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第五章
我が主人
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私は昔からこいつとは気が合わない。
いや、気が合う合わない以前の問題だ。
生理的に受け付けないと言った方がいいだろうね。
どうにもこのスカした面が気に入らないんだよ!
「我々3人が揃うのはいつ以来でしょうか? 感慨深くて涙が出そうです」
「そういう台詞は嘘でも涙の一粒でも零してから言うもんだよ。アンタには無理だろうけどね」
「相変わらずフィンリーは手厳しいですね。下世話な事は言いたくありませんが、そんな事ではモテませんよ?」
「アンタ……老衰以外で死にたいようだね?」
「よさんか。まったく……お前達は変わらんな」
「そう言うウィルバルトは変わりましたね。全盛期の半分以下といったところですか? 随分と弱ったもんですね」
「テラーズ! アンタって奴はっ!」
「怒るな、フィンリー。テラーズは事実を言っているだけだ。変に気を遣われないだけ私としても楽だ」
なんでこの男はいつもこんな最低野郎の肩を持つんだい?
私には理解できないよ!
「それよりテラーズ。さっきの話はどういう意味だ?」
「シュナイデン男爵の面倒をフィンリー様が見るという話ですかな? それなら先程申し上げた通りです。それには及びません」
「私じゃ不満だと言いたいのかい?」
「いえいえ、由緒正しきオリオール侯爵家の現当主であり、かの大英雄ウィルバルト・フォン・ローゼンハイムに土をつけた猛者です。不満などありません」
このくそ爺がっ!
よくもこんだけ性格がひん曲がって生まれてきたもんだ!
母親のお腹の中に良心を置き忘れてきたんじゃないかと思えてきたよ!
「テラーズ。これは茶化して良い問題ではない。帝国の存亡がかかっておるのだ。お前とて帝国の現状を憂いておろう? 」
「頭の固さは変わってないようですね。別に茶化している訳ではありません。ただフィンリー様には任せられないだけです」
「この……っ!」
「早とちりしないで下さい。現状、フィンリー様は東方から離れられません。海洋国家は思っていた以上に手強い国です。既に共和国とも水面下で接触しており、いずれは国交が開かれるでしょう。そうなったら東と北の二面戦争にもなりかねません。その備えとしてフィンリー様を含め、コクトー様、バランディン様、テーニセン様が東と北に配置されているのです」
「そんな事はわかっている。だからあの小僧を東に……」
「それは無理です。南方を押さえていたウィルバルトがこの有様ですから」
「つまりシュナイデン男爵を南方に配置するつもりか。ならば儂が南方で育てるしかあるまい」
「それも無理です。今の貴方では彼についていけませんよ。単純な戦闘力で言えばおそらく帝国最強でしょうから」
珍しい事もあるもんだね。
こいつがこれだけ他人を高く評価するのを聞いた事がないよ。
一体あの小僧は何者だい?
「帝国最強とは随分と大きく出たな、テラーズ。しかし……自分がそう言われていた時は気にならなかったが、他人がそう言われているのを聞くとなんとも悔しい気持ちになるな」
「アンタは悔しいだけで済むだろうけど、私は苛立ちしかないよ。帝国最強の称号はそんなに安っぽいもんじゃないんだからね」
「戦えばわかります。我が主人の強さは私が保証します」
「「我が主人?」」
あまりにも不可解な言葉に咄嗟に口が動いた。
ウィルバルトも同じ気持ちだったのか同じ事を尋ねていた。
「ええ。言っていませんでしたか? 私は今は帝城の執事ではありません。リクト・フォン・シュナイデン男爵の執事です」
今度は開いた口が塞がらなかった。
いや、気が合う合わない以前の問題だ。
生理的に受け付けないと言った方がいいだろうね。
どうにもこのスカした面が気に入らないんだよ!
「我々3人が揃うのはいつ以来でしょうか? 感慨深くて涙が出そうです」
「そういう台詞は嘘でも涙の一粒でも零してから言うもんだよ。アンタには無理だろうけどね」
「相変わらずフィンリーは手厳しいですね。下世話な事は言いたくありませんが、そんな事ではモテませんよ?」
「アンタ……老衰以外で死にたいようだね?」
「よさんか。まったく……お前達は変わらんな」
「そう言うウィルバルトは変わりましたね。全盛期の半分以下といったところですか? 随分と弱ったもんですね」
「テラーズ! アンタって奴はっ!」
「怒るな、フィンリー。テラーズは事実を言っているだけだ。変に気を遣われないだけ私としても楽だ」
なんでこの男はいつもこんな最低野郎の肩を持つんだい?
私には理解できないよ!
「それよりテラーズ。さっきの話はどういう意味だ?」
「シュナイデン男爵の面倒をフィンリー様が見るという話ですかな? それなら先程申し上げた通りです。それには及びません」
「私じゃ不満だと言いたいのかい?」
「いえいえ、由緒正しきオリオール侯爵家の現当主であり、かの大英雄ウィルバルト・フォン・ローゼンハイムに土をつけた猛者です。不満などありません」
このくそ爺がっ!
よくもこんだけ性格がひん曲がって生まれてきたもんだ!
母親のお腹の中に良心を置き忘れてきたんじゃないかと思えてきたよ!
「テラーズ。これは茶化して良い問題ではない。帝国の存亡がかかっておるのだ。お前とて帝国の現状を憂いておろう? 」
「頭の固さは変わってないようですね。別に茶化している訳ではありません。ただフィンリー様には任せられないだけです」
「この……っ!」
「早とちりしないで下さい。現状、フィンリー様は東方から離れられません。海洋国家は思っていた以上に手強い国です。既に共和国とも水面下で接触しており、いずれは国交が開かれるでしょう。そうなったら東と北の二面戦争にもなりかねません。その備えとしてフィンリー様を含め、コクトー様、バランディン様、テーニセン様が東と北に配置されているのです」
「そんな事はわかっている。だからあの小僧を東に……」
「それは無理です。南方を押さえていたウィルバルトがこの有様ですから」
「つまりシュナイデン男爵を南方に配置するつもりか。ならば儂が南方で育てるしかあるまい」
「それも無理です。今の貴方では彼についていけませんよ。単純な戦闘力で言えばおそらく帝国最強でしょうから」
珍しい事もあるもんだね。
こいつがこれだけ他人を高く評価するのを聞いた事がないよ。
一体あの小僧は何者だい?
「帝国最強とは随分と大きく出たな、テラーズ。しかし……自分がそう言われていた時は気にならなかったが、他人がそう言われているのを聞くとなんとも悔しい気持ちになるな」
「アンタは悔しいだけで済むだろうけど、私は苛立ちしかないよ。帝国最強の称号はそんなに安っぽいもんじゃないんだからね」
「戦えばわかります。我が主人の強さは私が保証します」
「「我が主人?」」
あまりにも不可解な言葉に咄嗟に口が動いた。
ウィルバルトも同じ気持ちだったのか同じ事を尋ねていた。
「ええ。言っていませんでしたか? 私は今は帝城の執事ではありません。リクト・フォン・シュナイデン男爵の執事です」
今度は開いた口が塞がらなかった。
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