ポチは今日から社長秘書です

ムーン

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夏休み

はんけつ、に

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俺の胸の上に座った雪兎の親指が喉仏を押さえ、四本の指が血管を押さえる。

「……っ、ふ……」

普通の首絞めプレイでは血管だけを押さえる。そうすれば呼吸は滞りなく、脳に届くはずの酸素だけが滞らされ、頭がボーッとする快感だけを得られる。

「ポチ首太いよね、筋浮いててカッコイイよ。早く背伸びないかなぁ、ぎゅって絞められるようになりたいよ」

意識が朦朧とし、失神する寸前のあの快楽。低酸素は依存性がある、首絞めセックスは麻薬を使っての行為に匹敵するなんて説もある。

「……苦しい?」

しかし、俺がされているのは普通の首絞めではない。喉仏を強く押し込まれている。気道を絞められて脳どころか全身に酸素が回らない。

「目も口も開いちゃって……ふふ、舌出しちゃって、下品だよ? 酸素欲しいね、息したいよね、可愛いね」

押さえられた喉が痛い。嗚咽しそうになる。勝手に涙が溢れてくる。舌が意味もなく口の外へ向かってしまう。

「あぁ……目、危なくなってきたね、もうどこ見てるか分かんないや。ポチ元から焦点合ってないけどね、ふふっ……充血してきたね、ポチは白目が多いから分かりやすいよ」

四肢の末端が痺れ、眼球が眼窩の奥を見ようとする。意識が遠のいていく快感だけでなく、死が近付いてくる恐怖もある。死の恐怖は普通の首絞めにはあまりないものだ。

「……そろそろ離さないと死んじゃうかな? 死んで欲しくないよポチ、ポチは僕を一人になんてしないよね? うん……死んで欲しくない、死んで欲しくないけどね、殺してみたい」

もう何も見えないし聞こえない、考えられないし、分からない。知覚が消失した。

「僕に殺されてくれたら僕をポチがどれだけ愛してくれてたか分かる気がするんだ。それに、もう誰にもポチを見られずに済む。ねぇポチ、死はゴールだよね? ゴールに早く行きたいって思うのはダメなことかな、ゆっくり行かなきゃいけないのかな、そっちのが楽しいのは分かってるけど、早くゴールしてみたいよねぇ?」

パッ、と首にかかっていた負荷が消え、胸に乗っていた重さも消える。

「……っ、かはっ、ぁ、げほっ、けほっ、ぇほっ、ぉえぇっ……ぇほっ、げほっ…………はっ、はっ、はっ、はっ……」

身体を横に向けて咳き込み、床に唾液などを零す。雪兎は俺を跨いで立っており、俺は呼吸が整ってから彼を見上げた。

「おかえり、ポチ」

「はぁっ、はぁっ、はぁーっ…………ユキ様、ただいま……っ!?」

真上を向いて微笑んだ瞬間、喉を強く押さえられた。雪兎は胸を跨いではいるが乗らず、俺の首に全体重をかけている。

「三十分って言ったの覚えてる? 頑張ってね、ポチ」

「……っ、は……ぃ」

「僕の許可なく死んじゃダメだからね、ポチ」

首を絞められては失神寸前に離され、数十秒の休憩を挟んで再び首を絞められる。三十分間繰り返される苦痛の快感は俺に無駄な射精をさせた。
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