最後の君へ

海花

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「───……で……なんであんたがいるわけ?」

英研で待っていたのは水野ではなく、紡木だった。

「僕も水野先生に資料の整理を頼まれたからかな」

紡木が相変わらず表情の読み取れない笑顔で答えた。
直斗は溜息をついて、紡木から何をやるのかを教わると早速仕事に取り掛かった。

──とっとと終わらせて帰ろう……

水野は自分の担任している生徒が怪我したとかで付き添いで病院に行ってしまった。

──こんなことならバックレれば良かった……。

直斗はため息をつき仕方なし黙々と続けた。



「この資料って…いつから溜めてんの?」

日が暮れ外が暗くなると、いい加減嫌になってきた。
いくら夏とは言っても日が暮れ教師達も帰り始めている。
「……今日はこの辺にしようか」

紡木が苦笑いする。
自分の仕事もしなければならない…。

「今日は…って……、明日も俺やらされんの!?」

「さあ…どうだろう……。そこまで水野先生に聞いてないから」

ぐったりしている直斗を見て紡木が笑う。

「藤井くん…自転車?」

紡木の突然の質問に

「電車」

一言だけ返し帰り支度を始めた。必要なこと以外話すつもりも、必要も無いと態度で告げている。

「送っていくよ。僕車だから」

それでも話しかけてくる紡木に直斗がチラッとだけ視線を向け

「いや…いいっす」

すかさず断る。

「そう言わないで。もう時間も遅いし…。藤井くんとは一度ちゃんと話もしてみたかったしね」

直斗が訝しげに紡木を見る。

──今日のことか…
───授業を出て行ったことか……

どっちにしてもいい話じゃない……。

「女の子待たせてるんで」

直斗はでまかせを言って

「それじゃ…」

と、英研を出た。
何時間も一緒に仕事をさせられて、まだ説教までされたんじゃ、たまったもんじゃない。
校舎を出ると確かに真っ暗だ。
スマホを見ると8時を回っている。

「最悪……」

直斗は駅までの道を歩き出した。

──飯……どうすっかなぁ……

コンビニの弁当もいい加減食べ飽きた。しかし考えた途端お腹が音が鳴り出す…。

──なんか食ってっか……

駅まであと少し…という所で、走ってきた車がスピードを緩めて少し先で止まった。
気にせず歩いていくと

「女の子……帰っちゃった?」

開いた窓から紡木が声を掛けた。

「………………」

───マジか…………

まさか……ここで会うとは思わなかった。

「……あー…あれ嘘なんで」

直斗は悪びれるでもなくそう言って、通り過ぎようとすると

「ラーメンでも付き合ってよ」

紡木が車から降りて背中に声を掛けてきた。意外な言葉に思わず足を止めると、途端に直斗のお腹が紡木にまで届く程の音を立て

「それはOKってことでいいかな?」

振り向く直斗に紡木が笑顔を向けた。


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