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107 婚姻届

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 どうする……!?
 突然の婚姻届に正直俺はパニクってる。

 急なことでまだ心の準備が出来てませんって正直に言うか?
 いや、しかしそれだと女性に恥をかかせる事になる!
 しかも両親、妹の前だ!
 無理だと言おうものなら絶対にキレるだろう。

 最終確認だ。


「ミレナ、俺のあちらでの職業のこと、忘れて無いよな?」
「忘れるわけないじゃないの。
 だからあちらでショータは結婚できないんでしょ?」

「……分かった上で俺と結婚したいんだな?」
「正直毎度えちち本の取材の時はムカつくけど仕方ないとは思ってるわ」
「じゃあ最初からムカつかない仕事してる相手の方が良くないか?」

「だって、それでもショータがいいんだから仕方ないじゃない!」


 俺は恐る恐るミレナの両親の様子を伺う事にした。


「……ご両親は、俺の仕事の事は……」
「なんかスケベな絵を描いて売ってるとか? 
まあ、芸術だと思えばいいんじゃないか? 裸婦画なんて普通にある国はあるし」

 それ、かなり上品なやつだと思うけど、多分。

「私はミレナが選んだ人ならいいわよ~」

 ママさん! 
 娘の伴侶判定がそんなゆるさでいいのか!?

 ミレナの顔を改めて見たら、あれ? 俺がさっさとサインしないから涙目に!?

「……」

 俺は覚悟を決めてサインをし、婚姻届をミレナに渡した。

「ほら」
「!!」

「「おめでとう、ミレナ!」」
「おめでとう、ミレナさん、翔太」
「おめでとう、おねーちゃん」
「おめでとうございます、マスター」

 この場にいる皆に祝福された。
 思えばこの場面に出くわしたくなくてジェラルドは先に帰った可能性もあるな?
 勘が良さそうだし。



「酒だーっ!! めでたい! ようやくミレナが片付いたぞ!」
「お父さん! 片付いたとは何よ!」

「すまん、すまん、お前は容姿は抜群にいいのにすぐに余計なことを言うからさ、男にもててもほぼ長続きしないだろ!?」
「フン!!」
「これだよ~すぐ拗ねるし、子供みたいだから」

「こんな娘ですがどうか愛想つかさずにやってくださいな、根は悪い子じゃないので」

 ママさんにも頼まれた。


「ええ、わかっています、俺のためにとても貴重なものを使って助けに来てくれましたし」
「ねえ、おかーさん! もうこのお菓子食べてもいい!?」

 妹ちゃんがチョコレートの箱を手にして尻尾をブンブン振っていた。
 かわいい。

「仕方ないわね、独り占めは無しよ」
「やった!!」

 とりあえず……ぴーちゃんを飛ばしてジェラルドに報告するか。

 俺はそっと庭に出て、ポケットに入れたままだったぴーちゃんを出した。
 あ、足に前のメッセージ括り付けたままだった。
 俺はその手紙をガーデンテーブルの端に置いて、新しい手紙をジェラルドに書いていたら、カナタとミレナも外に出てきた。

「翔太、ポラロイドカメラあるよ! 例の写真撮る!?」
「例の写真とは?」
「私達結婚しました。ってやつ」
「いやー、ソレは恥ずかしい」

「!! ちょっと何よこれ!」
「あ、こら、勝手に」
「わたし達三人宛の遺書じゃないの!」
「あー、それはほら、あの洞窟内にとんでもない化け物出たら普通に死ぬかもだから」

「え!? ミレナさん見せて!」

 ミレナの背後からカナタが手紙を覗き込んだ。


「俺が死んでも皆は生きろよ、どうか幸せに。ミラとフェリとラッキーとぴーちゃん達をよろしくだって!? もーっ! 翔太は!!」
「でもカナタだって以前はアレだったろ?」
「そ、それはそうだけど!」

 ミレナが手紙をグシャリと握りつぶしてポイっと投げた。

「あ、こら、ゴミのポイ捨ては駄目だろう、いくら自分の家の敷地内でも」

 俺がゴミとなった手紙を拾おうとしたら、ミレナに腕を掴まれ、そのままガブッと噛まれた。

「ああ~っ、噛まれた! しばらく献血できない~」


 これは思わず出たネタだったけど、リアルに異世界行ってるし、献血はマジで無理だな。


「あ、噛まれたらしばらく輸血できないって僕もネットで見たことある!」
「献血? 何よそれ」 


 ミレナは俺の腕から口を離してくれた。
 そんでミレナは自分のシャツで噛んだ腕をわざわざ拭いてる。


「えっと、献血はな、人に自分の血をあげるんだよ。怪我や病気とかして手術する時に大量に出血したりする事があるから他人の健康な血を輸血する。こっちには外科手術ないのか?」
「切って縫うくらいはやるけど、人の為に血をあげるの? 親兄弟に?」

「たいていは同じ血液型の見ず知らずの赤の他人が必要な時に使うが、お互い様だよ、俺が倒れた時に外科手術や輸血いるなら誰かの善意の血液に頼る訳だし」
「……ふーん」

「あの、翔太、噛まれたとこ大丈夫?」
「あ、実は甘咬みだったみたいで血とかは出てない」

 急に噛まれてびっくりはしたけどな。
 狐族の習性のようなものか?
 俺は気を取り直してジェラルドに手紙の続きを書いてぴーちゃんに託した。
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