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第一章
元行き倒れ君 中編
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「冒険者をなめやがって! 絶対に許さねぇ!」
怒り狂うガンテスが今にも店主を殴り飛ばそうとしている。
いや、金級冒険者でドワーフのガンテスが殴ったら確実に店主は死ぬんだから、正確には殴り殺そうしているだな。
なんて悠長な事を言ってる場合じゃない!
今のガンテスは俺には止められない!
俺が焚きつけたせいで人が死ぬのは流石に寝覚めが悪い。
こうなったら、仕方ない……
俺の奥の手を見せてやる!
驚くんじゃないぜっ!
「ヴァイオレットぉおおおお! 今日は唐揚げを食わせてやるぞぉおおお!!」
「唐揚げ大好きぃいいいいい!」
遠くから戦慄の足音と共に土煙がものすごい速さで近づいてくる。
良かった! 近くにいた!
「ありがとう! 唐揚げ! 大好き! リョウちゃん!」
近づいた土煙が晴れると綺麗な顔がひょっこり顔を出して食欲を全開にさせた。
ガンテスの相方、万年腹ペコエルフのヴァイオレット。
毎回呼んだらすぐに飛んでくるのが不思議で仕方ないけど、今回ばかりは助かったよ!
「ねぇねぇ! 早く唐揚げ食べに行こうよ!」
「ヴァイオレット! 先にガンテスを止めてくれ!」
眼前まで接近して周りの状況が全く見えてないヴァイオレットの身体をガンテスの方に強引に向けてやった。
こんだけ騒動になってるのに気づかないなんて、食事しか眼中にないのか? こいつは!
「うん? あぁ! ガンテスが喧嘩してる! こらっ! やめなさい!」
「止めるな、ヴァイオレット! こいつはやっちゃあいけねぇ事をしたんだ! 俺達冒険者にとって魔法薬は生命線なんだ! それをこいつはっ!」
「ひぃ……た、たすけ……」
店主は既に涙目になって命乞いに徹している。
ガンテスの言いたい事もわかるけど、殺すのはダメだ。
後々面倒な事になる。
「何事だっ!?」
奥から衛兵達が駆けつけてくるのが見える。
これだけ騒げばそりゃ来るだろうね。
責任もあるし、とりあえずの説明は俺がしておくか。
「これは一体何の騒ぎだっ!?」
「すいません、衛兵さん。この店主が粗悪な魔法薬を売っていたので、それが原因で揉めていたのです」
「粗悪品だと? それが本当なら見過ごすわけにはいかん。おい、誰か魔法薬に詳しい者か鑑定士を呼んできてくれ」
「あの……僕は一応、鑑定士です。これが証書です」
おずおずと証書を見せながらヨハンが前に出た。
ふぅ、名乗り出てくれて助かったよ。
「鑑定士証書? じゃあ、この店の魔法薬は粗悪品で間違いないんだな?」
「はい。魔法薬の要とも言える封と魔瓶にかなりの損傷が見られます。これでは魔法薬として十分な効果はありません。それに瓶の傷の付き方からすると、盗品の可能性もあるかと」
「なんだと!? おい、店主を引っ捕えて尋問せよ! 最近あった強盗事件と関係があるかもしれん!」
「はっ!」
鼻息を荒くしたガンテスはヴァイオレットによって引き剥がされ、店主は衛兵に捕まって証拠品と共に連行されて行った。
ちなみにこっそり【鑑定】したが、露店の魔法薬はほとんど粗悪品で、しかもヨハンの言う通り一部は盗品だった。
【鑑定】の魔法もないのに大したもんだ。
「チッ! 殴り損ったぜ!」
「駄目だよ。ガンテスが殴ったら大抵の人間は潰れた赤唐柿みたいになっちゃうよ。くだらない奴の血で街を汚さないで!」
「ふん! 冒険者の命を代償にして金儲けしようとする奴等なんか全部潰しちまえばいいんだよ! それに比べてお前さんには助けられたぜ」
険のとれた穏やかな顔でガンテスはヨハンの肩をポンポンと叩いた。
折れないか冷や冷やするからやめてくれ。
「それよりリョウちゃん! 唐揚げは? お腹すいちゃったよぉ!」
「何っ!? 唐揚げってアレか!? 初めてリョウの家で食った鳥の揚げ物か!? アレは美味かった! 俺も食べるぞ!」
本来なら御免被りたいところだが、今日は少し頼みもあるし、コイツらを連れて帰るか。
やれやれ、自分のお人好しさに呆れてしまうよ。
怒り狂うガンテスが今にも店主を殴り飛ばそうとしている。
いや、金級冒険者でドワーフのガンテスが殴ったら確実に店主は死ぬんだから、正確には殴り殺そうしているだな。
なんて悠長な事を言ってる場合じゃない!
今のガンテスは俺には止められない!
俺が焚きつけたせいで人が死ぬのは流石に寝覚めが悪い。
こうなったら、仕方ない……
俺の奥の手を見せてやる!
驚くんじゃないぜっ!
「ヴァイオレットぉおおおお! 今日は唐揚げを食わせてやるぞぉおおお!!」
「唐揚げ大好きぃいいいいい!」
遠くから戦慄の足音と共に土煙がものすごい速さで近づいてくる。
良かった! 近くにいた!
「ありがとう! 唐揚げ! 大好き! リョウちゃん!」
近づいた土煙が晴れると綺麗な顔がひょっこり顔を出して食欲を全開にさせた。
ガンテスの相方、万年腹ペコエルフのヴァイオレット。
毎回呼んだらすぐに飛んでくるのが不思議で仕方ないけど、今回ばかりは助かったよ!
「ねぇねぇ! 早く唐揚げ食べに行こうよ!」
「ヴァイオレット! 先にガンテスを止めてくれ!」
眼前まで接近して周りの状況が全く見えてないヴァイオレットの身体をガンテスの方に強引に向けてやった。
こんだけ騒動になってるのに気づかないなんて、食事しか眼中にないのか? こいつは!
「うん? あぁ! ガンテスが喧嘩してる! こらっ! やめなさい!」
「止めるな、ヴァイオレット! こいつはやっちゃあいけねぇ事をしたんだ! 俺達冒険者にとって魔法薬は生命線なんだ! それをこいつはっ!」
「ひぃ……た、たすけ……」
店主は既に涙目になって命乞いに徹している。
ガンテスの言いたい事もわかるけど、殺すのはダメだ。
後々面倒な事になる。
「何事だっ!?」
奥から衛兵達が駆けつけてくるのが見える。
これだけ騒げばそりゃ来るだろうね。
責任もあるし、とりあえずの説明は俺がしておくか。
「これは一体何の騒ぎだっ!?」
「すいません、衛兵さん。この店主が粗悪な魔法薬を売っていたので、それが原因で揉めていたのです」
「粗悪品だと? それが本当なら見過ごすわけにはいかん。おい、誰か魔法薬に詳しい者か鑑定士を呼んできてくれ」
「あの……僕は一応、鑑定士です。これが証書です」
おずおずと証書を見せながらヨハンが前に出た。
ふぅ、名乗り出てくれて助かったよ。
「鑑定士証書? じゃあ、この店の魔法薬は粗悪品で間違いないんだな?」
「はい。魔法薬の要とも言える封と魔瓶にかなりの損傷が見られます。これでは魔法薬として十分な効果はありません。それに瓶の傷の付き方からすると、盗品の可能性もあるかと」
「なんだと!? おい、店主を引っ捕えて尋問せよ! 最近あった強盗事件と関係があるかもしれん!」
「はっ!」
鼻息を荒くしたガンテスはヴァイオレットによって引き剥がされ、店主は衛兵に捕まって証拠品と共に連行されて行った。
ちなみにこっそり【鑑定】したが、露店の魔法薬はほとんど粗悪品で、しかもヨハンの言う通り一部は盗品だった。
【鑑定】の魔法もないのに大したもんだ。
「チッ! 殴り損ったぜ!」
「駄目だよ。ガンテスが殴ったら大抵の人間は潰れた赤唐柿みたいになっちゃうよ。くだらない奴の血で街を汚さないで!」
「ふん! 冒険者の命を代償にして金儲けしようとする奴等なんか全部潰しちまえばいいんだよ! それに比べてお前さんには助けられたぜ」
険のとれた穏やかな顔でガンテスはヨハンの肩をポンポンと叩いた。
折れないか冷や冷やするからやめてくれ。
「それよりリョウちゃん! 唐揚げは? お腹すいちゃったよぉ!」
「何っ!? 唐揚げってアレか!? 初めてリョウの家で食った鳥の揚げ物か!? アレは美味かった! 俺も食べるぞ!」
本来なら御免被りたいところだが、今日は少し頼みもあるし、コイツらを連れて帰るか。
やれやれ、自分のお人好しさに呆れてしまうよ。
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