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本編
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「テイト!ここ最近本当に屋敷にいたの?いくら探しても影も形もないんだもの。タイミングが悪いにも程があるよ。」
「まあ、それは・・・街に行っていることもあったし・・・」
「もう、街に行く時は声をかけてって言ってるじゃない!1人で行ったら危ないよ。」
「大丈夫だよ。到底貴族には見えない格好で行ってるから。」
「それでも心配なんだって・・・もう少し僕の気持ちも考えてよ。」
「ごめん・・・」
テイトは3年前からずっと俺を気にかけてくれている。きっと薄々俺がどこかに行っている事にも気づいているのだろう。それでも深く追求はせずにいてくれる事には感謝している。
「カインは、ヘンダーソン公爵との婚約、本当に考えられるのか?」
以前あそこの長男は高慢で関わりたくないと言っていたではないか。そう思って尋ねてみた。俺は純粋にヘンダーソン家と関わりたくないと言う気持ちが大きいが、相手が相手なのでカインのことも心配だ。
「うん、家のためになるなら考えられるよ。でも嫌なやつだったら断るから安心して。」
「ああ・・・絶対に、嫌ならちゃんと断れよ。」
「ふふっ、なんかテイトに心配されるなんて、新鮮だな。」
「・・・俺だって、お前のことを心配くらいする。」
「そんな言葉を聞けるなんて、ヘンダーソン家からの打診があったことに感謝しちゃうよ。」
「言ってろ。きっと高慢な公爵が現れたら、その言葉を撤回したくなるぞ。」
「その時はその時、うまく躱すよ。」
「ああ。そうしてくれ。」
カインが問題なさそうな事を確認した俺は、自室へと戻ろうと踵を返す。するとカインに呼び止められた。
「テイト、今日はここで休んで行きなよ。ベッドもそのままにしてあるし、わざわざ今の部屋に戻らなくても良いじゃない。」
「・・・ああ、それもそうだな。」
少し迷ったがカインも不安を感じているのかもしれない。そう思って今日はこの部屋で休む事にした。
「テイト・・・起きてる?」
ベッドの中、カインが呼びかけてくる。暗いのでカインの方を見ても表情はわからない。
「ん、まだ起きてる。」
「良かった・・・。テイトはさ、僕が跡を継いだら僕のこと手伝ってくれる?」
「・・・ああ。俺にできる範囲では手伝うよ。まあお前の結婚相手が俺が家にいることを許せばだけど・・・」
「ふふ、そこは安心して。許してくれる人としか結婚しないから。」
「そんなん判断できるのかよ。」
「人を見る目はあるつもりだよ。」
「レイのことを忘れたのか?」
「彼は例外。それに今は仲良くもないし。」
そう、その後結局カインとレイは昔のような仲には戻らなかった。まあ、会話くらいはしているようだが、親友から昔馴染みの知人まで関係は後退している。
「いっそ、テイトのことを公表できたらいいのに。」
俺はその呟きに驚いた。カインがそんなことを思っていたなんて。
「・・・この家、没落するぞ。」
「ふふ、それならそれで良いんじゃない?」
「茶化すなよ。」
「えー割と本気だったのに。」
「そっちの方がタチが悪いけど・・・」
カインはきっと俺のような奴への世間の反応を知らないからそんなことが言えるのだろう。
何を言っているんだと呆れた声を出せば、カインはまるでその未来をイメージしているかのように理想を語った。
「社交なんてしなくてもいいからさ、テイトっていう弟がいるってことを公にしたいよ。そしたらいつでも一緒にいられるのに。」
「俺は嫌だぞ。今更公開されて好奇の視線に晒されるなんて。」
「そこは守るって。もちろん完全には無理かもしれないけど・・・僕、ずっと1人で寂しかったんだ。本当はテイトがいるのに、隠さなきゃいけないせいでいつもバラバラだったから。」
「・・・・・・俺はてっきり、お前の方は幸せなのかと・・・」
「ふふ、そう見えていたならよかった。でも本当はもっと一緒にいたかったよ。だから、僕が爵位を継いだら・・・・・・いや、やっぱり何でもない。」
「・・・ああ、想像に留めておいてくれ。そんなことしたら、きっと周りからの反応は冷たいぞ。」
「そんなことはどうでも良いけどさ。テイトに嫌な思いはさせたくないからね。」
そう言って悪戯っぽく笑ったカインは、何を考えているのか掴めなかった。俺は上手い返事が思いつかずに、軽く相槌を打って布団を被った。
「まあ、それは・・・街に行っていることもあったし・・・」
「もう、街に行く時は声をかけてって言ってるじゃない!1人で行ったら危ないよ。」
「大丈夫だよ。到底貴族には見えない格好で行ってるから。」
「それでも心配なんだって・・・もう少し僕の気持ちも考えてよ。」
「ごめん・・・」
テイトは3年前からずっと俺を気にかけてくれている。きっと薄々俺がどこかに行っている事にも気づいているのだろう。それでも深く追求はせずにいてくれる事には感謝している。
「カインは、ヘンダーソン公爵との婚約、本当に考えられるのか?」
以前あそこの長男は高慢で関わりたくないと言っていたではないか。そう思って尋ねてみた。俺は純粋にヘンダーソン家と関わりたくないと言う気持ちが大きいが、相手が相手なのでカインのことも心配だ。
「うん、家のためになるなら考えられるよ。でも嫌なやつだったら断るから安心して。」
「ああ・・・絶対に、嫌ならちゃんと断れよ。」
「ふふっ、なんかテイトに心配されるなんて、新鮮だな。」
「・・・俺だって、お前のことを心配くらいする。」
「そんな言葉を聞けるなんて、ヘンダーソン家からの打診があったことに感謝しちゃうよ。」
「言ってろ。きっと高慢な公爵が現れたら、その言葉を撤回したくなるぞ。」
「その時はその時、うまく躱すよ。」
「ああ。そうしてくれ。」
カインが問題なさそうな事を確認した俺は、自室へと戻ろうと踵を返す。するとカインに呼び止められた。
「テイト、今日はここで休んで行きなよ。ベッドもそのままにしてあるし、わざわざ今の部屋に戻らなくても良いじゃない。」
「・・・ああ、それもそうだな。」
少し迷ったがカインも不安を感じているのかもしれない。そう思って今日はこの部屋で休む事にした。
「テイト・・・起きてる?」
ベッドの中、カインが呼びかけてくる。暗いのでカインの方を見ても表情はわからない。
「ん、まだ起きてる。」
「良かった・・・。テイトはさ、僕が跡を継いだら僕のこと手伝ってくれる?」
「・・・ああ。俺にできる範囲では手伝うよ。まあお前の結婚相手が俺が家にいることを許せばだけど・・・」
「ふふ、そこは安心して。許してくれる人としか結婚しないから。」
「そんなん判断できるのかよ。」
「人を見る目はあるつもりだよ。」
「レイのことを忘れたのか?」
「彼は例外。それに今は仲良くもないし。」
そう、その後結局カインとレイは昔のような仲には戻らなかった。まあ、会話くらいはしているようだが、親友から昔馴染みの知人まで関係は後退している。
「いっそ、テイトのことを公表できたらいいのに。」
俺はその呟きに驚いた。カインがそんなことを思っていたなんて。
「・・・この家、没落するぞ。」
「ふふ、それならそれで良いんじゃない?」
「茶化すなよ。」
「えー割と本気だったのに。」
「そっちの方がタチが悪いけど・・・」
カインはきっと俺のような奴への世間の反応を知らないからそんなことが言えるのだろう。
何を言っているんだと呆れた声を出せば、カインはまるでその未来をイメージしているかのように理想を語った。
「社交なんてしなくてもいいからさ、テイトっていう弟がいるってことを公にしたいよ。そしたらいつでも一緒にいられるのに。」
「俺は嫌だぞ。今更公開されて好奇の視線に晒されるなんて。」
「そこは守るって。もちろん完全には無理かもしれないけど・・・僕、ずっと1人で寂しかったんだ。本当はテイトがいるのに、隠さなきゃいけないせいでいつもバラバラだったから。」
「・・・・・・俺はてっきり、お前の方は幸せなのかと・・・」
「ふふ、そう見えていたならよかった。でも本当はもっと一緒にいたかったよ。だから、僕が爵位を継いだら・・・・・・いや、やっぱり何でもない。」
「・・・ああ、想像に留めておいてくれ。そんなことしたら、きっと周りからの反応は冷たいぞ。」
「そんなことはどうでも良いけどさ。テイトに嫌な思いはさせたくないからね。」
そう言って悪戯っぽく笑ったカインは、何を考えているのか掴めなかった。俺は上手い返事が思いつかずに、軽く相槌を打って布団を被った。
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