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第6章 超神話級ガチャ

第76話 審判は下された

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 瓦礫の山、茶色い荒野の中で大勢の兵士達に囲まれて死別ダマスカはただ悠然と立っていた。
 嘆いている仮面を顔に張り付かせ、いつも通り右手と左手を体に締め付けている。
 彼は判定世界で特定の判定を選別し、死別スキルで対象者が嘘を言うと死なせる事が出来る。
 俺はその恐るべきチートを持つ死別ダマスカを頼りにしていた。

 彼のおかげでジスタラン王国に入る他国のスパイ共を見極める事が可能だからだ。
 死別ダマスカの対面にいるのは全身に包帯をぐるぐる巻きにしている女性であった。
 
「あたしは包帯のミイラ。この包帯であなたを縛り付け殺してさしあげましょう」

 包帯のミイラの顔もまた包帯で巻き付けられていた。
 俺は細胞分裂により10体に分けられた体の超感覚を利用し、周囲、つまりジスタラン王国中を把握する事が出来る。

 オーディンの共鳴だと遠くの人を話をする事が出来る。
 現在ジスタラン王国ではジェイグルンド共和国のように共鳴を邪魔される事はない。

 共鳴と超感覚を合わせて使用すれば、遠くのものと会話したり、遠くのものを見たり、感じたりする事が出来る。

 俺はやはりチートの塊なのだと思うが、それもまた仕方のない事なのかもしれない。

 死別ダマスカはただ黙り、自然な口調で答えた。

「包帯のミイラ、君を判定しよう、生きたいか?」

「そうでもないさ、死んでもいい」

「なら、今から、それがしの前で嘘を言ったら死ぬ」

「へぇ、面白そうじゃないのさ」

「お前は俺に勝てると思っている?」

「ああ、勝てるさ」

「なら、なぜ侵略してきた?」

「ただのなんとなくさ」

「お前の目的は?」

「ただの暇つぶしさ」

「お前が考えている事はなんだ」

「なーんも考えてないさ」

「なるほどな、どうやらお前は馬鹿正直の馬鹿のようだ」

「それは誉め言葉として受け取っておくさね」

「なら武力行使にでよう、君には判定世界も死別スキルも通用しないようだからな」

「まぁ、あたしは本当の事しか話す事が出来ないし、馬鹿正直のあたしに重要な説明はラッドン王もしてないだろうしな」

「それが賢明なのだろうが、どうやらそれがしは面倒くさい相手とご対面のようだ」

「それを誉め言葉として受け取っておくよ、ありがとう」

 死別ダマスカの両腕を鎖が縛っている。
 彼は鎖を操作すると。
 無数に増殖していく鎖を鞭のようにしならせて、次の瞬間には津波の如くどっと包帯のミイラに押しよせていった。

 包帯のミイラは全身の包帯を操作すると。
 包帯が無限増殖に蠢きだし。
 白い包帯の蛇のような物が死別ダマスカの無限増殖をし続ける鎖と衝突する。

 空中で包帯と鎖がぶつかり合う。
 
「君もそういう系統の、力持ちなんだね」

「まぁな、あたしは全身を包帯で巻く事で力を得る。皮膚を他者に見せない。それがあたしの力。そうする事で羞恥心が力となり、不思議な力を得た。子供の頃にこれを手に入れた事であたしは最強になれた」

「そうですか、人と言う生き物は沢山の歴史があるものです。このそれがしもスパイ業界では名のあるものでしてね、色々と失いましたが・・・・・・」

 だが包帯のミイラは答えない。
 彼女は全身の包帯を操る何度でも鎖を叩き落とす。

 蠢く鎖、蠢く包帯。
 茶色い荒野、無数の兵士達。
 その中で死別ダマスカはただ頷いた。

「さて、審判と言う物がどいう物かあなたはご存じですか? 包帯のミイラさん」

「審判? よくある世界終末の時とかかな」

「そういう訳ではありません、けど近いものがあります。それがしのまだ使っていない力の1つ【審判】を発動させてもらいましょう」

「相当やばそうな気がするから、速く片付けさせてもらおう!」

 包帯のミイラは走り出す。

「この15将、かつてファイガスタ帝国の王はこのあたしを認めた。それは計り知れない年月の前だった。もうこの大地にはあたしを知っている人などいないのだからな、さて、とどめぇ」

 全身の包帯をバネのように地面でバウンドさせる包帯のミイラ。
 彼女は空中高く舞い上がり、地面に向かって包帯を巨大な拳の形にまとめ上げると。

 それを死別ダマスカの頭上から隕石の如く落とす。

 死別ダマスカの瞳は死を覚悟していなかった。
 ただ空を見上げて。

「あれは凄く危険です。そんな香りがするからですね」

 死別ダマスカは仮面を外す。
 その眼の先には太陽の光を背にして包帯のミイラが包帯拳で落下してくる。

 俺ことカイルはその光景を見ているしかない。
 分身体でも十分包帯のミイラを倒す事が出来るだろうが。

 そう簡単に行く事もない。

「審判は下された」

 突如として空中に巨大なコインが出現する。
 コインは空中で何度も回転をし続けている。
 回転が終わるころには包帯の拳が死別ダマスカの頭上を捕えて殴り潰す。
 
 はずだったのだが、包帯の拳は死別ダマスカを潰す事は出来なかった。

 そこには死別ダマスカがいるはずなのに存在していないからだ。
 彼はそこに存在していて存在していなかったのだから。

「一体どういう」

「御覧の通り、審判は下された。それがしはこの世界に存在していない事になった。まぁ知覚している物はそれがしを知る事が出来るが」

「そういう問題ではない物理的な攻撃が通用しないだと?」

「存在していないと審判されたのだからそうなのだろう、この審判スキルはそれがし自身にしか発動する事が出来ないのだよ」

「それはつまり」

「それがしはしばらく存在していない。だから攻撃も通用しない、ただこれは条件と言うかメンドクサイ事なのだが、説明する。それがしを倒すにはそれがしの心臓を突き刺す事だ。それ以外は存在していない事になる。まぁ心臓はここだ。ここだけが実態のあるものだが潰すには骨が折れるというものだ」

「つまり、審判で存在していないと下され、他の部位を攻撃すると向こうか、つまりスルーされると心臓だけが弱点であり、そこだけが実態があると、さっきの包帯の拳は心臓を潰していなかったと。つまりそういう事だな」

「つまりそういう事だ」

「ならハエー話が全部踏みつぶせば良いだけの事だろうがよ」

 包帯のミイラは空を見上げている。
 包帯は無限増殖を繰り返し。彼女の体の中から魔力を吸い上げている。

 包帯の壁が出来上がる。
 空を覆いつかんばかりの包帯の壁、いや天井だ。

 兵士達が歓声をあげる。

「でたぞー包帯のミイラと必殺技、全部を天井で踏みつぶす」

 包帯のミイラはただ呟いた。

「終わりだ、嘆きの仮面をつけている男よ」
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