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先生は同性愛者
03
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同じ病院で働けば旭と一緒に仕事ができると信じて疑わなかった高校生時代。それが現実を見始め、もう会えない日がやってくるという実感がひしひしと向こう側から攻めてくる。
2週間に1度しか会えなくても、必ず会えると約束されていた今までとは違うのだ。数ヶ月間会えなかったり、会えたとしても廊下ですれ違う程度だろう。新人で外来に就職する可能性は限りなくゼロに近いし、外来だってなんの技術も持たない使えない看護師などいらないと突っぱねることだろう。
少なくとも3年は病棟で修行をし、運良く内分泌内科に移動となることを願うしかなかった。
それを踏まえると、本日は夕映にとって大切な日だった。旭に相手にされていなくとも、看護師に笑われようとも、夕映は至って真剣なのだ。
暖房は切られてしまったのか、薄暗い廊下は寒さを増した。外来への出入りがなくなったら節約でもするのか、電気もエアコンも最低限になるらしい。
夕映は、小さなショルダーバッグの中からスマートフォンを取り出した。時間を確認しようと暗い画面に視線を落とす。
その瞬間、ガチャっとドアが開く音がした。夕映は反応して顔を上げると、右足を1歩踏み出した。しかし、目に入った看護師の姿を見つけて咄嗟に柱の影に隠れた。
「ねぇ、荻乃先生なんか機嫌悪くない?」
そんな言葉が聞こえ、夕映は耳を澄ます。
「あー、そう? いつもあんな感じじゃない? 素っ気なくてつまんない」
おそらく旭の話をしているのだろうと思った夕映は、そっと柱の影から顔を出した。ちょうど2人の看護師の横顔が見えた。しっかりドアが閉まった内分泌内科の外来前で立ち止まっていた。
2週間に1度しか会えなくても、必ず会えると約束されていた今までとは違うのだ。数ヶ月間会えなかったり、会えたとしても廊下ですれ違う程度だろう。新人で外来に就職する可能性は限りなくゼロに近いし、外来だってなんの技術も持たない使えない看護師などいらないと突っぱねることだろう。
少なくとも3年は病棟で修行をし、運良く内分泌内科に移動となることを願うしかなかった。
それを踏まえると、本日は夕映にとって大切な日だった。旭に相手にされていなくとも、看護師に笑われようとも、夕映は至って真剣なのだ。
暖房は切られてしまったのか、薄暗い廊下は寒さを増した。外来への出入りがなくなったら節約でもするのか、電気もエアコンも最低限になるらしい。
夕映は、小さなショルダーバッグの中からスマートフォンを取り出した。時間を確認しようと暗い画面に視線を落とす。
その瞬間、ガチャっとドアが開く音がした。夕映は反応して顔を上げると、右足を1歩踏み出した。しかし、目に入った看護師の姿を見つけて咄嗟に柱の影に隠れた。
「ねぇ、荻乃先生なんか機嫌悪くない?」
そんな言葉が聞こえ、夕映は耳を澄ます。
「あー、そう? いつもあんな感じじゃない? 素っ気なくてつまんない」
おそらく旭の話をしているのだろうと思った夕映は、そっと柱の影から顔を出した。ちょうど2人の看護師の横顔が見えた。しっかりドアが閉まった内分泌内科の外来前で立ち止まっていた。
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