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第四章

264『ダンジョンの異常』

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「変ねぇ……
 この大陸のダンジョンって、こんなものなのかしら」

 序層ではザコ魔獣を蹴散らし、上層前半も然り、ようやく50階層くらいからそこそこな魔獣が出てきたので【真空】や【血抜き】などを使って屠っていく。
 回収はイェルハルドだ。
 彼は、いつもはイジたちが持たされているアイテムボックス(ウエストポーチ型)に魔獣を放り込んでいく。

「マスター、そろそろ中層だろう?
 少し休憩しないか」

「うん、もうちょっと」

 反対に勢いを増して飛行するアンナリーナに、西風の精霊王は這々の体で後を追った。
 そして。


「いくらなんでも異常なんじゃない?」

 今アンナリーナたちは中層に入ったところ、第83階層にいる。
 ここ何階層か、出現する魔獣の数が増えていたのだが、いくらなんでもこれはない。
 ……眼前を埋め尽くす、魔獣、魔獣、魔獣。

「これって、スタンピートの前段階じゃないの?」

 とりあえず、全部始末することにする。
 今、アンナリーナの前に顔を晒しているのはオークが多い。

「【広範囲結界】そして【真空】」

 これの繰り返しでどんどん屠っていく。

「マスター~ 魔力は大丈夫?」

「まったく大丈夫!絶好調でガンガンいくよ!!」

 アンナリーナの元に押し寄せてくる魔獣の種類が変わってきた。
 最初はオーク、そしてオーガだったが、トロール、サイクロプスと大型化していき、次は獣系のベア種にウルフ種、そしてアンナリーナの出身大陸では見ない猿系、それも大型種が出現した。

「エイプ……初めて見た」

 薄暗いダンジョンの中、アンナリーナは【ライト】であたりを照らしている。
 その中で白っぽく浮き上がる猿人型魔獣がかなりの数、続いていた。

「【血抜き】」

「マスター、人使い荒いよね」

「あはははー
 もっと行っちゃうよ~」

 妙にテンションの高いアンナリーナは縦横無尽に飛び回り、片付けていく。




 ぶわりとした浮遊感を伴ってアンナリーナが現れたのは、冒険者ギルドの帰還陣だった。

「ダンジョンから一気に戻ってこれるって【帰還石】って便利よね。
 こんなシステムがあるのは、ブエルネギア大陸でもここだけだと言うから、このダンジョンは色々特別なのね」

【帰還石】とはここのダンジョンのいかなる場所からでも、冒険者ギルドの帰還陣に転移できるアイテムだ。
 これのおかげで帰りの心配をせずにダンジョン攻略を進められる。

「お帰りなさいませ。
 ギルドカードを提示していただけますか。
 素材の買取りはどうなさいます?」

 ギルドカードを取り出し、帰還陣担当の職員に渡す。
 すると。

「!! はちじゅうさん階層!
 少々お待ち下さい」

「?」

 この、ダンジョン専用のギルドカードには到達階層が表示されるらしい。
 まるで前世のラノベの設定のようだとしみじみしていたら、職員が上役の中年男を連れて戻ってきた。
 ちょうど良い。

「あの、ちょっと報告した方がいいかも、な事があったんですけど」

 その時帰還陣から6人パーティが現れた。このままでは少々手狭である。
 こうして、中年男の案内でアンナリーナは、机と椅子の並んだ部屋に案内された。

「リーナ殿、と仰るか。
 私はこの【迷宮都市】冒険者ギルドの副ギルド長、ネイサン・メイだ。
 貴方は今日、初めて潜ったこのダンジョンで83階層まで到達されたそうだが……これは近々5年間で最高到達階層だ。

「え? マジ?」

「マジだ」
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