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先生は同性愛者
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夕映は諦めなかった。ここで諦めたら、そのまま距離を置かれて終わる気がした。就職しても避けられそうで怖かったのだ。
「先生……先生の好きな人って男の人ですよね?」
おずおずと尋ねてみた。違いますよ、そう言っていつものように余裕の笑みを見せると思った。しかし、旭はすっと瞼を上げると瞳を揺らした。
あからさまに驚いたような表情を見せた旭に、ドクドクと心臓が激しく音を立てるのが聞こえた。
旭の好きな人がわかった。それは嬉しいはずの情報。男性であって妻もいる。想いが通じ合う可能性はないに等しいというのに、なぜか夕映は喜びよりも切なさが勝った。
「どうしてそれを?」
旭は誤魔化そうとはせず、じっと夕映の目を見つめた。夕映はてっきりはぐらかされると思っていたものだから、反対に驚かされ大きな瞳を更に大きくさせた。
「さっき……たまたま聞いてしまいました。武内先生という男性が好きだと噂されているのを……」
「ああ……。そうですか。もう噂になってるんですか」
旭はすっと目を伏せた。悲しみに暮れる憂いを帯びた表情は、なんとなく艶っぽくて夕映は息をのんだ。
「もうって……先生、知ってたんですか?」
「なんとなく。彼の名前を度々聞くことがあって、あぁわざとかなって思ったことがあってね。橘さんでしょ?」
「え!?」
「違う? あ、橘さんってわからないか……」
さらりと橘杏奈の名前が当人から出てきて夕映は驚愕したのだが、旭はなぜか淡々としていた。その動じない姿に大人だなぁ……と感心せざるを得なかった。
「先生……先生の好きな人って男の人ですよね?」
おずおずと尋ねてみた。違いますよ、そう言っていつものように余裕の笑みを見せると思った。しかし、旭はすっと瞼を上げると瞳を揺らした。
あからさまに驚いたような表情を見せた旭に、ドクドクと心臓が激しく音を立てるのが聞こえた。
旭の好きな人がわかった。それは嬉しいはずの情報。男性であって妻もいる。想いが通じ合う可能性はないに等しいというのに、なぜか夕映は喜びよりも切なさが勝った。
「どうしてそれを?」
旭は誤魔化そうとはせず、じっと夕映の目を見つめた。夕映はてっきりはぐらかされると思っていたものだから、反対に驚かされ大きな瞳を更に大きくさせた。
「さっき……たまたま聞いてしまいました。武内先生という男性が好きだと噂されているのを……」
「ああ……。そうですか。もう噂になってるんですか」
旭はすっと目を伏せた。悲しみに暮れる憂いを帯びた表情は、なんとなく艶っぽくて夕映は息をのんだ。
「もうって……先生、知ってたんですか?」
「なんとなく。彼の名前を度々聞くことがあって、あぁわざとかなって思ったことがあってね。橘さんでしょ?」
「え!?」
「違う? あ、橘さんってわからないか……」
さらりと橘杏奈の名前が当人から出てきて夕映は驚愕したのだが、旭はなぜか淡々としていた。その動じない姿に大人だなぁ……と感心せざるを得なかった。
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