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18 貴族みたい?

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 花を沢山飾りたてたゴンドラで街の中の水路を行く。

「まあ、花いっぱいで綺麗! 素敵ね、あの船」
「特別仕様だな、お貴族様でも乗っておられるのか?」
「エルフよ、エルフ! とても美しいわ!」

 街の中の水路を優雅に移動しているので、たまたま俺達を見かけたギャラリーに大人気だった。

「あの狐の娘、すげーかわいいな」

 ミレナが得意気な顔をしてふふふと笑う。

「ラビ族の船頭もいけてるぜ!」

 同意する!

「エルフだ、見てるだけで寿命が伸びそうだ」

 うん、うん。

「なんか一人、普通のおじさんが混ざってる」
「可哀想でしょ、あの人もそれなりにかっこいいじゃない」

 ……。
 すみません、ふつーのおっさんが混ざっていて。

 でもそれなりにかっこいいってフォローしてくれた優しい人! ありがとう!
 貴方に祝福あれ!

 しばらく船遊びを満喫した。

「きゃーーっ! あれ見て! 素敵!
 ねえ、あなた! 私はあの花のゴンドラがいいわ!」
「せっかく新婚旅行だし、いいかもな!」

 こんな声が多かったので、降りる段階になって船頭さんが、すみません、お花飾りこのままで買い取らせていただけませんか? と訊いてきた。

「いいですよ」
 俺がそういうとすかさずミレナが言葉を被せてきた。

「設置料込みで銀貨五枚で!」

 おい、俺はあの花を銀貨四枚で買ったぞ?
 設置料って……


「はい! お支払いします!」

 上乗せされててもいいのか!


「あ、ありがとうございます」

 俺は銀貨を五枚、受け取った。

「いえいえ、こちらこそ、目立てて助かります!」

 俺達は陸に戻った。
 もう、足元が揺れない。


「ほら、私のおかげで儲かったでしょ!?」
「あ、ああ、まあな、ありがとう」
「ふふん!」

「ところでこのへんはキャンプできる所はあまりないから、宿か家を借りるかになるが、今夜の宿はどうする? 何泊かしたいなら借りるのも有りだとは思う」
 

 ジェラルドの言葉にしばし悩む。


「あー、どうしようか、水の都の料理を堪能したいなら宿でいいと思うけど」
「ちゃんと三分の一の代金払うから家を借りましょうよ! 食材買って台所のある家で料理したほうが節約になるわよ!」

 ミレナは宿より家を借りたいらしい。
 そんじゃ、

「せっかくここまで来たし、七日くらい家を借りて泊まってく? 二人ともスケジュールは大丈夫かな?」

「俺はかまわないぞ、途中でこっちの冒険者ギルドを覗いて手頃な依頼を探すかもしれないが」
「私も!」

 ジェラルドもミレナも旅の途中でもギルドで仕事を探すかもしれないのか。
 ちょっとお仕事見学をしてみたい気はするが、絵を描く以外は無能なんだよな、俺は。

 
「じゃあしばし家を借りるか」
「どっかに家を貸してくれる事務所があるはず」
「私が聞いてくる!」

 ミレナが張り切ってその辺の人に聞き込みをし、
 しばらくして、小走りで戻って来た。

「どこに事務所があるかわかったわ!」


 そんな訳で事務所に行ってコンドミニアム的な一軒の家を七日ほど借りた。

 コンドミニアムとはキッチン付きで生活に必要な設備が備わってる宿泊施設の事だ。
 昔、ハワイ旅行で借りた事がある。

 俺達はコンドミニアムの近くにある店を見てみた。

「あ、オリーブオイルが安いっぽいな、アヒージョでも作ろうか」
「アヒージョ? 何それ美味しいの?」

 ミレナはアヒージョという聞き慣れぬ単語に反応した。

「あー、多分? ニンニクを使うけど二人とも平気か?」
「多分大丈夫だ。まあ、食ってみれば分かるな」
「その日に男とキスする予定ないだろうからニンニクは大丈夫」

 あ、そう。

「あ、マーマレードもある、これも買おう」

 俺は店にある瓶入りのマーマレードジャムを二つ手にした。
 

「パンに塗るのね」
「それでもいいし、手羽元を煮てもいい」
「へえ、鶏の肉をジャムで煮るの? 知らない料理だわ、楽しみ」

 俺がミレナとそんな話をしていると、ジェラルドがパンコーナーに移動した。


「とりあえずパンも買っておこう」 
「あ、ジェラルド、アヒージョに使うからよければそこのバゲットを」
「分かった」

 魚屋で海鮮も買い込んで夜にはコンドミニアムのキッチンで料理して、アヒージョを食べた。

「たっぷりの油でグツグツと煮るのねぇ」
「贅沢な料理だな、ワインにも合って美味しいが」
「あはは! 貴族みたい! 最高!」


 油で海鮮をグツグツとしただけで貴族になってしまうのか?
 でもこっちのオリーブオイル、銅貨五枚程度で買えたぞ。

 翌日はまた街中の観光をし、オーシャンビューのカフェでお茶をしていたら、こんな噂を聞いた。


「先日から花飾りのゴンドラが凄い人気でね」
「そんなの花だけで金がかかるだろうに」 

「それが富裕層が好んで乗るから、ラビ族の船頭が金貨をチップで貰ってたって、知り合いの船頭が言ってたのね、そんで花飾りを真似してみたら、本当に金貨が貰えたって!」

「すげーな、羨ましいぜ、俺も期間限定で船頭になろうかな」
「あはは!」


 などという景気のいい話を聞いた。


 結局のところ、俺は花の飾りで銀貨1枚分儲けたが、後にあの船頭さんは富裕層の新婚さんや恋人達に人気で金貨を稼いだとな!
 金貨のチップ!!


「ほらー、聞いた?
 銀貨七枚くらい要求しても良かったくらいじゃない?」
「あはは、俺も街中で似顔絵でも描いて稼ごうかな」

「じゃあ明日はその間に俺はこっちの冒険者ギルドにいい単発の仕事がないか見てくる」
「私も!」
「りょーかい」

 その日の夜は手羽元のマーマレード煮を作って食べた。


「これ甘くて美味しい!」
「ホントだ、あまりにもマーマレードを贅沢に一瓶も使うから驚いたが、美味いな」

 ミレナもジェラルドも驚きつつも喜んでくれた。


 翌日は朝からジャムトーストと目玉焼きとハーブティーを美味しくいただいてから、二人は冒険者ギルドへ向かった。


 ミレナはジェラルドの後を追いかけて行ったので、やはりジェラルドに惚れているのでは?
 と、思った。


 俺は街中で椅子を出し、スケッチブックと水彩絵の具で似顔絵描きのバイトをした。


 結構、新婚さんとか富裕層が旅の記念に依頼をしてくれた。

 やや美化して描いてやれば喜んで支払いに色をつけて貰える。
 フハハハ!
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