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目を合わせる龍

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自らヤクザを連想させる危ういボケを言ったり、ついさっきのように大笑いしたり、サンの言動には怖いものも多い。けれどそれはコンプレックスの裏返しなのだろう、と俺を抱き締める力の強さと寸前に見た泣きそうな顔を思い出して考える。

「サン……」

サンは優しくて愛情深くて、芸術家らしく美的感覚の優れた人だ。そんな彼にとって反社会的な活動を生業とする家に産まれたのは耐え難いことだったのだろう。

「大丈夫だよ、サン。今はもう穂張組は悪いことはしてないし、サンはもう組とは関係ないんだろ? だったらサンは何も悪くない、綺麗だよ、汚れてなんかいない、大好きだよ」

ゆっくりと一歩ずつ歩みを進め、サンを押していって、サンを何とかベッドまで誘導した。サンのふくらはぎはベッドに触れている。このまま押せば膝カックンの要領でサンをベッドに押し倒せる。そう考えてやる気を出して押したのに、サンは突然ビクともしなくなった。

「サ、サン……俺はサンを愛してるよ。たとえ何があっても、もしもサンが人を殺したり、そういう酷いことを昔してたとしても、この気持ちはきっと変わらない。だって好きなんだもん……サンの顔が、声が髪が、性格が、話し方が……毛先がくりんってなってるとことか、そんな無気力系美人な顔してるのに表情コロコロ変えるとことかっ! すごく好き……」

「…………水月」

「だから、サン……た、倒れて?」

サンはぱちくりと目を見開いて瞬きをし、笑いながら頷いて脱力し、俺に押し倒されてくれた。

「何か押してくると思ったらこうしたかったんだね、ごめんごめん気付けなくて」

「いや……体幹いいね、サン」

「まぁね、水月以外と弱くて可愛いねぇ。ムキムキなのにね」

大きな手のひらに身体を撫で回される。筋肉のつき方を探るような触り方はくすぐったく、心地いい。

「見せ筋だもん……」

サンの手はシャツの中へと忍び込む。押し倒しているのは俺なのに、俺がサンに覆い被さっているのに、脇腹や胸をすりすりと愛撫されて呼吸がブレる。

「……っ、ふ……サン、俺がサンにやるから」

「ボクは水月触っちゃダメ?」

「ダ、ダメじゃないけどそんなにされると俺がする隙なくなっちゃう……」

「え~? だって水月萎えたんでしょ?」

サンはくすくすと笑いながら自らの服を捲り上げ、その鍛え抜かれた腹筋を俺に晒した。身体の前面にはあまり刺青がなく、サン本来の肌の淡い色も楽しめる。

「……復活した」

「あはっ、よかった」

そう言いながらサンは服を脱いでしまい、ついでに身体の下敷きにしていた髪を頭の上へ移した。ベッドの上半分を覆い尽くす黒い髪に俺はゾクゾクとした興奮を覚える。

「水月……」

刺青に覆い尽くされた両腕を広げ、サンは更に俺を誘惑する。俺はそんな彼を抱き締めて唇を重ね、同時に晒された肌を撫で回した。

「ん、ふふっ……やだ、水月も脱いで。この服の感触邪魔、水月を直接感じたい」

キスを途切れさせるとそう言われ、服を引っ張られた。俺はサンが服を引っ張るのに任せて腕と頭を抜いて上半身裸になり、サンと肌を触れさせあった。

「ん……水月、あったかくてすべすべだね、若いなぁ」

「そんな、サンだって全然……」

「キメ細やかさが違うよ。それより水月、下は?」

「下……」

「お尻、しないの? 今日はいつもより念入りに洗ったのに」

「していいのっ!?」

ネザメを堕とすのが大変だった分、そんなにあっさりと尻を許されると落差で驚いてしまう。

「い、いいけど……何、みんなもっと渋ってた感じ?」

「いや……まぁ、うん、結構……」

「そうなんだ。でもボクさっさと気持ちいいことしたいし」

サンの好奇心の強さと躊躇のなさはありがたい。俺はサンの手が顔に触れていないのをいいことにニヘニヘと気色悪い笑みを浮かべ、彼のズボンに手をかけた。

「ん……」

下着ごとそっと脱がすと半勃ちの陰茎が微かに揺れた。俺も一糸まとわぬ姿になり、滴るほどの先走りの汁から下着を逃がした。

「じゃあ、水月……えーっと、どうしようか? お尻ならうつ伏せになった方がやりやすいかな?」

「あ、うん、でも……お尻初めてなら最初は気持ちよくなくて違和感とか不快感たっぷりだと思うから、気を紛らわすために前扱いたり、キスしながらとかのがいいかなって思ったんだけど」

「他の子触ったり、話聞いたりした感じ、腰結構曲げるんだよね? 仰向けだとさぁ、こう……? んー……三十手前の腰には辛いなぁ」

サンは後孔を弄りやすいように足を持ち上げ、ため息をついて足を下ろした。

「うつ伏せでやろ。そっちのが腰楽そうだし、最初多少違和感あるくらいならいいよ、腰痛くなるよりマシ」

「ご、ごめんね……出来るだけすぐ気持ちよくなれるように頑張るから」

「気にしなくていいよ。それに水月もボクがうつ伏せの方が……これ、見えやすくていいだろ?」

サンはゆっくりと起き上がって俺に背を向け、長い髪を持ち上げて背中に彫られた龍を見せた。剣に巻き付き、剣を呑もうとするその龍の眼力は凄まじい。

「ヒト兄貴は明王、フタ兄貴は虎、ボクは龍。どんな絵なのかボクにはよく分からないけど、相当厳ついんだろ?」

「う、うん……威圧感すごい」

「こんなの彫ってるようなヤツ抱くの、興奮するだろ?」

「する」

するのはするが、龍と目が合うのはちょっと嫌だ。

「さ、早く抱く準備済ませなよ」

「う、うんっ!」

思い切りのいいサンに引っ張られるように返事をし、ローションボトルを掴む。

「ちょっと冷たいかも……ごめんね」

温めていないローションをサンの尻にかける。冷たさに反応したのか刺青が入ったそれにきゅうっと力が入ったのが分かった。

「……っ、ホントに冷たいねっ!?」

「ご、ごめん……」

「鳥肌立つんだけど……ま、いいや、すぐ慣れるだろうし。さっさと始めて」

「…………調子狂うなぁ」

刺青が彫られた尻の割れ目を広げてローションを流し込む。割れ目は素肌の色が見えるのに興奮しつつ、後孔の縁にとうとう指を触れさせ、ごくりと生唾を飲んだ。
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