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先生は同性愛者
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「はいはい。別れるね。でも旭はまた俺に連絡してくると思うよ。旭は俺じゃなきゃダメなんだから」
彼は本気にしてはいなかった。けれど、2人のアパートを解約して連絡先を消した旭に慌てて連絡してきたのは彼の方だった。
「なぁ、旭。まだ怒ってるの? 他のは遊びだって言ったじゃん。新しいマンションに住んでるからおいでよ。また一緒に暮らそう」
そんな甘い言葉を囁いた。しかし、旭が彼に執着することはなかった。頭の中はいつだって保でいっぱいだった。触れられなくても、想いを告げられなくても、影でその笑顔を見られるだけで幸せだと思った。
忘れていた初恋を思い出したかのようで、付き合うことだけが全てじゃないと知った。
「好きな人がいる。……もうその人のことしか考えられない」
「何それ。本気になったってこと? 気持ちまで持ってかれてんじゃねぇよ、裏切り者」
なぜか反対に責められたが、もう旭にとってはどうでもよかった。あんなに好きだったはずなのに、諦めがついたら相手の言葉なんて何の効力もないことに気付いた。
もっと早く別れればよかった。
そう1人の部屋で呟いた。
そんなふうに思わせてくれたのも、幸せな一時をくれたのも保だ。特別なことなどしてもらわなくても、保の存在だけが旭の心を満たした。
だから、彼のことを困らせたくはなかった。保のことだから、旭の噂が広まったとしても「困ったね」なんて言いながら笑ってくれるような気がした。
そんな優しい彼のことを巻き込むわけにはいかない。武内は奥さんと幸せな家庭を築いていているんだから、その日常に傷を付けることなんてできない。俺のせいで嫌な思いはさせたくない。
そう旭は強く思っていた。
彼は本気にしてはいなかった。けれど、2人のアパートを解約して連絡先を消した旭に慌てて連絡してきたのは彼の方だった。
「なぁ、旭。まだ怒ってるの? 他のは遊びだって言ったじゃん。新しいマンションに住んでるからおいでよ。また一緒に暮らそう」
そんな甘い言葉を囁いた。しかし、旭が彼に執着することはなかった。頭の中はいつだって保でいっぱいだった。触れられなくても、想いを告げられなくても、影でその笑顔を見られるだけで幸せだと思った。
忘れていた初恋を思い出したかのようで、付き合うことだけが全てじゃないと知った。
「好きな人がいる。……もうその人のことしか考えられない」
「何それ。本気になったってこと? 気持ちまで持ってかれてんじゃねぇよ、裏切り者」
なぜか反対に責められたが、もう旭にとってはどうでもよかった。あんなに好きだったはずなのに、諦めがついたら相手の言葉なんて何の効力もないことに気付いた。
もっと早く別れればよかった。
そう1人の部屋で呟いた。
そんなふうに思わせてくれたのも、幸せな一時をくれたのも保だ。特別なことなどしてもらわなくても、保の存在だけが旭の心を満たした。
だから、彼のことを困らせたくはなかった。保のことだから、旭の噂が広まったとしても「困ったね」なんて言いながら笑ってくれるような気がした。
そんな優しい彼のことを巻き込むわけにはいかない。武内は奥さんと幸せな家庭を築いていているんだから、その日常に傷を付けることなんてできない。俺のせいで嫌な思いはさせたくない。
そう旭は強く思っていた。
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