その傷を舐めさせて

友達、あげようか？

03

　仕事で怒られるのは仕方がない。ただ、旭と付き合っているという噂だけで、こうも妬まれ酷い仕打ちを受けるものかと納得がいかなかった。
　辛くて涙が出そうでも、「泣けば済むと思ってるでしょ」なんて先に言われたら、泣くことも許されなかった。だから夕映は、こうやって仕事が終わると誰もいないロッカールームで1人涙を流した。

　覚えることも多く、毎日勉強をしなければ何を言われているのかさえわからない。予習に復習を重ねるがために就寝時間も遅くなる。朝は先輩看護師達よりも更に早く出勤するため、出勤時間の1時間前から病棟で情報収集をする。1つでも情報漏れがあれば「なんのために早く来たの？　患者の状態もわからないで何をみるつもり？　早く出勤しても情報収集できないならもう帰るのやめれば？」そんなふうに鼻で笑われることもしばしば。
　加えて他の看護師達と同じスピードで仕事がこなせるはずもなく、毎日残業を強いられていた。入社1ヶ月は新人の残業不可という謎のルールがあったがために、先月までは定時で帰宅できていたが、最近では家に着けば22時を回っていることなどざらだった。

　毎日の睡眠時間は3時間ほど。1日の大半を病院で過ごす。夕映が心抉られる理由は他にもあった。自分と同じ新人が全員同じ待遇を受けていたのなら、まだ救いがあった。しかし、同期皆で仲良くしようね、と言ってたにもかかわらず、旭と付き合っているという噂を聞きつけるや否や、皆で夕映を敬遠したのだ。
　同期に至っては、嫉妬からではない。夕映と仲良くしているところを見られようものなら、自分達も先輩看護師から不当な扱いを受けてしまうのではないかという恐怖からだった。

　同じ病棟に配属された新人は、夕映を含め4人だったが、他3人は夕映に見せびらかすようにして先輩達から可愛がられていた。