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夕焼けの街
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駅のトイレで精液が溜まったゴムを処理させ、洗った手を繋いで駅を出る。空は赤く染まっていた。
「……もう暗くなりそうだね、買い物付き合うよ」
「いいの? ヒロくんが家に帰る頃には暗くなっちゃうよ」
「むしろ付き合わせて欲しいんだ、君に暗い道歩いて欲しくない」
「……俺、女の子じゃないよ?」
「分かってるよ」
背が高く、地毛が見えてはいるが金髪に染めており、制服を着崩したシンヤが襲われる可能性はとても低いだろう。僕の方が高い。
「……胸触られただけですぐイっちゃう体なんだよ? 心配になるに決まってるじゃん。教室でオナるし電車でイくし、夜道で襲われたらすぐハメられちゃうよ」
「…………襲われないもん」
恋人に心配されるのは嬉しいことではないのだろうか? 前に夜道を歩かせたくないと言った時は素直に喜んでくれた記憶があるのだが。
「あの……シンヤくん、僕に心配されるの嫌なの?」
「……嬉しいよ♡」
「本当のこと言ってよ。僕……君との間に何もわだかまりとか残したくないんだ」
シンヤは眉を歪ませて僕を見下げ、諦めたように微笑んで白状してくれた。
「本当に嬉しいんだよ♡ 心配してくれるの……愛されてるって感じがして最高♡♡ ヒロくんの優しさも感じられて……♡ でも、変な想像もしちゃうんだよねー」
「……変な想像?」
シンヤの声色が明るいのがわざとなように思えて胸騒ぎがする。
「…………本当はさ、ヒロくん……夜道で襲われそうな、か弱い女の子と付き合いたいんじゃないのかなって。今は……俺で我慢してるだけ。微妙にデカい男なんかっ、本当は……あんまり好きじゃないのかなって。ヒロくんのカッコよさと優しさに可愛い女の子が気付いてヒロくんに告白なんかしたらヒロくん俺のことあっさり捨てちゃって忘れちゃって新しい彼女に人と付き合うの初めてなんて本気で話したりしてっ……! ぁ……やだっ、やだぁ、そんなの嫌ぁっ!」
「ちょっ、お、落ち着いてシンヤくん!」
「なんでもする! 整形でもなんでもするからぁ! 性転換もするし足の骨とか切って身長縮めるからぁ! お願い俺以外見ないで!」
「見てない! 落ち着いてシンヤくん! それ全部君の妄想! 僕は君だけだよ、君は僕の理想の恋人そのものなんだ、君が可愛いから夜道歩くの心配なだけ、恋人が夜道歩くの心配したい願望あったから言ってるとかじゃない。君が、可愛いから、僕が、自主的に、心配してるの」
分かった? と首を傾げて仕草でも分かりやすくシンヤに尋ねると、彼は俺を抱き締めて泣き出した。
「ヒロくんっ……! ヒロくん大好き、ヒロくん好きぃっ、ヒロくんヒロくんヒロくんっ……」
シンヤが僕の背に回した手は僕のシャツをぎゅっと掴んでいる。シャツに爪がくい込んでギリギリと音を立てている、夏服の薄い布が破れてしまいそうだ。
「シンヤくん……どうして」
不安症で嫉妬深くて妄想が激しくて──可愛い。愛情深い証拠だ。萌えてしまうし嬉しいとも思う。でも、可哀想だ。
「……僕は君のこと大好きだよ、君しか見えてないからね、大丈夫、大好きだよ」
「ヒロくんっ、ヒロ、く…………ごめんっ、ごめ、ヒロくんっ、ごめん……」
急に泣き出したことで僕に迷惑をかけていると勘違いして、申し訳ないなんて思ってしまっているんだろう。損な性格だ、このままじゃただ生きているだけで辛いだろう、もっとポジティブな性格にしてやりたい。
「謝らないで。僕の方こそごめんね、不安にして。大好きだよシンヤくん、愛してる」
僕を信用してくれたらシンヤは少し楽になれるはずだ、シンヤに信用される男になろう。曖昧な言い方は避けて、ひたすら彼を肯定して、頻繁に愛を囁くのだ。
「ヒロ、くぅんっ……ヒロくん、ヒロくん……」
「うん、うん……僕、シンヤくんだけが大好きだよ」
「ぉ、俺、もぉっ……俺も、ヒロくんだけ、ヒロくんだけぇ……ヒロくん、ヒロくんっ……♡」
絶対に彼を裏切らない、彼を傷付けない。それが真っ直ぐで健気な愛情への責任の取り方だと僕は思う。
「……もう暗くなりそうだね、買い物付き合うよ」
「いいの? ヒロくんが家に帰る頃には暗くなっちゃうよ」
「むしろ付き合わせて欲しいんだ、君に暗い道歩いて欲しくない」
「……俺、女の子じゃないよ?」
「分かってるよ」
背が高く、地毛が見えてはいるが金髪に染めており、制服を着崩したシンヤが襲われる可能性はとても低いだろう。僕の方が高い。
「……胸触られただけですぐイっちゃう体なんだよ? 心配になるに決まってるじゃん。教室でオナるし電車でイくし、夜道で襲われたらすぐハメられちゃうよ」
「…………襲われないもん」
恋人に心配されるのは嬉しいことではないのだろうか? 前に夜道を歩かせたくないと言った時は素直に喜んでくれた記憶があるのだが。
「あの……シンヤくん、僕に心配されるの嫌なの?」
「……嬉しいよ♡」
「本当のこと言ってよ。僕……君との間に何もわだかまりとか残したくないんだ」
シンヤは眉を歪ませて僕を見下げ、諦めたように微笑んで白状してくれた。
「本当に嬉しいんだよ♡ 心配してくれるの……愛されてるって感じがして最高♡♡ ヒロくんの優しさも感じられて……♡ でも、変な想像もしちゃうんだよねー」
「……変な想像?」
シンヤの声色が明るいのがわざとなように思えて胸騒ぎがする。
「…………本当はさ、ヒロくん……夜道で襲われそうな、か弱い女の子と付き合いたいんじゃないのかなって。今は……俺で我慢してるだけ。微妙にデカい男なんかっ、本当は……あんまり好きじゃないのかなって。ヒロくんのカッコよさと優しさに可愛い女の子が気付いてヒロくんに告白なんかしたらヒロくん俺のことあっさり捨てちゃって忘れちゃって新しい彼女に人と付き合うの初めてなんて本気で話したりしてっ……! ぁ……やだっ、やだぁ、そんなの嫌ぁっ!」
「ちょっ、お、落ち着いてシンヤくん!」
「なんでもする! 整形でもなんでもするからぁ! 性転換もするし足の骨とか切って身長縮めるからぁ! お願い俺以外見ないで!」
「見てない! 落ち着いてシンヤくん! それ全部君の妄想! 僕は君だけだよ、君は僕の理想の恋人そのものなんだ、君が可愛いから夜道歩くの心配なだけ、恋人が夜道歩くの心配したい願望あったから言ってるとかじゃない。君が、可愛いから、僕が、自主的に、心配してるの」
分かった? と首を傾げて仕草でも分かりやすくシンヤに尋ねると、彼は俺を抱き締めて泣き出した。
「ヒロくんっ……! ヒロくん大好き、ヒロくん好きぃっ、ヒロくんヒロくんヒロくんっ……」
シンヤが僕の背に回した手は僕のシャツをぎゅっと掴んでいる。シャツに爪がくい込んでギリギリと音を立てている、夏服の薄い布が破れてしまいそうだ。
「シンヤくん……どうして」
不安症で嫉妬深くて妄想が激しくて──可愛い。愛情深い証拠だ。萌えてしまうし嬉しいとも思う。でも、可哀想だ。
「……僕は君のこと大好きだよ、君しか見えてないからね、大丈夫、大好きだよ」
「ヒロくんっ、ヒロ、く…………ごめんっ、ごめ、ヒロくんっ、ごめん……」
急に泣き出したことで僕に迷惑をかけていると勘違いして、申し訳ないなんて思ってしまっているんだろう。損な性格だ、このままじゃただ生きているだけで辛いだろう、もっとポジティブな性格にしてやりたい。
「謝らないで。僕の方こそごめんね、不安にして。大好きだよシンヤくん、愛してる」
僕を信用してくれたらシンヤは少し楽になれるはずだ、シンヤに信用される男になろう。曖昧な言い方は避けて、ひたすら彼を肯定して、頻繁に愛を囁くのだ。
「ヒロ、くぅんっ……ヒロくん、ヒロくん……」
「うん、うん……僕、シンヤくんだけが大好きだよ」
「ぉ、俺、もぉっ……俺も、ヒロくんだけ、ヒロくんだけぇ……ヒロくん、ヒロくんっ……♡」
絶対に彼を裏切らない、彼を傷付けない。それが真っ直ぐで健気な愛情への責任の取り方だと僕は思う。
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