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第5章 幸運度Max【ガチャ】

第68話 七つの大罪

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 アレキサンダー大王は眼の前を見据えていた。
 今まさに英雄闊歩。英雄の軍勢を率いていた。
 そこにはかつての仲間達もいた。
 英雄の数は数えきれず。
 アーサー王とアレキサンダー大王がリーダーをしていたが。
 アーサー王は七つの大罪の強欲のマモンと戦っている。
 
 アレキサンダー大王達は走り続けている。
 場所は地獄。
 自分達が召喚された異世界と繋がってしまった。
 大地の切れ目より遥か下方に存在する地獄。
 
 果てしない赤黒いマグマが地を滑り。
 どこまでもどこまでも大地を支配しようとしている。
 
 悪魔達は倒しても倒しても湧き出てくる。
 
 その時だ。
 
 アレキサンダー大王は直感を信じた。
 
「皆静かにしろ」
 
 悪魔達の動きが止まった。
 彼等は何かに怯えているように一目散に逃亡を図ろうとするも。
 その後ろから何か巨大な力のようなもの、うねりのようなものが流れ込んでくる。
 悪魔達は一瞬で怯え、こちらに向かって突撃を開始する。
 
「宮本武蔵、佐々木小次郎、アキレウス、ヘクトル、任せた」
【おう】
 
 4名が叫び返してくれると。
 
 アレキサンダー大王は辺りを伺う。
 戦争とは戦略が大事である。
 
 悪魔達の背後、やはり何かがいる。
 何か巨大で恐ろしい存在が。
 地面が凍り付くように息吹を感じる。
 恐怖が体を支配する。
 のしのしと6体の何かがやってくる。
 
 黒い翼を生やした長身の男。
 不適に笑う姿はもはや不気味を通り越して恐怖そのもの。
 彼が何者であるのかまるで遺伝子に刻まれたかのように理解した。
 
「傲慢のルシファーか、なぜ俺は知っているのだ」
 
 漆黒の翼を生やしている。こいつはルシファーとは対照的に美形ではなく化物の姿。大きさもルシファーより3倍は巨大である。
 
「憤怒のサタンか、なぜだ」
 
 巨大だ。ウミヘビか、だがドラゴンのように見える。青い何か。それはリヴァイアサン。だがそれが何であるかより何者であるか理解している。
 
「嫉妬のレヴィアタンか」
 
 巨大なハエの男。羽が至る所にあり、さらに目が無数にある。
 それはハエだったのだから。
 
「暴食のベルゼブブ……」
 
 美形の男性。どこからどう見ても優男。
 タキシードのような衣服を身に纏い。
 彼はにこりとお辞儀する。
 この中で一番人間ら叱ったが、信じられない。
 
「色欲のアスモデウス!」
 
 巨大なクマのようで毛深い何か。体中からどす黒い煙をまとい。不敵に笑う毛深い何か。そいつは。
 
「怠惰ノベルフェゴール」
 
 ルシファーがこちらを見てにこりと笑い。
 
「アレキサンダー大王、地獄の試練はどうだった。君にタルタロス様が合いたいそうだ」
 
「残念だったな、タルタロスを破壊しに来てやったぜ、どうだ。倒される覚悟は出来たかな」
 
「あまり、僕達を馬鹿にしないほうがいいよアレキサンダー大王」
 
 その時、地割れが響いた。
 何かが落下してくる。
 地面を破壊して何かが。
 そいつは巨大なマモンだった。
 
 その右手にはアーサー王が握られていた。
 
「アーサー!」
 
 思わずアレキサンダー大王が叫ぶ程だった。
 マモンはアーサー王をアレキサンダー大王の方角へとぶん投げた。
 アレキサンダー大王は思わず受け止めて後ろに吹き飛ばされる。
 土煙の中で2人は立ち上がる。
 
「ちっきしょうマモンつえええ」
「アーサーふざけてる場合じゃないぞ」
「誰がふざけてんだよ」
「目の前のやばい奴等だよ」
 
 アーサー王は不適に笑い、アレキサンダー大王は手を差し出しアーサー王を立ち上がらせる。
 
「どんな状況でも」
「俺達には英雄達がいる」
 
 宮本武蔵、佐々木小次郎、アキレウス、ヘクトルは怯えて仕方なく襲い掛かってくる悪魔達に対抗すべく戦闘を繰り広げている。
 
 地獄に旅立った初期のメンバーで残されているのは源義経とトリスタンだけであった。
 後は新しく加わった英雄達。
 
【円卓の騎士ランスロット】
【クー・フ―リン】
【ガラハッド】
【ガウェイン】
【平清盛】
【ペルセウス】
【オデュッセウス】
【アイアス】
 
 その他にも名だたる英雄達が立ち尽くしている。
 
 アレキサンダー大王はかつて大陸から大陸を侵略したように、ただただ思い出す。
 鼓舞を張り上げる為に声を張り裂けんばかりに。
 強大な声を振るえんばかりに。
 心の臓器から降り出さんばかりに。
 
「みなのものおおおおおおおおぉぉぉ」
 
 ただただ叫ぶ。
 4人の英雄が戦っている。4人は時間を稼いでくれている。
 
 アレキサンダー大王が出来る事。
 それは。
 
「我らは英雄の大群なり、7つの大罪を倒すものなり、なぜなら俺達は最強だからだあああああああああああああ」
 
 心の底から張り裂けんばかりに、穿つ心臓が爆発するように。
 
「つっこめえええええええええええ」
 
 戦略も戦術も攻略も知略も何もない。
 力と力でただ倒すのみ。
 アレキサンダー大王の戦い方はそれだけではない。
 
「ただつっこめえええ、だが、お前たちに最高な贈り物を送ってやる」
 
 アレキサンダー大王の力。
 それは仲間に対して力を与える事。
 勇気や希望や知恵を。
 力は伝達し、1人また1人と強くなり増幅されていく。
 
【王者の資格】
 
 この力はアレキサンダー大王に与えられたスキルのようなものだった。
 
 英雄達の体から噴き出る勇気の証。
 体から溢れんばかりの気合。
 彼等は突っ込んだ。
 七つの大罪がそれを防がんばかりに躍りかかる。
 
 英雄と悪魔の大戦争は始まったばかりだった。
 
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