きっと私は悪役令嬢

麻生空

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と、ある侍女視点2

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「これから二人で大事な話しがあるんだ。話が終わったら呼ぶからそれまで下がってて」

ニコリと微笑まれるアレンデル殿下。

大事な話とは何?

すると、百面相のように顔色を変えていたエド様が突如声を発せられた。

「あぁぁぁ……」

左手で唇を押さえながらアレンデル殿下を見るエド様。

「昨夜の事を思い出したんだね。エドは本当に初々しい。ごめんね、君の初めてを奪ってしまって」

そう言ってアレンデル殿下はエド様の右手をそっと自身の方へと引き寄せると「チュッ」と音を立てて口付けした。


ってか『君の初めて』?
それって、つまり後ろの穴の処女ですか?
つまり、昨夜はアレンデル殿下が攻めでエド様が受け。

エド様は顔を赤らめてフラりとした所をアレンデル殿下が空かさずホールドされる。

「おっと危ない」

とアレンデル殿下は体に似合わず逞しくエド様を支えられた。

何かの余韻を楽しむようなお二人に、ここに居ては危険だと素早く察知した私とは隣で硬直している男を小突くと目配せで『逃げるわよ』と合図を送った。

勿論彼の答は『イエス』だ。

良く他人の恋路を邪魔するやつはと言うが、今まさにそんな状態だ。
きっと、これからのお二人のお付き合いについて話し合うのだろう。
何せアレンデル殿下は第二王子。
白紙になるとの噂もあるが一応まだ婚約者もいる。
それに、エド様は可愛らしい美少年だけど、性別は二人とも男だ。

確かに第二王子だから子供を作らなければならない縛りはない。

勿論男同士でセックスしたとしても政治的な実害はないだろう。
で、あればだ。
二人で心行くまでめくるめく官能の世界に旅立ってくれてもかまわないと思う。

まぁ、これ程の美男子が子孫反映に貢献しないのは違う意味で国の損失だとは思うが、そこはほら馬に蹴られたくないじゃない?

故に、アレンデル殿下から変な恨みを買う前に退散あるのみ。

私達は二人同時に扉の方まで移動すると、
「「失礼致しました」」
と、まるで壊れた機械人形のようにお辞儀をして部屋を退出したのだった。



ーーーーーーーと、そこまでの話をし終わると、休憩室で聞き耳を立てていた侍女達全員が身悶えし出した。

「「「キャ~!!それって、それですわよね~」」」

「つまり、つまりですわよ。アレンデル殿下とエド様は……」

「いけませんわ。王族の方に対して不敬な発言は」

「「「……」」」

一瞬の沈黙の後、私はおずおずと手を上げた。

「あの、私、アレンデル殿下付の侍女一同を代表して『アレンデル殿下とエド様を見守る会』の結束を申請したいと思います」

カナリア殿下の件で他の侍女達から遅れを取っている我等アレンデル殿下付の侍女。

けど、ここで侍女同盟の中心部に返り咲いても良いと思うんです。

けど、カナリア殿下付の侍女の方が私達より何枚も上手だった。

「分かりましたわ。その案許可致します 。但し、カナリア殿下の承認も必要ですのでそのおつもりで」

何時も上位にいるカナリア殿下付の侍女。
しかし、誰が有利とかそんなのもう関係ございません。

だって、私達の主君が初めて恋をされたのです。

浮わついた男達との有りもしない噂なんてもう要りません。

だって、我等が主君の真実の愛。

それを盛り上げてこその側付の侍女ですわ。

「ええ、では『アレン×エド』で」
「何を言ってますの『エド×アレン』でしょう」
「そちらこそ何を言ってますの」

そう言って揉める侍女達を一人冷めた目で見ていた一人の侍従は『そんなのどっちだって同じような事だろう?俺の可愛い殿下が本気で男に走ってしまったのだから……』

そして、自身の危ない思考に一切気付かない侍従は一人ため息を吐いたのであった。
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