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先生は同性愛者
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ただ、納得はできた。自分に一切興味を見せないのは、恋愛対象が男性であると知ったから。自分だけではなく、女性全員が恋愛対象ではないとわかった時、なんとなく優越感に浸った。当然それを知りながら夕映が旭に告白をした時には、おかしくて涙が出そうだった。
あなたは絶対に相手にされないのよ。そう言ってやりたかった。秘密を知っていながらも普段通り旭と接していたのは、杏奈なりの優しさであると自負していた。
男性が好きだと知っても軽蔑などしない心優しい人間なのだとアピールしたかった。それは他でもない旭に感謝してもらいたかったからだ。恋愛対象でなくても特別な相手として認めてもらいたかったから。
杏奈がこの事実に気付いていると旭自身は知らないが、本人が察するように武内保の名前を何度も口に出してみた。
少し反応する様子から、片想いの相手は彼なのだと確信していた。いつか言ってやろうと思いながら、それでも距離を縮める方が先だと試行錯誤を重ねたが結局上手くはいかなかった。
それどころか本日は仕事をしろと言われる始末。感謝されることはあれど、敬遠される覚えはないと思った杏奈は、旭が心底困ればいいと考えたのだった。
病棟内の人間から軽蔑され、好奇の目に晒されれば、いかに自分の存在がありがたいか気付くだろうと思った。
「それ本当なの?」
「じゃあ、本人に聞いてみれば?」
「いや……そんなこと聞けるわけないでしょ。本当だったらどうすんのよ」
「本当だってば。だから今年の記念パーティーも荻乃先生だけパートナーなしで参加するんでしょ」
「あぁ……パートナー同伴オッケーなんだっけ? 記念パーティーって毎年やってんの?」
「知らないけど、荻乃先生達の同期だけ全員今年度で30歳だからそれもあってパーティーするって聞いたけど」
夕映は更に耳を立て、話に集中した。
あなたは絶対に相手にされないのよ。そう言ってやりたかった。秘密を知っていながらも普段通り旭と接していたのは、杏奈なりの優しさであると自負していた。
男性が好きだと知っても軽蔑などしない心優しい人間なのだとアピールしたかった。それは他でもない旭に感謝してもらいたかったからだ。恋愛対象でなくても特別な相手として認めてもらいたかったから。
杏奈がこの事実に気付いていると旭自身は知らないが、本人が察するように武内保の名前を何度も口に出してみた。
少し反応する様子から、片想いの相手は彼なのだと確信していた。いつか言ってやろうと思いながら、それでも距離を縮める方が先だと試行錯誤を重ねたが結局上手くはいかなかった。
それどころか本日は仕事をしろと言われる始末。感謝されることはあれど、敬遠される覚えはないと思った杏奈は、旭が心底困ればいいと考えたのだった。
病棟内の人間から軽蔑され、好奇の目に晒されれば、いかに自分の存在がありがたいか気付くだろうと思った。
「それ本当なの?」
「じゃあ、本人に聞いてみれば?」
「いや……そんなこと聞けるわけないでしょ。本当だったらどうすんのよ」
「本当だってば。だから今年の記念パーティーも荻乃先生だけパートナーなしで参加するんでしょ」
「あぁ……パートナー同伴オッケーなんだっけ? 記念パーティーって毎年やってんの?」
「知らないけど、荻乃先生達の同期だけ全員今年度で30歳だからそれもあってパーティーするって聞いたけど」
夕映は更に耳を立て、話に集中した。
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