食うために軍人になりました【一人称版】

第七章

実力差

「魔力量はそこそこだが、制御の方はまだまだだな。無駄に魔力を放出し過ぎている」

　フォルネアが何事もなかったようにダメ出しをしてきた。
　今回はかなり良い感じだと思ってたんだけどなぁ。

「この威力で、まだフォルネア殿には不満があると仰るのですか？」

「まあね。ウォーレイク殿にわかりやすく説明すると、魔殻を解放すると魔力の出力が上がる代わりに制御が難しくなるのだ。確かに魔力は放出しないと使えないが、勢いに任せて放出してしまえば、それは霧散するだけで、ただ無駄に消費しているに過ぎない」

「だから、放出した魔力を再び体内に取り込んで、全身に張り巡らせることで驚異的な身体機能の向上が可能になるんです。俺は今回は結構いい感じにできたと思ったんですけど……」

「バカタレ！　放出した魔力の制御が甘いから周りの人間が吹っ飛んだんだよ！　調子に乗りおって！　僕が【魔法障壁マジックシールド】で覆ってなかったら、ウォーレイク殿も吹っ飛んでたところだ！」

　うっ……た、確かにちょっと張り切り過ぎて調子に乗ってたかも。
　久しぶりにアリシア達に会えたから、気分が上がってたのは否定しないし、強くなった自分を誇示したくなったのも本当だからな。
　というより、魔殻を解放するといつも気分が高揚しちゃうんだよ。
　これの方が抑えるのが大変だ。

「しかし、これだけの力です。完全にシュナイデン中佐は魔族に対抗しえる力を得たという事ですよね？」

「【上位種グレーター】程度の実力にはなっているよ。ただ【上位種】と言ってもピンキリだよ。一括りに考えるのはやめた方がいい」

「これでもまだ足りないと言うですか……我々は本当に恐ろしい敵を相手にしないといけないようですね」

　フォルネアの言うとおりだ。
　俺もフォルネアに勝てない。
　一度だけ本気で相手してもらったけど、手も足も出なかった。
　調子に乗っていた俺はあれで魔族がいかに強いかってことを、嫌と言うほど味わされたんだ。
　
「ところで、他の者達はどうなったんでしょうか？」

「あっ！　そうだった！　みんな、大丈夫かっ！？」

　濛々と舞い上がる土埃が落ち着いて、四方に散り散りになった皆んなの姿が見えてきた。
　中将やアリシア達はなんとか耐えたみたいだけど、ルーストレーム、ガルヴァン、シラナの3人は気を失っているようだ。
　やり過ぎたか？

「な、なんて魔力だ……こ、こんなに差があるのか？」

「だから言っただろ？　小娘。魔殻を破っただけじゃ意味ないんだよ。その放出した魔力をどれだけ自身の身体に宿せるかなんだ」

「そ、そんな……確かに強くなった自覚があったのに……」

「放出した魔力の大きさで勘違いしてるんだよ。お前達は放出した魔力の残りカス程度で喜んでいただけだ。まぁ、別の理由もあるけどな。そして、それこそが魔殻を破った人間が最も注意しないといけない事だ」