その傷を舐めさせて

雪村こはる

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お付き合いすることになりまして

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 夜天とのパジャマパーティーから1週間が経過した。夕映はこのところ、あの日のことばかり考えている。
 仕事へ行く夜天に合わせて一緒にマンションを出た。なんだからソワソワ落ち着かなくて、気恥ずかしくて、まともに夜天の顔を見れないまま自宅へと送り届けてもらった。

 帰宅してから傷口が疼いた。痒いような、もどかしいような。けれど、その度に夜天の熱い舌の感覚を思い出す。途端にまた顔を赤らめる。

 夜天さん……なんで傷口舐めたんだろ。
 1週間経った今でもそんなことをぼやっと考える。

 夜勤明けの本日は、すっかり疲れ果てて熟睡した。幸いにも夜勤を教えてくれたのは2回とも遥で、3回目は詩だった。山本が教育係から外れてから、仕事の大変さは変わらないものの精神的に少し楽になった。
 今回の夜勤も不安があったものの、何とか乗り越えられた。3回目を終えたらいよいよ1人立ちだ。あと1回しか教えて貰えるチャンスはない。ちゃんと復習してできるようにならなければ、と仰向けに寝転んだベッドの上で思うのだった。

 そんな時、大きな音が鳴った。着信音だ。夕映は飛び起きて、スマートフォンに手を伸ばした。平日の夕方に誰だろうかと画面を見れば、旭からだった。

「お、荻乃先生!」

 自室に1人だというのに、大きな声を上げた。キョロキョロと周りを見渡してみる。当然夕映1人きりである。そっと息をついて、画面をスワイプさせる。

「もしもし……お疲れ様です」

「お疲れ様」

「ど、どうしたんですか。こんな時間に……」

 いつも遅くまで残業している旭はまだ仕事中のはずだった。

「今、ひと段落ついてさ。これから病棟に戻って暫く仕事だからその前にかけてみた。今日、2回目の夜勤だって聞いてたから。どうだったかなって思って」

 柔らかい声が聞こえてすっと安心感に包まれた。いつでも穏やかなその声が、癒しを与えてくれる。同時に色んな感情が溢れ出す。数年間片想いを続けてきたが、不安な仕事終わりを心配して電話をくれるなんてなかったことだ。
 それもまだ仕事の途中だというのに。2週間前から少しずつメッセージをくれるようになった。それだけでも大きな進歩なのに、この電話は夕映にとって特別だった。
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