俺の名前は今日からポチです

ムーン

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すきなんでしょ

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目隠しをされていて時計は見えないから、雪兎が帰ってきたのが何分後かは分からない。体感としては二時間程度だろうか。
目隠しをされていて雪兎の様子は見えないから、ガチャガチャという音が何から鳴っているのかは分からない。

「よいしょっ……とぉ、お待たせポチ、起きてる?」

どさ、とベッドに何か大きく重い物が置かれた感覚がある。雪兎はその後に飛び乗ってきた。

「起きてますよ」

「うん!  じゃあこれから、ポチが好きなことしてあげるね。お仕置きだって言って始めた事だけど……ポチ、いい子だからさ」

「そうですよ、俺はいい子です。たまに理性を失うだけで」

雪兎は俺の「たまに理性を失う」という軽いボケには反応せず、唇の端に短いキスをした。
雪兎の唇が離れるとカチャカチャという音が聞こえてくる。おそらくは鞄か何かに入れたオモチャを漁っている音だ。

「ねぇポチ、これなんだと思う?」

「ユキ様、俺の目に何巻いたか覚えてます?」

「覚えてるよ!  そうじゃなくて、当ててみてよ、最初に使うのは何か。当たったらご褒美あげるよ」

最初にどのオモチャを使うか当てろ、と?
生憎と俺はそういったものに詳しくない。今までに使われた物でなければ名前は分からない。
だが、ご褒美があるというのなら真剣に推理しなくては。

「……最初にあの……入れるやつは使わないと思うんですよ」

「バイブ?」

「それ、ですかね。それじゃないと思います」

「うんうん。正解も不正解も言わないよ」

惜しいな。除外が出来れば推理は楽になるのに。
雪兎はこういう時に馬鹿になってくれないから困る。

「じゃあ……無難に、ローター?」

「ぶっぶー!  ハズレでーす、ざぁんねんっ!  ポチ選手ここで敗退です!」

「志半ばで国に帰るなんて……っ、て何やらせるんですか。勝ち負けじゃないでしょ」

ご褒美が貰えないのは残念だが、お仕置きがあるという訳ではなさそうなのでそう気にならない。なんて言ったらお仕置きを増やされそうだから噤んでおいた。

「で、何使うんです?」

「こっくりんぐ……?  って書いてた」

「よく分かってないもん使わないでください、俺動けないし目ぇ見えないしでめちゃくちゃ怖いんですよ?  ユキ様を信頼して縛られてるんですからね?」

「……縛られるの好きだから縛られてるんじゃないの?」

「んなわけ……まぁ、無いとは言いませんけど。信用してなきゃ縛らせませんよ。締め付けも好きですけど、ユキ様に全て委ねなくちゃっていう感覚が一番なんです」

「そっか、うん。信頼してくれるのは嬉しいよ」

ぽんぽんと頭を撫でられる。
歳下に頭を撫でられるなんて本来なら屈辱だが、今の俺は雪兎のペットだ。飼い主に撫でられれば喜ぶのか仕事だ。

「ユキ様のその撫で方好きです……」

「そうなの?  じゃあ、ほーら、なでなで~」

「好き……ですけど、何とかリングっての早く使ってくれませんか?  結構薬効いてて……じんじんするんですよ」

「…………三時間くらい放って……」

「あー!  あー!  ごめんなさいごめんなさい。生意気言ってすいません」

飼い犬に手を噛まれる、なんて言うけれど、きっと噛んだ犬は可愛がられなくなってしまう。
いつまでも可愛がられていたい犬は手に擦り寄ることにした。
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