食うために軍人になりました【一人称版】

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第五章

東の陰謀

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「…という訳で、俺は東のジェニングス領に出向く事となったので、貴官達にも一緒に来てもらいたい」

 極秘会議の後、俺は閣下から同行する部下の人選を任されたので俺は四人を集めて事情を説明した。
 
「了解しました。軍令部の命令とあれば異論はありません。シュナイデン中佐の指揮下に入ります」

「私もですぅ! 一生懸命頑張りますのでぇ、よろしくお願いしますぅ!」

「よ、よ、よろしくお願い致します!」

「命令には従いますわ」

 アリシア、ファンティーヌ、イリア、クリスティーヌ。
 急な命令だったけど、快く了承してくれて本当に良かった。
 なんせ部下の人選を任されても俺は軍に知り合いなんてほとんどいないからなぁ。
 
「中佐。此度の作戦について今一度詳しいご説明いただいてもよろしいでしょうか?」

「そうですねぇ。西のクラッセン辺境伯に謀反の疑いがあるのはわかったんですけどぉ、私達は東のジェニングス領に向かうんですよねぇ?」

「その辺りも含めて今から説明する。先ず、今回の西のクラッセン辺境伯の謀反には不可解な点がある事はわかるか?」

「謀反を企てた理由ですか?」

「違うわよ、イリア。謀反の理由というより、このタイミングでの謀反って事の方が謎なのよ」

「リンテール大尉の言う通りだ。競合戦の期間中は帝都に帝国の最大戦力が集まるため地方の戦力は低下する。だが、それでも他国が侵攻して来ないのは何故か?」

「その後の反撃が怖いからです。なんせ帝国の最大戦力が揃って反撃に出てくるのですから」

「そういう事だ。侵攻自体は簡単でも占領維持が難しいとなれば敵も容易には攻めて来ない。そして、それを辺境伯が理解していないとも思えない」

「って事はぁ、今の時期に謀反を起こすのには何か裏があるって事ですよねぇ……うーん」

 四人は静かに考えを巡らせているのか、室内を沈黙が支配した。
 無理もない。
 俺だって閣下からあの三人の話を聞くまでは半信半疑だったしな。

「この時期に謀反を起こして得をするのは誰かを考えると自ずと答えは出てくる。それは……フェンドラだ」

「フェンドラ!? フェンドラって、あの東の海洋国家の事ですか!?」
 
「まさか……」

 全員が信じられないと言った顔をしている。
 帝国の東に位置するフェンドラが距離的には最も遠い西に関与しているなんて誰も思わないだろうからな。
 
「つまり辺境伯の謀反は陽動ですか?」

「そういう事だ。フェンドラは以前から東のジェニングス領を狙っていたからな。オリオール様、バランディン様、コクトー様の三人とジェニングス辺境伯がいない今が好機と思ったんだろう。そして、すぐに悟られないために西の謀反を画策した。そんなところだろうな」

「で、でもぉ、そんなに簡単に西に謀反を起こさせる事なんて出来るんですかぁ?」

「西のクラッセン辺境伯はよく有能な人材を直臣にしていたからな。そこをつけ込まれたんだろう。前回の西からの競合戦出場者にルドルフ、マルセル、ルーペルトって三人がいたんだが、こいつらも競合戦の後に直臣になっている。おそらくこいつらが今回の謀反の実行者だな」

「じゃ、じゃあ! クラッセン辺境伯は直臣に謀反を唆されたって事ですかっ!?」

 そこはまだわからないな。
 直臣となった三人が高齢のクラッセン辺境伯に変わってて方面軍を指揮していたかもしれない
 。そして辺境伯を幽閉するなりして謀反を起こした可能性も否定できないからな。
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