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第5章 幸運度Max【ガチャ】

第67話 四角の文様

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 ザーコック・ギャシー。
 小さい頃を小さな村で過ごす。
 多くの村人達に愛されて過ごす。
 そこに流行り病が発生する。
 村人は全滅。
 
 血反吐を吐きながらなぜか生きてしまったザーコック。
 額には四角の文様が浮かび上がり。
 ザーコックは血の涙を流していた。
 彼は既に死んでいたのだから。
 肉体はゾンビとなりて、1本の剣を掴む。
 そのおかげでゾンビとなったのだから。

 相棒の名前はペリーネシアス・デッド。
 かつて大陸を大悪党の限りをつくした大悪党の中の大悪党。

 ペリーネシアスは愛するべき者達の為にただの剣となる。
 人間という肉体を捨てて。

 死者となるはずだったザーコック。
 ただの剣となり朽ち果てるはずだったペリーネシアス。
 2人が出会う事により。

 ザーコック・ギャシー・ペリーネシアス・デッドが誕生した。

 ザーコックは人を斬って斬りまくった。
 神々と呼ばれる化物たちも斬った。

 かつて異世界にはエルレイム王国とブシャルー帝国が存在していた。
 二つは戦争を繰り広げており。
 
 ザーコックは二角の文様のナルデーラの元で10人の滅び人と呼ばれる将軍であった。
 彼はナルデーラ王の元でエルレイム王国や多種多様な王国の人々を斬って斬りまくった。

 かつて愛した人やかつて大事だった人は疫病で死んだ。
 大悪党と呼ばれていたペリーネシアスは相棒だった。

 人を不幸にして人を殺しつくして。

「なーにも残らなかった」

 ザーコックの目はまっすぐに真・クロウガーを見ていた。

「なぁ、あんた、遊びで大勢の人を殺しつくすのに何の意味があるというのだ?」

「ふ、グモンだな、神々の遊びなど沢山あるではないか」

「おめーさんが異世界の神だとしても、この世界の神々だっている。俺が殺して来た人々がどこに旅立ったのかそれは知らねー。だがなぁ、殺しはいいけど殺す意味を失ったらだめだ」

「ふははっはは、何も見えないが声だけが聞こえる、負け犬は格好良くほざけ」

「てめーもな」

 ザーコック・ギャシーが走り出す。
 地面を蹴り上げて、こまきれのように砂利がかき乱される。
 ロイが並走する。

 クロウガーがこちらに向かって右腕を差し向ける。

「どこからくるかだってぇえ? そんなの分かり切ってるじゃないか、風が向かってくる方だぜ」

 右腕から強烈な闇色の光が発せられると。
 風がうずまき、ぐるぐると回転し。
 一瞬の静寂に包まれたと思ったら。
 爆発した。

 炎ではない、闇色の爆発だった。

 それは凝縮されており、地面が陥没し。
 闇色の爆発は柱のようになり空の白濁とした雲を突き破り。
 世界食いの艦隊を吹き飛ばす。

「ぎゃははははっは、世界食い巻き沿いにしちまったぜ」

 だがそこにペリーネシアス・デッドの剣を構えているザーコックがいた。

「これは借りですよロイ」
「今度飯でもおごるよ」
「ゾンビの飯は人間の肉だと言われていますが、残念ながら俺はステーキが食いたいです」
「ああ、用意するよ」

 ペリーネシアス・デッド、それは闇の象徴たる大悪党。
 闇の攻撃を無効化する力を兼ね備えている。
 だが圧倒的な破壊力の前にペリーネシアスは。

【ぎゃははっはあ頭が割れそうだぜ】

「お前はいつもハイテンションだなペリーネシアス」

【そうか? おめーほどではないがな】

【戦いたくてうずうずしてんじゃねーのか】

【それとも大事な大事な女性でも思い出していたのか?】

「そう連続で話しかけるな」

 ザーコックは地面に足が付いている事を確認すると。

「さて」

「目が見えないのは」

「とても辛い事だろう?」

 単調にゆっくりと死刑宣告するかのように告げるが。
 クロウガーは冷静というか笑って遊んでいるかのように。

「そんなのはてめーをぶち殺せばいいんだぜ? あぁあぁ?」

「ロイ、いけ」

 ザーコックはロイを信用している。
 かつて異世界でエルレイム王国とブシャルー帝国が戦争した時。
 数百万のブシャルー兵士に対してロイと七代将軍で防いだ実績を持つ。
 彼ならなんとかしてくれる。
 
【それでいいのか? ただ見ているだけでいいのか?】

「愚問だな、奴はロイが倒す」

【悪党っちゅうのは横取りしてなんぼのもんだよ】

「残念だったな俺は悪党ではなくゾンビだ」

【違いない、ぎゃはっははははあ】

 その時空から1つの光が落下してきた。
 背中に白い翼を生やし。
 頭には黄色い輪っかがある。
 まるで天使そのもの。

 ザーコックの概念に天使と言う情報があったのは地球の歴史を見た事があるからだった。
 地球に残された文献にはイエスキリストなるものがいて、聖書と言う物が存在している。

「ふぅ、君から懺悔の臭いがするよ?」

「まったく次から次へと」

「大天使ジェレミエルです。あなたに慈悲と愛を与えましょう、あなたから悲しみが感じられます。今すぐに浄化してあげましょう」

 大天使ジェレミエルは紫色のような赤色のような光を纏いながら、空中を浮遊している。右手と左手を胸の中心に当てて。
 祈るように、こちらに向けると。

 かっと開いた。

「すまん、ロイ、こっちも問題発生だ」

 だがロイはそれを聞いていない。
 彼はクロウガーと決着をつける為に肉薄しているのだから。

 ザーコックの体が浄化されようとしている。
 ゾンビだから。

 大天使ジェレミエルは呪文のように呟き子憎たらしい笑顔を浮かべている。

 意識が朦朧としてくる。
 一瞬で何か白い世界に包まれる。
 辺りを見回すと今まで殺して来た奴らが笑っていた。
 それだけでむかつく。
 さらに上には昔住んでいた村人達がいた。
 彼等はこっちに来るなと叫んでいる。
 そこにはかつて愛した女性もいた。

「はは、みんな」

 だが周りを見つめると殺して来た奴らが笑っている。

「なぁ、相棒」

 だがペリーネシアスは答えない。
 そこには剣が存在していないのだから。

「俺死にきれねーわ」

 はっとなって目が覚めると。血の様な赤い宝石のような涙を流して苦悶の表情を浮かべている。大天使ジェレミエルがいた。

「信じられん。そこまで死にたくないというのか」

「てめーは何か勘違いしているようだがな、俺はもう死んでる。死を乗り越えてその先に何かがあるんだよ」

「死を乗り越えるだと? それは論外だ浄化せねば」

 大天使ジェレミエルが右手と左手を合わせる。
 また祈るようなポーズをとるが。
 ザーコックには一切通用しない。

「で?」

「うそだろ」

「だからなにしてくれんのよ」

「うそだろうそだろ、慈悲が、愛が、わたしはお前に慈悲を与えているのだぞ」

「だからその慈悲ってのはなんだ? 美味しいもんなのか」

「あ、ありえない」

 ザーコックはペリーネシアス・デッドを握りしめながら。

「神は沢山殺した。人間も化物の。だが天使は初めてだ。なぁ? ペリーネシアス」

【だな】

「ひ、ひいいいいい、ってね」

 大天使ジェレミエルは高らかに笑った。

「慈悲を与えるのは何も許す事ではなく使役する事に繋がる、見よこの軍勢を」

 大地が降り立つ死者の軍勢。
 その数は数えきれる程だ。
 それはたった3人だったのだから。
 
「軍勢?」

「正確には1体につき100億の死者が融合している。最強の死者の兵士だ」

「へぇ」

 ザーコックは問答無用とばかりに走り出す。
 風を追い風にしながら。

「四角の文様は死者にはきかねーもんでね、力押しさせてもらうよ」
 
 跳躍する。
 地面を蹴り上げて。
 地面に降り立つ時。
 終わっているはずだったのは。

「俺か」

 ザーコックの体は上半身と下半身が真っ二つになったのだから。
 真っ黒な血がどろりと地面に流れて。
 ザーコックは死ぬ事が出来ないので。
 取り合えず。上半身と下半身が別々に動いていた。

 その時ロイとクロウガーがぶつかりあって地震のような揺れが生じた。


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