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第五章
首輪
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「テラーズ! 冗談が過ぎるぞ! どういうつもりだっ!?」
感情を昂らせたウィルバルトがテラーズに詰め寄っている。
当然だ。
他の者ならいざ知らず、こいつが皇家以外に仕えるなど前代未聞の事だからだ。
元々フリード家はヴァランタイン帝国開闢以来の名家で表向きはただの伯爵家だが、裏では帝国の闇を担っており諜報や謀略、時には暗殺など汚れ仕事を一手に引き受け影から帝国を支えてきた闇の一族。
そして、その歴代当主の中でも最高にして最悪と言われたのがこのテラーズ・フォン・フリードだ。
若い頃から剣術、魔術に秀でているだけでなく、悪魔的に頭の回転が早くて、特に人を陥れるにはどうすればいいかをよく熟知しているクソ野郎だった。
先代皇帝の勧めで二十歳で帝国諜報部に入るとメキメキと頭角を現し、遂には三十歳という異例の若さで帝国諜報部長官の座についた。
それから六十歳で引退するまでの三十年間、こいつは帝国の闇を支配してきたのだ。
だが、そのための代償も大きい。
帝国の闇を知り尽くしているって事はそれだけ帝国にとっても危険な人物って事だ。
引退後も隠居は許されず、監視のために皇帝の側で帝城の執事として生涯を終えねばならない。
死ぬまで皇帝に首に縄を付けられて飼い殺されなければならないんだ。
そんな男が一貴族の執事になるなど許されるはずがない!
「答えろ! テラーズ!」
「そう声を荒げないでください。ウィルバルト。特に裏の事情などありませんよ。帝城の執事の仕事を息子に譲り、以前の職務で知り得た情報は必要ない限り他言しない。その条件で私はシュナイデン卿の執事となったのです。陛下にもちゃんと許可はいただいておりますよ」
「そんな簡単に済む話じゃないだろ? アンタも皇帝も一体何を考えてるんだい? 場合によっちゃ、あの小僧にだって死んでもらわないといけないんだよ?」
「貴女にそれが出来きればの話ですけどね」
この爺……だけど短慮はいけないね。
こいつは厚顔無恥で冷酷無比の最低最悪のクズ野郎だけど、絶対に帝国の損害になる事を容認するような男じゃない。
帝国の敵となる人物は例え誰であろうと容赦しない。
かつてはそのために恋人すら手にかけたんだからね。
「安心なさい。シュナイデン卿に叛意はありませんよ」
「では何故……っ!」
「彼は純粋で何色にも染まりやすい。今はまだまともなウォーレイクの下にいますが、今後もそれしか見えないようでは困るのです」
「ウォーレイク元帥か。有能な良識人と聞いておるが、気になる事があるのか?」
「有能である。それだけで警戒すべき理由としては十分ですよ」
「つまり強大な力を持ったシュナイデンの小僧が道を外れないよう監視するためにアンタが付いたってわけかい?」
「平たく言えばそうです」
確かに。
あのロビンをいとも簡単に倒すほどの力を持っている男ともなれば首輪は必要か。
だが安い首輪では心許ないからテラーズが付いた。
一応筋は通ってるね。
「むぅ……よかろう。そういう理由であればとりあえずは納得しよう。他の思惑がなければな」
「信じてもらえないとは悲しいですね」
「ふん! 今までの行いが悪いからだよ!」
「ガッハハハハ! 違いないな!」
ウィルバルトの豪快な笑いが沈んでいた空気を吹き飛ばした。
なんだか昔に戻ったみたいで懐かしいね。
やれやれ……懐旧なんて私も年をとったもんだよ。
感情を昂らせたウィルバルトがテラーズに詰め寄っている。
当然だ。
他の者ならいざ知らず、こいつが皇家以外に仕えるなど前代未聞の事だからだ。
元々フリード家はヴァランタイン帝国開闢以来の名家で表向きはただの伯爵家だが、裏では帝国の闇を担っており諜報や謀略、時には暗殺など汚れ仕事を一手に引き受け影から帝国を支えてきた闇の一族。
そして、その歴代当主の中でも最高にして最悪と言われたのがこのテラーズ・フォン・フリードだ。
若い頃から剣術、魔術に秀でているだけでなく、悪魔的に頭の回転が早くて、特に人を陥れるにはどうすればいいかをよく熟知しているクソ野郎だった。
先代皇帝の勧めで二十歳で帝国諜報部に入るとメキメキと頭角を現し、遂には三十歳という異例の若さで帝国諜報部長官の座についた。
それから六十歳で引退するまでの三十年間、こいつは帝国の闇を支配してきたのだ。
だが、そのための代償も大きい。
帝国の闇を知り尽くしているって事はそれだけ帝国にとっても危険な人物って事だ。
引退後も隠居は許されず、監視のために皇帝の側で帝城の執事として生涯を終えねばならない。
死ぬまで皇帝に首に縄を付けられて飼い殺されなければならないんだ。
そんな男が一貴族の執事になるなど許されるはずがない!
「答えろ! テラーズ!」
「そう声を荒げないでください。ウィルバルト。特に裏の事情などありませんよ。帝城の執事の仕事を息子に譲り、以前の職務で知り得た情報は必要ない限り他言しない。その条件で私はシュナイデン卿の執事となったのです。陛下にもちゃんと許可はいただいておりますよ」
「そんな簡単に済む話じゃないだろ? アンタも皇帝も一体何を考えてるんだい? 場合によっちゃ、あの小僧にだって死んでもらわないといけないんだよ?」
「貴女にそれが出来きればの話ですけどね」
この爺……だけど短慮はいけないね。
こいつは厚顔無恥で冷酷無比の最低最悪のクズ野郎だけど、絶対に帝国の損害になる事を容認するような男じゃない。
帝国の敵となる人物は例え誰であろうと容赦しない。
かつてはそのために恋人すら手にかけたんだからね。
「安心なさい。シュナイデン卿に叛意はありませんよ」
「では何故……っ!」
「彼は純粋で何色にも染まりやすい。今はまだまともなウォーレイクの下にいますが、今後もそれしか見えないようでは困るのです」
「ウォーレイク元帥か。有能な良識人と聞いておるが、気になる事があるのか?」
「有能である。それだけで警戒すべき理由としては十分ですよ」
「つまり強大な力を持ったシュナイデンの小僧が道を外れないよう監視するためにアンタが付いたってわけかい?」
「平たく言えばそうです」
確かに。
あのロビンをいとも簡単に倒すほどの力を持っている男ともなれば首輪は必要か。
だが安い首輪では心許ないからテラーズが付いた。
一応筋は通ってるね。
「むぅ……よかろう。そういう理由であればとりあえずは納得しよう。他の思惑がなければな」
「信じてもらえないとは悲しいですね」
「ふん! 今までの行いが悪いからだよ!」
「ガッハハハハ! 違いないな!」
ウィルバルトの豪快な笑いが沈んでいた空気を吹き飛ばした。
なんだか昔に戻ったみたいで懐かしいね。
やれやれ……懐旧なんて私も年をとったもんだよ。
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