食うために軍人になりました【一人称版】

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第四章

納得

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 な、なんと凄まじい気迫だ……
 老いて益々盛んとは正にこの方の為にあるような言葉だな。

「お、お久しぶりでございます。ローゼンハイム閣下」

「ぬっ? おおっ! ヴォルガングのところの小娘とリンテールのところの小娘か!? 久しいな!」

 あ、相変わらず重低音の大きな声は健在のようだ。
 一言一言がビリビリと空気を震わせるほど威力があるから、会話するのもやっとだ。

「して? 何用だ?」

 黒髪オールバックに長い口髭に太い眉の強面で凄まれると、自然と背筋に冷たいものを感じる。
 だが、ここで飲まれる訳にはいかない!

「はっ! この度、我々4人は南方方面軍へ転属となりまして、着任の御挨拶に伺った次第です」

「ふぅむ。そうか……」

 閣下は背もたれにドカッと体重を預けるように座った。
 大人2人が余裕で座れるくらいの頑丈そうな椅子だったが、ギシギシと悲鳴を上げているかのように音を奏でている。
 無理もない。
 閣下は身長約2m、体重は100㎏を超える大柄な体格をしていて、発達した筋肉が常に衣服を押し上げ、いつ破れてもおかしくないような状態になっている。
 平時においてこれだけの圧力を感じさせるのは流石としか言いようがない。

「儂は回りくどい言い方は好かんからはっきり言っておく。儂はお前達を受け入れる気はない」

「なっ!?」

「そ、そんな……」

「え……」

「ど、どういう事ですかぁ!?」

 突然の閣下の言葉に私以外の3人も驚きの声を上げた。
 当然だ。
 我々は来たくて此処に来たわけではない。
 あくまで命令に従って此処へ来たのだ。
 それを受け入れられないとはどういう事だ!
 私達を侮辱されるおつもりか!?

「閣下! それはどういう意味ですか!? 納得のいく説明をお願いします!」

「説明か。簡単なことよ。お前達は南方方面軍に相応しくないからだ。此処で荷を解く前にそのまま帰るがいい」

 閣下はそう言い放つと、立ち上がって窓に向かい背を向けた。
 まるで私達に興味がないと言わんばかりではないか。
 荷を解く前に帰れだと?
 屈辱だ……こんな屈辱は初めてだ!

「納得できません! 閣下は我々の何が南方方面軍に相応しくないとおっしゃるのでしょうか!? 納得できるお答えをいただけるまで我々は此処を動くつもりは……」

 ドォオオオオン!!

「儂が帝国軍上級大将! ウィルバルト・フォン・ローゼンハイムである!!」

「っ!?」

 一枚板の重厚な執務机に振り下ろした拳の衝撃と、先ほどよりも恐ろしい気迫のこもった声に私達4人は腰を抜かしてしまった。

「その無様な姿で納得できたか?」

 私達を見下ろす閣下の眼は冷たかった。
 
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