ある時、ある場所で

もこ

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2回目〜1年前〜(悠)

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螺旋階段を登り、白い部屋の壁に手紋を合わせようとして、ふと思う。他の部屋はどんなだろう?生田先輩や小野寺先輩が他にも部屋があるって言ってた。まだ開発途中なのだとか。急に好奇心に駆られて、後ろの壁に手紋を合わせてみた。
「……。」
何も反応がない。あちこち触るが扉が開く気配はなかった。あきらめて改めて「過去の部屋」へ手紋を合わせる。音もなく扉が開いて中に入ることができた。

「おはようございます。」
前回と同じように挨拶をして中に入り込む。洸一さんは…いた。ちょうどパソコンの前で椅子を回して振り向く所だった。相変わらずデカイな。幅が俺とは一回り違うぞ。
「おはよう。」

「今日もよろしくお願いします。」
何も言われずとも傍の椅子に腰掛ける。今回のターゲット情報を得るためだ。洸一さんも、パソコンに向き直った。
「今回は男だ。」
パソコンには顔写真と名前、住所、年齢が映し出されている。

「箕田真臣(みのだまさおみ)、46歳。住所は…また近いですね?今回は何年前ですか?」
聞きながら洸一さんの手元を見つめる。指輪をはめた指が、キーボードの上で踊ってる。相変わらず速い。
「1年。」
洸一さんの呟きに顔を上げた。

「1年前から、記録がないと言うことですか?」
最近のことなら、わざわざ過去に飛ばなくともいいだろう?
「実は10年前から記録がない。ただ、もしかしたらこの人かもしれないという情報はあった。それが途絶えたのが1年前。この住居は今も箕田氏が借りているようだが、記録の閲覧は不可能だった。やはり目で見て確認していきたい。」

なるほど。生きてるのか死んでるのか…死んでいるならその原因は何か…。前回と同じね。
「はい。分かりました。前回と同じく明日の6時までに戻ればいいですか?」
立ち上がってスマホや財布、メガネが置かれているテーブルに向き合う。財布の中身は…前回と同じだ。身分証。今日の俺は…「田中弘」。ひろしか…ひろしひろしひろし…。言っとかないと忘れそう。

「ああ。今回は混乱しないように、ちょうど1年前の同じ時間に飛ばす。」
その言葉にほっとした。時間が同じならわかりやすい。
「助かります。」
財布を尻のポケットに入れ、スマホを胸ポケットに入れる。メガネもかけた。今日の服装はスーツだ。奮発して新調した。これからも役立つし…。今日の俺はサラリーマン風。鞄も持ってきた。ハンカチしか入ってないけど。

「頭…」
「へっ?」
出入り口に向かっていた俺の後ろから洸一さんの呟きが聞こえて振り返った。
「染め直して来たな。その方がいい。今回は帽子は無しだ。」
「ありがとうございます。行ってきます。」
そのまま前を向いて、過去への扉を開いた。


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