348 / 480
第五章
相見える
しおりを挟む
あれから競合戦は闘技場の修復という理由で中断される事が発表された。
国の一大イベントを中断させる事は難しいけど、よく決断したもんだ。
大抵は体面を気にして踏ん切りがつかずに、ズルズルと後手に回ってしまうものなんだがね。
それを即断即決するとは、さすがは陛下というところか。
しかし、今後の事まで全て陛下に委ねるわけにもいかない。
それでは臣下としてあまりにも情けない話だからな。
というわけで、俺は自宅に戻って今後の計画を考えている。
西方方面軍の司令官でもあるクラッセン辺境伯の謀叛と東の海洋国家フェンドラの侵攻は、正直どちらも難しい状況と言わざるを得ない。
俺は東に行く事になっているが、正直気が重い。
別に東が嫌というわけじゃない。
奴等が正面からやってくるなら自信はある。
だが、ゲリラ戦となれば話は別だ。
大部隊であれば動きを掴むのはそう難しい事ではないが、少数で動くゲリラ部隊は動きを掴むのが難しい。
情報を探れる優秀な眼と耳がたくさん必要となるし、それを分析できる頭脳も必要だ。
そして臨機応変な対応ができる有能な指揮官も必要だし、はっきり言って人材不足だ。
これを解決しない事には敵の術中に嵌ってしまい、下手をすればこちらが痛い目を見る事になる。
なんとかならないものか……
「旦那様」
「テラーズか。どうした?」
白髪の執事が愛も変わらずノックもせずに部屋に入って来ている。
音も気配もなくスッと入って来られるのは正直いい気はしないんだが、『気づかない方が悪いと思いませんか?』と言われるとなぁ。
武人としては反論のしようもない。
「先ほどあの者達が屋敷に到着致しました」
「そうか。思ったより早かったな。じゃあ少佐達に連絡して我が家に来てもらってくれ。軍の施設ではあいつらは入れないし、入りたがらないだろうからな」
「御配慮いただき感謝致します。それとヴォルガング少佐達は既に屋敷に来られています。何でも新しい屋敷を見たいとの事で」
「そうなのか? 言ってくれれば案内したのに」
「申し訳ありません。旦那様の邪魔はしたくないから伝えずに良いと言われましたので」
ああ、そういう事か。
なら仕方ないな。
しかし、今ので思い出した。
屋敷のお披露目パーティーをしないといけないんだよなぁ。
この作戦が終わったら考えないと。
「旦那様、どうかされましたか?」
「いや、今はいい。それより全員揃ったんなら広間に集めるように伝えてくれ。俺もすぐに行くから」
「かしこまりました」
そう言うとテラーズはスッと部屋から出ていった。
思ったより早く全員が揃ったな。
おかげで明日の出立までの準備が捗りそうだ。
さて、広間に行くか。
そう言えば誰が来たんだろ?
人選はテラーズに任せていたからなぁ。
ん? あれはメイドか?
なんで扉前で立ち尽くしているんだ?
国の一大イベントを中断させる事は難しいけど、よく決断したもんだ。
大抵は体面を気にして踏ん切りがつかずに、ズルズルと後手に回ってしまうものなんだがね。
それを即断即決するとは、さすがは陛下というところか。
しかし、今後の事まで全て陛下に委ねるわけにもいかない。
それでは臣下としてあまりにも情けない話だからな。
というわけで、俺は自宅に戻って今後の計画を考えている。
西方方面軍の司令官でもあるクラッセン辺境伯の謀叛と東の海洋国家フェンドラの侵攻は、正直どちらも難しい状況と言わざるを得ない。
俺は東に行く事になっているが、正直気が重い。
別に東が嫌というわけじゃない。
奴等が正面からやってくるなら自信はある。
だが、ゲリラ戦となれば話は別だ。
大部隊であれば動きを掴むのはそう難しい事ではないが、少数で動くゲリラ部隊は動きを掴むのが難しい。
情報を探れる優秀な眼と耳がたくさん必要となるし、それを分析できる頭脳も必要だ。
そして臨機応変な対応ができる有能な指揮官も必要だし、はっきり言って人材不足だ。
これを解決しない事には敵の術中に嵌ってしまい、下手をすればこちらが痛い目を見る事になる。
なんとかならないものか……
「旦那様」
「テラーズか。どうした?」
白髪の執事が愛も変わらずノックもせずに部屋に入って来ている。
音も気配もなくスッと入って来られるのは正直いい気はしないんだが、『気づかない方が悪いと思いませんか?』と言われるとなぁ。
武人としては反論のしようもない。
「先ほどあの者達が屋敷に到着致しました」
「そうか。思ったより早かったな。じゃあ少佐達に連絡して我が家に来てもらってくれ。軍の施設ではあいつらは入れないし、入りたがらないだろうからな」
「御配慮いただき感謝致します。それとヴォルガング少佐達は既に屋敷に来られています。何でも新しい屋敷を見たいとの事で」
「そうなのか? 言ってくれれば案内したのに」
「申し訳ありません。旦那様の邪魔はしたくないから伝えずに良いと言われましたので」
ああ、そういう事か。
なら仕方ないな。
しかし、今ので思い出した。
屋敷のお披露目パーティーをしないといけないんだよなぁ。
この作戦が終わったら考えないと。
「旦那様、どうかされましたか?」
「いや、今はいい。それより全員揃ったんなら広間に集めるように伝えてくれ。俺もすぐに行くから」
「かしこまりました」
そう言うとテラーズはスッと部屋から出ていった。
思ったより早く全員が揃ったな。
おかげで明日の出立までの準備が捗りそうだ。
さて、広間に行くか。
そう言えば誰が来たんだろ?
人選はテラーズに任せていたからなぁ。
ん? あれはメイドか?
なんで扉前で立ち尽くしているんだ?
4
あなたにおすすめの小説
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!!
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる