食うために軍人になりました【一人称版】

第四章

ヴァランタイン四勲章競合戦

「旦那様はヴァランタイン四勲章という物をご存知ですか？」

「ご存知ないです」

「…………はぁ」

　正直に答えたらめっちゃ呆れられた！
　それが主人に対する執事の態度かっ！？
　知らない物は知らないんだからしょうがないでしょ！
　
「では、さすがに辺境伯が4名いらっしゃるのはご存知ですよね？」

　すごい念押しして聞いてきたな。
　でも、これは知ってるよ。
　
「それは知ってる。辺境伯は四方の方面軍の司令官でもあるからな。軍人であれば知らない人はいないよ。北のレッドウッド辺境伯、東のジェニングス辺境伯、南のミュラー辺境伯に西のクラッセン辺境伯だよな？」

「その通りです。そして、ヴァランタイン四勲章とはその4人の辺境伯全員に認められた者だけが与えられる勲章なのです」

　『へぇ～、それって凄いの？』
　……なんて聞いたらまた怒られるんだろうな。

「四方の方面軍司令官全員から与えられる勲章ですよ？　軍人にとっては最高の栄誉も言っても過言ではありません」

「なっ、何も言ってないだろ！」

「顔を見ればわかります」

「うっ……そ、それで、その勲章はどうやったら貰えるんだ？」

「誤魔化しが下手過ぎますが、まぁいいでしょう。四勲章は御前試合を勝ち抜いた者に与えられます。それが四勲章競合戦です」

「勝ち抜いた者に与えられるって事は、なんかトーナメントでもするのか？」

「その通りです。ですが、簡単ではありませんよ？　先ずはこの競合戦に参加する事自体が難しいのですから」

　テラーズの話によると、この競合戦は本来は軍人の練度の高さを観るためのものだったらしいけど、いつからかそれが最も強い軍人は誰かを決める場となってしまったらしい。
　軍の最高位である元帥じゃなくて、方面軍司令官が仕切ってる理由は派閥の身内贔屓を防ぐためなんだとさ。
　過去の大会では己の派閥の力を強めようと、自分の部下ばかり参加させた元帥もいたんだって。
　（過去のお偉いさんも腐ってるね！）
　そこで、そういう実力以外の差が出ないように、参加には陛下かいずれかの辺境伯の推薦がないと大会自体に参加できないようになっているそうだ。
　しかも推薦枠は決まっていて、各自3名まで。
　つまり帝国全体から15人しか参加できないんだそうだ。

「当然、参加を希望する者は多くおります。ですから参加できるだけでも栄誉なのですよ」

「なるほどね。それに俺は陛下からの推薦で参加できるわけだ。光栄だけど、俺は明日から高等士官学校だぞ？　参加できるのか？」

「問題ありませんよ。大会は2年後ですから」

　に、2年後？