食うために軍人になりました【一人称版】

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第七章

増長

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「もっとも注意しないといけない事……それは何だ?」

「慢心だよ」

 中将の質問にフォルネアは簡潔に、そして冷徹にそう言い放った。
 そう、フォルネアが一度だけ俺と本気で闘ったのもその時だった。

「お前達は自惚れたんだよ。魔殻を破って魔力が上がった。そして、こう思ったんだろ? 『私はすごい力を手に入れた。私はすごい。もう私が負ける事なんかない』ってな。そんな奴等が、さらに強くなれると思うか?」

「そ、それは……」

 中将を含めた5人の顔が曇った。
 全員に思い当たる節があったんだろう。
 力を過信し、自惚れ増長してしまえば、あとの成長なんかない。
 俺も魔殻を破った後の力に自惚れて、これで魔族に勝てると思ってしまったからな。
 だから、フォルネアは俺を半殺しにした。
 上には上がいる。
 気をぬくなって事を俺に叩き込むために、悲痛な表情で俺を殴り続けていたっけ。
 あれは……キツかったなぁ。
 
「お前達にはこれから地獄を見てもらう。仮に死んでも恨むなよ? どっちみち、あと3週間で力をものにできなければ、お前達はアマナ王国に殺されるんだからな」
 
「……情けないことだ。まさか、私達が力に溺れるとは……」

 沈痛な面持ちの5人。
 本来なら全員が慢心や増長なんかとは縁がない人達なのはわかっている。
 だけど、それだけ甘美だったんだ。
 圧倒的な力ってやつは。

「先ずは高く伸びきったお前達の鼻を、僕がへし折ってやるよ。それと、そこで気を失ってるルーストレームもやらもな。リクト、お前は残りの奴等の魔殻解放を進めておけ」

「えっ? いや、俺が実戦訓練の方が良くないか? 魔殻解放はフォルネアの方が詳しいだろうし、対処法も……」

「いいんだよ。こいつらにはお仕置きが必要だからな。お前じゃご褒美になりかねん。僕の相棒に色目使いやがって……とことん地獄を見せてやる」

 そう言うと、フォルネアは項垂れた5人と、気絶したルーストレームを引きずって行った。
 なんとなく、私怨が混じってる気がするのは気のせいか?
 まぁ圧倒的な実力差を知るならフォルネアの方がいいのかもしれないな。
 しかし、そうなると俺は、とりあえずはガルヴァンとシラナの面倒を見ないといけないのかな?

「お帰りなさいませ、旦那様」

 気絶している二人を起こそうとした時、後ろから声をかけられた。
 このくぐもったような声、懐かしいな。
 それにしても、全員が随分と腕を上げたようだ。
 1年前と気配がまるで違うじゃないか。
 こいつらは鍛錬をサボっていたわけじゃなさそうだ。

「随分と腕を上げたようだな」

 振り返ると、そこには鉄仮面のメイド長と、7人の使用人が膝をついて頭を下げていた。
 
「お言葉、痛み入ります。ですが、無礼を承知で旦那様にお願いしたい事がございます。どうか、私どもの首をお刎ください」

 ヒルダは鉄仮面を脱ぎ捨て、首を晒してから更に頭を下げてそう言った。
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