上 下
78 / 89
第6章 超神話級ガチャ

第78話 自らに嘘を言う

しおりを挟む
 死別ダマスカの素顔は不気味なほど歪んでいた。
 不敵に笑う所ではなく不気味な歪みだった。

「判定世界、対象者死別ダマスカ」
「判定を行う、自らに問う、お前は死にたいか? 嘘を言うと死ぬ」

「何をしているんだ」

 包帯のミイラは意味が分からにと言う表情で問いかける。

「見てわからんが自滅しようとしている」

「はぁ?」

「死別を発動、俺は死にたい!」

 その時死別ダマスカの存在していない体から心臓が解き放たれる。
 まるで玩具のパズルの心臓のようにひも解かれていく姿。
 死別ダマスカが造り替わる。

 俺は悟った。
 これは自滅ではないのだと。

 彼はそこには存在していないはずなのに今逆の現象が起きている。

 死別ダマスカはそこに存在していたのだから。

「つまり存在していない状態で死を与えると生まれ変わるこれを【死別転生】と呼ぶ」

「死別転生してどうなるんだい」

「それはこれから味わってもらう」

 死別ダマスカの鎖が右腕と左腕に巻き付く。
 ぼんと胸を張ると、地面を蹴り上げて空中を舞う。
 回転をし続けながら地面に落下すると地面に巨大な穴が出来る。

 またぼんと叩くと、地面に拳をあて走り出す。
 一瞬で包帯のミイラの至近距離に到達する。

 魔闘士VS死別転生

 2人の拳がぶつかり合う事はなく、死別ダマスカの鎖の拳が包帯のミイラの心臓を突き破っていた。

「かはっ」

 血を吐き出す包帯のミイラ。

「こんなはずじゃ・・・・・・」

 そう言い残して包帯のミイラはそこに倒れた。
 命の心臓は燃え尽きていた。
 死別ダマスカは辺りを見回す。

「さて、判定世界と行きましょうか」
 
 生まれ変わった死別ダマスカに敵はいなかった。

「死別転生には弱点がありましてね、5分しか発動できないんですよ、さて兵士の皆さんなるだけ殺してあげましょう」

 不気味なほど歪む死別ダマスカの表情に俺は凍り付いた。

====ユーゴVS狂乱バルゼロ====

 俺は視線をユーゴの元に変更した。
 そこに俺の分身が近くにいたので意識を集中して分身の意識と同化する。
 
「やぁ、モンスターマスターユーゴ」
「おお、カイル様じゃないですか」

「先程戻ってきたんだが、これは分身体で別なところに本体がいるんだよ」
「なるほど」

「で、戦況はどんな感じだい、まぁ、大体わかってるんだけど聞いとくよ」
「はい、ドラゴンとライカンの軍勢とその他のモンスターの軍勢によりファイガスタ帝国の兵士達は疲弊している。だがモンスター達も疲弊している状況には変わりない、問題は兵士達の数の多さだ億を超える大群相手だとさすがにきつい」

「そうかー気になってたんだけど、今の君、凄くいかしてるよ」
「この恰好ですか、相棒のドラゴンと融合したんです。ドラゴンの鎧ですが、そう簡単には死にませんよ」

「それはいいんだけどさ、君アウトローだから相手殺しつくしちゃいそうで怖いよ」
「アウトロー? ただ無我夢中なだけですよ」

「さて、何やらおかしな雰囲気になってきたね」
「はい、先程から1万の兵士の動きが可笑しいんです。洗練されているというよりかは誰か軍師的な人が上手い具合に指示系統を操っている感じなのですよ」

「なるほどな、超感覚を頼りにすると、兵士達は狂乱バルゼロ様と呼んでるな、15将の1人らしい、力は未知数だけどね」
「狂乱バルゼロですか」

「兵士達に慕われている所からするととてもいい人なのだろうが、とても危険な奴なんだろうな」
「ふむ、一度手合わせしたいものです」

「まぁ、その1万の兵士はこちらに向かってる。俺が手を差し出してもいいが、簡単に終わるぞ、俺としてはモンスターマスターユーゴの戦い方って奴を拝見したいもんだ」
「それならとくと御覧に見せましょう」

 俺はその場で胡坐をかいて座った。
 ユーゴはなぜそこで座るんだろうという視線をこちらに向けていたが。
 俺はあまり気にせず胡坐をかいてくつろいでいた。

 その時だ。ぶぉおおおおという角笛のような音が響いた。
 その音を合図に1万の兵士が動き出した。
 
 1万の兵士達が陣を築き上げる。
 それに対してモンスターマスターユーゴがモンスター達に指示を下す。
 空からドラゴンが地上に向かってファイアブレスを放つ。
 その無数の数のファイアブレスにより多くの兵士達が死ぬかに思われたのだが。

「魔術師部隊か」

 魔法のバリアではなく水のバリアでファイアブレスを遮られると。
 なぜ普通のバリアにしなかったのかが分かった。
 そこには巨大な矢を解き放つバリスタが設置されていたのだから。

「なんだと、高速で建造したのか」

 先程まで存在していなかったバリスタから巨大矢が解き放たれると、一瞬でドラゴンの群れがずたずたに引き裂かれ、地上に落下していく。

「ライカン!」

 ライカンの部隊が走り出す。
 巨大なオオカミでありながら魔法の力を宿している彼等は、地上の獣の王そのものだった。
 地上を疾走していく姿を見ながら、そこに俺は金狼シェイバが居た事に驚きを隠せなかった。

 まったく気付かなかったという感じなのだ。

 ライカンの部隊に引き続きダンジョンでテイムしたモンスターの軍勢が怒涛の如く兵士達に群がる。

 だが兵士達は後ろに下がると、そこからさらなる戦場兵器が現れる。
 それは木製の壁であり、所々に穴が空いてある。
 そこから無数の槍が突き出て、ライカンとモンスターを倒していく。
 ライカン達の悲鳴が上がる中で。
 モンスターマスターユーゴは怒りをふつふつと沸き上がらせている。

 これはアウトロー化するのも時間の問題だぞと俺は心の中で思った。

「一度撤退しろ」
 
 モンスターマスターユーゴが叫ぶと。
 無数のモンスター達が後ろに撤退を始める。
 それを待ってましたとばかりに、1万の兵士達は弓矢を放つ。
 次から次へとモンスター達が絶命していく中で。

「ぐぬぬぬ」

 モンスターマスターユーゴの顔が真っ赤に染まる。
 ドラゴンの鎧の姿だが、いつも肩に乗っていた小さなドラゴンと融合したのだろうけど。
 それだけで危険だと思うけど、さらにアウトロー化したらどうなるのだろうかと、少し恐ろしく感じていたカイル。

「ドラゴンは空からファイアブレスを解き放ちつつ、ライカンは四方を取り囲み、他のモンスター達はライカンの援護だ。後、カイル様から貰ったモンスターバッグを使う」

 モンスターバッグ、それはモンスターを無限に異空間に収納出来るという恐ろしい便利グッズ。
 一応ガチャ品なのだがユーゴに渡してあった。

「さてと、行くとするか」

 モンスターマスターユーゴはアウトロー化しました。




しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:71pt お気に入り:1,969

【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-

SF / 完結 24h.ポイント:213pt お気に入り:1,958

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42,032pt お気に入り:29,885

新米冒険者のとんでもない1日

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:14

異世界でお金を使わないといけません。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:328

処理中です...