食うために軍人になりました【一人称版】

第三章

勧誘

　いきなり部下になれってどういう事だ？
　今までも勧誘された事はあるけど、初対面の人に言われたのは初めてだ。

「閣下……藪から棒に何を言われますか」

「うるせぇ、藪から棒なのはこっちも同じだ。あのクソッタレのせいでウチの被害も無視できなくなってたんだ。打開のための会議をしてたら一騎討ちタイマンで撃退した奴がいるって報告が来たんだぞっ！？　おかげでこちとら飯抜きじゃねぇか！　どうしてくれんだ、コラッ！」

　何で飯抜きなんよ？
　全く意味がわからん。
　興奮して何言ってるのかわからなくなってるのか？

「閣下、とにかく大尉の異動をご希望であれば軍令部を通してください。もっとも、元帥は許可されないでしょうけど」

「あ？　元帥だと？　おい、大尉！　お前の原隊はどこだ！？　まさか、ヴォルドンのとこじゃねぇだろうな？」

　勘弁して欲しい。
　あいつの部下になるくらいならレッドウッド辺境伯の部下になる方がまだマシだ。

「小官はウォーレイク元帥閣下直属の従卒であります」

「ウォーレイク元帥か……4人の中では一番まともだが、従卒ってのは納得できねぇな。俺んとこにくればそれなりの地位を用意してやるぞ」

「閣下……そういった勧誘は閣下が一番お嫌いだったのでは？」

「確かにな。だが、今は有能な人材が1人でも欲しい！　今回の功績でこいつの昇進は間違いない。少佐……中佐もあり得るだろ？　なら、北方方面軍うちの第一攻撃部隊隊長、もしくは城塞防衛隊長に抜擢してやる」

「まさか……北方方面軍ナンバー3の地位を与えるとおっしゃるのですか？」

　北方方面軍のナンバー3っ！？
　めっちゃ高待遇じゃないかっ！
　うーん、心が動……かないな。
　ウォーレイク閣下はよくしてくれるし、ジェニングス中将やアンダーソン大佐、ヴォルガング少佐、リンテール中尉と一緒に仕事ができる事を考えたら、ナンバー3の地位に魅力は感じないな。

「閣下、どうやら彼の心にナンバー3の地位は響かないようですな」

　いや、だから少将は俺の的確に心読み過ぎでしょ？
　ちょっと怖くなってきたぞ。

「フンッ！　まぁいい。どうせ今こいつをウチに引き抜いても、すぐに他から横やりが入るだろうからな。今日のところは勘弁してやる。だが、こいつは貰ってもらうからな」

　なんだ？　これは……勲章？

「レッドウッド辺境伯がリクト・フォン・シュナイデン大尉にファルケンウッド勲章を与える。今回の働き、見事だった。助かったぜ」

「あ、ありがとうございます」

　なんかよくわからん勲章を貰ったけど、ファルケンウッド勲章って何だ？