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第5章 幸運度Max【ガチャ】

第66話 殺戮卿と切裂魔

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「さて、そこのでかぶつのおっさんも死にますかな」

 空箱のヴォルドが呟く。まるで音楽をかき鳴らすかのように。

 だが切裂きジャックはそれを無視して裏世界キャンベルの元にやってくる。

「これドクターモオリの薬だ飲め」

「わりーな」

 裏世界キャンベルがぐびぐびと飲み干すのを見ている空箱のヴォルドでは無かった。
 彼は無数のアイテムボックスを飛来させていた。
 そこからあらゆるコレクションした魔法武器を飛来させるが。
 それを防いだのは。

「少し黙れ」

 物凄い殺気であった。
 空箱のヴォルドは恐怖のあまり縮み上がった。
 そこにいたのは化物ではない殺意のうねりの塊だった。

「仲間大切だとカイル様は言った。仲間を失うのはとても悲しい事だとカイル様は言った。それ、俺様はとても怒っている。今まで人を殺す事しか考えていなかった。初めて仲間が出来た。それも沢山沢山。それを苦しめる奴。打っ殺してやる」

 空箱のヴォルドの脳内に危険信号がともった。
 それは死ではない、幾多の苦痛を感じさせる。
 睨まれただけで拷問されているような。
 
 切裂きジャック。
 その男は全身に包丁やナイフや短剣を装備している。
 分厚い体は黒いマントのような衣服で覆われており、まるで他者に恐怖を与える為に武器をマントの外に装備している。

 ゆっくりと動き出した。
 まるで人形のようにゆっくりと。
 空箱のヴォルドは無数のアイテムボックスを飛来させる。

 箱が箱を呼び。魔法武器が炸裂するはずであった!
 だが切裂きジャックはまるでハエを払うかのようにゆったりと正確に1つずつ魔法武器を吹き飛ばした。

 一撃一撃が信じられない威力で。コレクションした魔法武器は破壊された。

 それでも切裂きジャックは散歩するかのようにゆっくりと歩き。
 1個ずつ正確に魔法武器を破壊している。

「信じられん」

 空箱のヴォルドは悲鳴をあげそうになっていた。
 
「だが数千の魔法武器を破壊出来るかな?」

「破壊する。それが仕事だから。仲間を大切に思う殺しだから」

 空箱のヴォルドはその光景を見て絶句している。
 無傷。切裂きジャックの体に傷を与える事不可能。
 攻撃を当てる事すら不可能。
 なぜなら全部切裂いてしまう。
 
「はっはっは、切裂魔だね」

「殺戮卿に言われたくないな」

 と切裂きジャックが異世界キャンベルに呟く。

「なぁ、あんた、俺様の何が見える?」

 既に散歩が終わったかのように、切裂きジャックは空箱のヴォルドの眼の前に立っている。

「なぁ死ぬか? でもカイル様はなるべき殺さないほうが良いって言っていたから殺さない」

「は、はは」

「だから切裂く」

 次の瞬間、一撃必殺かのように切裂きジャックの精一杯の斬撃が浴びせられる。
 スピードは遅いのに避ける事が出来ないヴォルドは悲鳴を押し殺して。
 左首斜め下に両断された。
 深紅の血が噴出する。

「ここまでか」

 だが空箱のヴォルドは生きていた。

「殺しを知り尽くしたものなら、殺さない方法を知っているという事か」

「直感のようなものだよ」

 切裂きジャックは呟き。

 ファイガスタ帝国の兵士達は悲鳴を上げる。

「だが終わらんぞ、一度行ってみたかった。こんなところで終わるなら、わたくしは自分の世界に旅立とう」

 次の瞬間、無数のアイテムボックス達が合体していまだ一歩も動いていない空箱のヴォルドに降りかかる。

 ヴォルドは自分自身をアイテムボックスの中にしまい込むと。
 そこから忽然と消滅して、残された四角い巨大なキューブも消滅した。

 そこで空箱のヴォルドの夢は叶い。彼はどこかにと旅立った。

====真・クロウガー====

「やーいやい、ロイーフル、ロイーフル。ミーツケター」

 ロイフルの眼の前、かつてエルレイム王国があった異世界。
 沢山の人々を殺して、異世界そのものを崩壊させ、そこを修羅とさせた元凶が立っていた。

 右腕を包帯でぐるぐる巻きにしたその男。
 背丈は普通の男。衣服はぼろぼろだが戦闘用の衣服である事。何かの獣で造られた事が分かり。奴には武器と言う武器がない。

 なぜなら真・クロウガーは武器を必用としないからだ。
 その包帯で巻かれた右腕。それが呪われており、神である顕現としている。

 その右腕で1つの国、いや大陸を吹き飛ばせるのだから。
 奴には武器など必用がない。

 だがその左腕、その左腕は玩具のように使う。
 
「ひゃっははっははは」

 左腕、それを取り外す事の出来る義手。
 かつてロイは奴の両腕を両断したが。奴はそれを利用して新しい攻撃方法を手に入れる。

「いやーおめーに左腕を両断されたとき、思いついたんだお、これ玩具だろ? だろだろ? ならこうして操作すればいい、神だから出来る芸当ってもんだぜ」

 真・クロウガーの左腕が取り外され、独自に動く左腕。
 空中を泳ぐように動き、こちらを馬鹿にする姿。

「君はいつだって変わらないなぁ」

 ロイが笑うと。

「今日、ここでお前の神の人生とやらを終わらせよう、未来永劫蘇らないようにな」

「いやーそりゃ無理無理」

「だが俺は1人じゃない、そして今もかつての仲間がやってきた」

 異世界の大橋。
 そこを通じて、この場所に戦場の中に。
 1人の腐った臭いを発した男がやってくる。

 額に□の文様を張り付かせながら。
 けたけたと笑いながら。
 口の端を釣り上げて。
 腰にはどす黒い黒剣を握りしめて。
 左腕を腰にあてて。

「やぁロイ」

「君か四角のザーコック、君はいつだって死体の臭いだ」

「それは死んでるからねゾンビですから」

「それでも香水をつけているのだろう?」

 ロイがにこやかに告げると。

「他の奴等は各地に散らばった。取り合えずここは俺様が来た。なぁペリーネシアスデッド。相棒が神の血を欲しているのでな」

「けけけ、おめーかゾンビで□で四角で資格で視覚を奪う、えげつねーやつだな神としては恐怖だ」

「まぁ、それはお互い様だ」

 四角のザーコックが跳躍すると。
 次の瞬間。ペリーネシアスデッドの黒剣が炸裂する。
 大地を穿ち。空間そのものを両断する。

「かつて大悪党がいた。人を苦しめる事が大好きで。だがそいつは黒剣になっちまった。こいつと俺様は繋がり俺様はゾンビとなった」

「そういう話でしたね」

 これはロイだった。

 左腕が飛来する。ザーコックの首を掴み折る。
 そしてザーコックの首をちぎる。
 首が落下するが。それをザーコックの首なし死体がキャッチする。

「まったくその玩具の左腕はどうにかならないのですかねぇ」

 そう言いながら首を復元する。

「きっしょ」

 真・クロウガーが毒づくも。

「では、視覚を奪いましょうか」

「ああ、だからこいつとは戦いたくねーんだよ」

 突如としてこの世界そのものが真っ暗に包まれたと思ったロイだが。

「あなたは見る資格がありますよ」

 ロイの世界が輝いた。

 クロウガーの目は漆黒に包まれた。
 これが八角の文様の八種類あるとされる四角の文様の力だった。

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