俺の名前は今日からポチです

ムーン

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きえないふあん

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俺は少しの間意識を失っていたらしく、雪兎に揺さぶられて気がついた。
一度落ちてしまったからか意識は少しクリアになっていて、縛られていることや媚薬の効果をよりハッキリと感じるようになっていた。
起きて早速の感覚に息を乱す俺の頭を撫でて、雪兎は小さな声で話し始めた。

「……不安なんだ」

内容はいつもの雪兎からは感じ取れない弱々しいものらしい。

「怖いんだよ」

「何がです?」

「…………ポチに、嫌われるかもって。嫌われてるのかもって。そう思ったら……もう、もうどうしようもなくて。さっき……限界があるとか程々にとか言われて、あぁそうだなって、限界もう来てるんじゃないかとか、思って……」

雪兎が俺の想いを信じ切っていないことも不安に思っていることも知っている。だが「嫌われているかも」と考えているなんて分からなかった。
やはり雪兎は演技が上手い。

「本当はポチが好きなことだけしてあげたいんだ、でもそうしたらポチは好きなことに夢中になって、僕がどうでもよくなっちゃうでしょ?  ちょっとゲームあげただけで僕に見向きもしなくなるんだから……」

普段は自信家に見せているくせに、本当はかなり自己肯定の低い子供だったらしい。その上根に持つタイプだ。

「だから……嫌なことしてでも、僕を見せなきゃって。ごめんね?  痛かったり、苦しかったり、色んな酷いことしたよね……でも、でもそうしなきゃいけないから」

「何言ってるんですか」

「…………そっ、そう、だよね。言い訳にしか聞こえないよね……」

「少しは人の話を聞いたらどうです?」

目隠しをされていてよかった。いつもの雪兎ならきっとこんな弱々しい姿は見られたがらないはずだ。

「俺、痛いの好きなんですよ」

俺としては弱っている雪兎も見たい。きっと可愛いだろう。年相応の姿をもっと知りたい。

「ユキ様にされるなら何でもいいんです。酷くしてくださいよ、それが好きです。めちゃくちゃにしてください、痕が残るくらいがちょうどいいんです」

「…………僕の機嫌取りたいの?」

「ユキ様は俺が嫌がることなんて出来ませんよ」

嫌だと言ってもどうせ後には大声を出して悦んでいる。
男のくせに、年上のくせに、高い声を上げて悦んでしまう。
仕方ないだろう?  ペットなんだから。

「ねぇ、ユキ様。俺……縛られるのも、結構好きです。どうせならもっとキツいのがいいですね。痣できるくらいの。あ、それで…………そうですね、オモチャ付けて放置されたり、ユキ様に弄ばれたり、そういうのが好きですよ」

「…………本当に?」

「ペットは嘘なんてつけませんよ」

誇張はしたが、嘘は言っていない。
流石にこの状態でオモチャを付けられるのは遠慮したい、何時間も放置されたら狂うかもしれない。

「な、ならすぐするよ!  待ってて!  持ってくるから!」

「えっ……何を」

「ポチの好きなやつ!  全部使ってあげるから楽しみに待ってて!」

持ってくる。全部使う。
それは……バイブやローターの話だろうか。
ああ、やはり誇張は良くない。思わぬ齟齬が生まれてしまう。その結果は悲惨なものだろう。
媚薬を飲まされて、塗られて、手足を全く動かせない体勢で縛られて、その上で大量のオモチャを使われるのか。
俺は本当に人間の尊厳を失うかもしれない。
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