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『ゲイバーにいるのを生徒に見られちゃいました。』
迎えにこいよ?
しおりを挟む目が覚めたときは、次の日の朝になっていた。
「う…ん……。」
「おはよ。ひな先生。」
オレが寝ぼけ眼でぼんやりとしていたところ、上から少し掠れたような声が聞こえた。
目の前には温かいぬくもりを感じる。
オレは、佐々木に正面から抱きしめられて眠っていたようだ。目の前には立派な胸板がある。
恐る恐る上を見上げてみると、眼鏡を外した佐々木の顔が、微笑んでいるのが見えた。
「身体、辛いでしょ?もう少し寝なよ。」
するりと右頬を撫でた手が、そのまま頭に向かう。髪の毛を梳くように頭を撫でられる。
気持ちよさに思わず目を細めてしまった。
昨日の鬼畜な様子とは全然違う、恋人にするような甘い仕草。
昨日は情事の中、譫言のように佐々木と付き合うことを了承してしまった。
そのことを思い出して、オレはどうしても佐々木に聞かねばならないことがあった。
「__佐々木……。」
「なに?」
俺の頭を撫でながら、佐々木が聞き返す。
「佐々木は、本当にオレと付き合いたいのか……?……その、恋人として。」
オレの言葉に、佐々木は身体を少し離すと、オレの目を見つめて真剣な声音で言った。
「オレ、本気だよ。前から先生のことが好きだった。もちろん、恋情的な意味でね。」
佐々木の告白に息を飲んで、言葉に詰まってしまう。佐々木は言葉を続けた。
「先生は異性が恋愛対象だって思ってたから、俺は告白するのは諦めていたんだ。先生に気持ち悪く思われたり、嫌われたくなかったから。」
そこで佐々木は、ほんの少し苦しげな表情をして、想いを吐露した。
「だから、せめて卒業するまでは、先生の近くで一緒にいたいって、昼休みも毎日会いに行った。でも……。」
目を伏せて、佐々木が言葉を一度切る。
そして、意を決したように視線を戻した。
「先生がバーから男の人と一緒に出てきたときに、自分でも驚くくらい嫉妬した。
どうして、先生の隣が俺じゃないの、なんであんな男と一緒にいるのって。先生はオレのなのに・・・・・・。」
俺の腰を抱いていた腕に、力が込められてギュッと包まれた。
「あとは、身体が勝手に動いて、先生を引き留めてた。先生は真面目だから、生徒の俺は眼中にもないだろうって……。今しかチャンスはないと思ったんだ。……弱みに付け込むようなことをして、ごめんなさい、先生。」
佐々木の瞳は不安で揺れている。
いつもの大人びた表情ではない、年相応の表情だ。
オレは、佐々木の、この取り繕うことのない、自然な表情が好きだった。
佐々木は、ひたっとオレに眼差しを向けた。
「オレは、ひな先生のこと……、奏のことを愛してる。」
「俺と付き合ってください。」
こんなに真剣に告白されたことは、生まれて初めてだ。佐々木の想いがじんわりと心を満たしていく。
とても嬉しい。素直にそう思った。
大体、いち生徒に対して、毎日カフェオレを出して飽きずに話をする時点で気が付くべきだ。
佐々木がオレにとって特別な存在になっていたことに。
オレも、大概、自分の気持ちに鈍感だな。
「佐々木の想いは、すごく嬉しい。…でも、佐々木はまだ高校生だ。学業が本業だし、教師のオレが生徒と付き合うわけにはいかない。だから……。」
オレの言葉を聞いて、佐々木は眉を寄せて悲しそうな顔をする。オレは佐々木の綺麗な瞳をじっと見ながら言葉を続けた。
「もし、卒業までに佐々木の想いが変わらず、オレのことを好きでいてくれたのなら……。そのときは、オレの恋人になってください。」
佐々木のことは、好きだ。
生徒としてだけでなく、一人の男として。
だけど、先生と生徒のうちは交際できない。
オレは佐々木のことを待ってる。
「オレは佐々木のこと、大人になるまで待ってるから。」
顔が赤くなっているのが自分でもわかる。
佐々木の唇に、そっと自分の唇を重ねた。
驚いた表情で固まっている佐々木は、やっぱりほんの少し幼い。この顔が堪らなく好きだ。
「好きだぞ、零次。……ちゃんと、迎えにこいよ?」
___________
卒業式当日。
卒業式は厳かに執り行われて、無事に終了した。
学園の庭園は、桜が咲いてとてもきれいだ。卒業式に花を添えている。
生物準備室の窓からは、学園の庭園が良く見える。花びらがハラハラと舞う様子を、コーヒーを片手にぼんやりと眺めていた。
彼は、来てくれるだろうか。
彼の心に、オレは存在しているだろうか。
生物準備室のドアが2回ほど、コン、コンッとノックされた。
ドア越しには男子生徒の声が聞こえてくる。
「先生、失礼します。」
聞きなれた声に、期待と焦りで声が少し震えてしまった。
「どうぞ。」
オレが返事をすると生物準備室の引き戸がガラリと開かれ、すらりとした長身の男子高校生が入ってくる。
胸元には、卒業生が身に着ける花飾りがついていた。制服姿の彼を見るのも、今日で最後になる。
「卒業おめでとう。」
以前にも増して、頼もしくなった佐々木を見てお祝いの言葉を告げた。佐々木は、窓の近くにいるオレに歩み寄ってくる。
「ひな先生……。俺、ずっとこの日を待ってたんだ。本当にずっと……。」
近づいてきた佐々木が、オレの両手をそっと持ち上げて握りこんだ。
温かいぬくもりに手が包まれる。
「……奏、大好きだ。俺の恋人になって。」
真剣な熱を宿した瞳が、俺を見据える。
佐々木はずっとオレのことを想ってくれていた。
オレも佐々木と同じ。
「それはオレのセリフだ。……零次。オレも零次が好きだ。オレの恋人になってくれませんか?」
そういうと、オレは自ら零次の胸に飛び込んで抱き着いた。
びっくりしたのか、しばらく動かなかった零次が、オレの背中に両手を回す。
ぎゅっと力を入れて抱きしめられた。
「……奏。嬉しい。夢みたいだ。」
佐々木の嬉しそうな声が頭上から聞こえる。
オレは佐々木の身体から少し離れ、顔を上げた。
お互いに見つめ合って、想いが通じ合ったことが嬉しくて微笑む。
「好きだよ。奏。」
「零次、オレも好きだよ。」
端正な顔が近づいてきて、そっと唇を重ねられた。
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