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閑話 監禁生活の日常
しおりを挟む本日二話投稿、二話目。
————
今日も監視塔の窓から青い空が見える。季節はまだ秋なのだろう。
いつもと変わらない部屋。一つだけ変わっていることといえば、テーブルに可愛らしい包み紙が置かれていることだ。
「カインさん。ボスから差し入れです」
「中身は?」
「チョコだって聞きました」
ラザロの話を聞いてすぐ中身を確認する。そこには小さなボール状のチョコレートが五個入っていた。思わず眉を寄せる。
「甘いの苦手なんだよ」
「そうなんですか? ボスは知らなかったんですかね」
「知ってるはずだが……気まぐれってやつだろうな」
苦手な食べ物の話は監禁されて最初の方に話題に上った。
おそらく、遊び相手にお菓子を差し入れるという状況を楽しみたかったのだと思う。そのために俺の好みをガン無視するのがジャンらしい。
感想を聞かれて答えられないのもまずいので、チョコを一つ摘んで口に放り込む。
「あっっっっま」
悶絶するほどの甘さだ。すぐに紅茶を飲み干すが、口の中に残り続けている。
「本当に苦手なんですね」
「口に残る感じがだめで」
「美味しそうなのに、もったいない話ですね」
ラザロは甘いものが好きなんだな。彼の目線が雄弁に語っている。
「食べるか?」
「いいんですか?」
「さすがにジャンも腹の中までは見ないだろうから」
「その言い方ちょっと怖いっす」
チョコを取り出して一口かじり、ラザロに手渡す。
「感想も教えてくれ。参考にするから」
「えっと、頂く立場で言うのもあれですが、丸ごともらいたかったというか……何で齧ったんですか?」
「あっ! ごめん。癖で」
「癖?」
ラザロが不思議そうに小首を傾げる。
「ルイスに……義弟に分ける時いつもそうしてたから」
「一口齧ってですか?」
「一回味見したやつ分けたら、それからずっと習慣になって。俺が口をつけたやつをもらいたがるから」
「それはかなり変わってますね……。てか、義弟に食べ物分けるのが普通なんすか!?」
「何かおかしいか?」
今度は俺が小首を傾げた。美味しいものがあったら普通に分けたくなるだろ、それは。
「カインさん。兄弟間のご馳走は常に競争が付きまとうものなんですよ」
「競争?」
「自分の分を確保しつつ、いかに他から奪い取るか。おれのところは七人兄弟なので戦場でした。兄貴に取られっぱなしでしたけど」
「賑やかそうだ」
「そんな生優しいものではないです。食べ物の恨みは一生っす」
「そ、そうか。大変だったな」
ラザロが荒んだ目つきになった。一般的な兄弟の基準はわからないが、俺たちは仲が良いほうだったみたいだ。
「その齧ったやつどうしますか?」
「さすがに俺が食べる。ほら、残り三個食べていいぞ」
「ありがとうございます! それにしても、義弟さんが羨ましいです。おれもカインさんみたいな優しい兄貴がほしかったなー。まさに理想の兄貴です」
「お前、それは褒めすぎ」
「あれ? カインさん顔が赤くなってる」
ラザロは少しの間俺を見つめたあと、自分の発言を思い返したのか「あー……おれ恥ずかしいこと言っちゃいましたね」と気まずそうに呟いた。
それからなんとも言えない空気に耐えられなくなって二人同時に笑い出すまで、俺たちはチョコも食べず顔を赤くしていた。
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