42 / 57
第一章
39.王太子の目論見ー確認編ー
しおりを挟むアルベルトは、スノーベル侯爵家へ乗り込む前に、早急に確認すべきことを済ませようと該当の人物を呼び出した。
「アルベルト殿下、お呼びだと聞いたのですが……」
グロリオーサ王宮の執務室で待機していたアルベルトの前に、グレース公爵家子息――ライモンドが連れて来られた。
数日前、カトレアへの謝罪の場を設けて以降、アルベルトとライモンドに接触はなく、これがその後、初の対面である。
「わざわざご足労いただきありがとう。貴殿にはいくつか確認したいことがあって、このように召喚させてもらった」
ピンと張り詰めた空気に、ライモンドは、今、己の目の前に座っているのが、グロリオーサ王立学園高等部の生徒ではなく、グロリオーサ王国王太子としてのアルベルトであると気づき、サッとその場に跪いた。
ライモンドの案内をしてきた騎士たちが、音もなく後ろに下がり敬礼をする。
「ああ、お前たちはもう下がって良い。グレース公爵家子息殿、畏まった挨拶はそのくらいにして、そちらへ掛けてくれ」
アルベルトは、騎士たちに指示を出して退出させ、ライモンドには己の向かい側のソファを示した。
「は、失礼いたします」
ライモンドは立ち上がり、アルベルトの向かい側に腰を下ろした。
「回りくどいことはせず、単刀直入に問う。その問いは、貴殿には耳の痛いことかと思うが――これから私が行なう聴取は、ある重罪事件の調査に関わっており、公式に記録される。私の問いに、嘘偽りなく、隠蔽することもなく、全て正直に答えるように。よろしいな?」
「は、畏まりました。私――ライモンド・グレースは、此度のアルベルト王太子殿下からの問い掛けに、真実を偽ることなく、全て正確にお答えすることを宣誓いたします」
ライモンドは右手を己の胸に当て、真っ直ぐアルベルトの顔を見据えて誓った。
「よろしい。では、まず一つ目の問いは――」
アルベルトは、手元の書状を開示し、ライモンドの聴取を開始した。
そして、次々と判明していく事実に、沸々と湧き起こる怒りを何とか堪え、全ての問答を終えることができたのであった――
応援ありがとうございます!
2
お気に入りに追加
2,985
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる