばならんのだ!
貴族同士の戦の作法だと?
ロースター軍曹め、偉そうなことを言いおって!
たかが名士階位の者が、事もあろうに男爵位の私に提言など許されん!
それに発端である山火事とて奴のせいだ!
狩りの途中で獣に放った火球が木に当たる事なんか良くあることではないか!
傍にいた軍曹がさっさと火を消しておれば山火事なんぞにならずに済んだものを!
何のために連れて来ていたのか分からんではないか!
それに獣も獣だ!
何故逃げるのか?
この私の手にかかって死ねるのだから本望であろう?
我が領地に住んでおきながら恩を仇で返すとは許せん!
この戦のついでに山狩りをし、獣を一匹残らず処分してくれるわ!
それに周りにいる女達もビクビクとして可愛げのない!
私の側に置いてやっていると言うのになんたる不遜だ!
ったく! どいつもこいつも私を苛つかせよってからに!
酒が不味くなるわ!
それと、この軍服とやらは何とかならんのか?
帝国貴族の当主がこのような服を纏うなど末代までの恥ではないか!
「貴族としてはもっと華やかな衣装に身を包まねば、男爵家の名折れというもの。そうは思わないか? コルベッツよ」
傍に控えていたオーマン伯爵の紹介で我が家に出入りする商人のコルベッツが相変わらずの低頭平身の姿勢で頷いた。
私の偉大さを理解しているのは、やはり此奴しかおらんな。
「その通りでございます、男爵様。軍服のような無骨な衣装は男爵家の当主様には些か……いかがでしょう? 私が帝都で流行の衣装を仕入れて参りましたので、後ほどお召し替えされては?」
「おおおっ! 相変わらず気がきくではないか! それで値は幾らだ? 安物はいらぬぞ?」
「金貨78枚でございます」
「むぅ……金貨78枚か。この間は120枚だったが、まぁ普段着としてはそれぐらいで良いか。私も節約せねばならんからな。だが、次からはもっと良い品を持ってくるのだぞ。でなければ帝国貴族としての品位が下がるからな。ハッハハハハハハ!」
「ははぁ! かしこまりました。このコルベッツは男爵様の忠実な僕にございます。今後とも誠心誠意お仕え致しますので、商会共々、何卒お引き立ての程、よろしくお願い致します」
このコルベッツは使えるな。
私の重要性を理解しておる。
それに此奴の商会を後盾にして社交界に颯爽と参入し、他貴族との関係を強くする事が出来れば、いずれは皇帝陛下のお目にも止まり、陞爵は間違いないだろう。
それにより我がライエル家は更なる栄達の道を進むのだ。
もっと早く私が男爵位についていれば今頃はとっくに伯爵位くらいにはなっていただろうに。
思えば父上がいけないのだ。
さっさと私に爵位を譲れば良いものを、頑なに拒みよって!
「父上がなかなか私に爵位を譲らなかったために、遅咲きではあったが、私こそがライエル男爵家を未来永劫残すことができる唯一の……」
「御免」
なんだ?
誰だ貴様は? 無礼な!
私を誰だと思っている!
私はダニート・フォン・ライエル男爵であるぞ。
挨拶もせずに急に湖から出て来おって!
そのような湖に浸かったまま、私に剣を突き出すなど、一体何を考えて……剣を突き出す?
な、何故……貴様は私の首を剣で貫いているのだ?
貴様は何者……な……のだ……。
く、暗い……何故、急に我が頭上に夜が降りてくるのだ?
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