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「大丈夫ですか?」
寝ぼけているのか熱のせいなのか、じっと自分を見つめる涼太にもう一度声を掛けた。
触っただけで熱いのが分かる程、熱が高くなっているのが素人の冬音夜でも分かった。
「……冬音夜か………」
そう言って首だけを動かし周りを見回す。
「…ここは……?」
眉をひそめた。
自分が寝ているのがお世辞にもホテルの一室とは思えない。
狭い部屋に小さなテレビと机がひとつ。そして壁にはその辺の商店街で配ってそうな数字だけが並んだカレンダー。
「俺のアパートですよ。…すごく具合悪そうで……ホテルに入るのは…どうかと思って……」
少し不満げに
「あれから…声を掛けても全然起きてくれないし……」
そう続けた。
涼太は「運ぶの大変だったんですから……」と、ブツブツと文句を言う冬音夜を不思議そうに見つめ「そうか…」と
だけ言うと再び目を閉じた。
「あ……スポドリ飲みますか?……熱下がりますよ…?」
また寝られては堪らないと、冬音夜は慌てて声をかけた。
ずっとベッドを占領されていて自分はベッドに寄り掛かり座ったままウトウトしていた。
何しろこの部屋には寝具が一人分しか無く、座布団も無ければ当然ひざ掛けの様な物も無い。
本音を言えば帰ってほしい…。
まさか熱があってセックスするとも思えない。
それなら自分といる意味もないだろう…と思える。
そして時刻はとっくに日付をまたいでいる……。
「……いや……水でいい」
目を閉じたままの涼太に
「分かりました。…………あの…手、離してもらっていいですか…?」
申し訳なさそうに引き攣った笑顔を向けた。
コップの水を一気に飲み干すと涼太は再びベッドに横になり目を閉じた。
「──え!?……あ……あの、帰った方がいいんじゃないですか……」
焦って声を掛ける冬音夜を見るでもなく返事をするでもなく涼太はただ無言で目を瞑っている。
まさか今横になったばかりで寝てるとも思えないのに、冬音夜の言葉をまるで聞こえていないかのように無言で通しているだ。
「………自分の家で寝た方が…具合も良くなると思うんですけど……」
それでも食い下がるが、相変わらず瞼ひとつ動かさない。
───無視されてる…………。
「あのっ!俺寝る場所ないんですけど!」
さすがにイラついて、思わず本音が口からついてでた。
「…俺の横で寝ればいいだろ?」
半分程瞼を開け面倒臭そうに言う涼太に
「イヤですよ!移ったらどうするんですか!?……学校あるのに……」
ついまた本音が出る。
「……お前……結構辛辣だな」
涼太は大きく目を見開くと驚いた様にそう言い、そして冬音夜の手を思い切り引いた。
「疲れがピークに溜まると熱が出る。昔からで、誰かに移ったことなんか無い」
別に怒っている訳でも、かと言って面白がっている訳でもなく、当然の様に抱きしめ
「だからお前もここで寝ろよ」
そう言って身体を少しずらして冬音夜の場所を空けた。
シングルのパイプベッドが“重量オーバーだ”とでも言いたげに、どちらかが動く度に悲鳴をあげている。
「……狭いんですけど………」
まだ不満そうにしている冬音夜に
「お前……文句ばっか言うなよ……」
涼太が呆れたように後ろから抱きしめる。
二人でベッドに入りただ一緒に横になっている。
キスも、もちろんセックスもしていない。
冬音夜も不満気にしていながら拒否する訳でもなく、大人しく涼太の腕の中に抱かれている。
「……けどまぁ……マットレスは固いな……」
ボソッと言う涼太を少しだけ振り返り
「文句があるなら帰ったらいいじゃないですか」
冬音夜がまた不満気にしている。
「別に文句は言ってない。感想を言っただけだよ」
そう言うと涼太はもう一度冬音夜を強く抱きしめた。
───固くて狭いけど……寝心地は悪くない……。
冬音夜の鼓動が肌を通して伝わってくるのも涼太を安心させた。
───こんな風に人と寝るのは何年ぶりだろう。
不意にさっき見た夢の静流の顔を思い出した。
いつでも優しく笑っている人だった。
誰からも好かれ、そのくせ自分は誰も好きにならない。
世の中の全てを、どこか軽蔑していた。
そんな事を考えていると、突然耳元でベッドがギシギシと悲鳴を上げ、冬音夜がこちらを向いた。
しかしそれは意図的なものではなく、寝返りだとすぐに気付いた。
子供の様に薄らと口を開け寝息を立てている。
───もう寝てるよ…………
安心したように眠る顔を見つめ、微かに笑うと涼太もゆっくり瞼をとじた。
寝ぼけているのか熱のせいなのか、じっと自分を見つめる涼太にもう一度声を掛けた。
触っただけで熱いのが分かる程、熱が高くなっているのが素人の冬音夜でも分かった。
「……冬音夜か………」
そう言って首だけを動かし周りを見回す。
「…ここは……?」
眉をひそめた。
自分が寝ているのがお世辞にもホテルの一室とは思えない。
狭い部屋に小さなテレビと机がひとつ。そして壁にはその辺の商店街で配ってそうな数字だけが並んだカレンダー。
「俺のアパートですよ。…すごく具合悪そうで……ホテルに入るのは…どうかと思って……」
少し不満げに
「あれから…声を掛けても全然起きてくれないし……」
そう続けた。
涼太は「運ぶの大変だったんですから……」と、ブツブツと文句を言う冬音夜を不思議そうに見つめ「そうか…」と
だけ言うと再び目を閉じた。
「あ……スポドリ飲みますか?……熱下がりますよ…?」
また寝られては堪らないと、冬音夜は慌てて声をかけた。
ずっとベッドを占領されていて自分はベッドに寄り掛かり座ったままウトウトしていた。
何しろこの部屋には寝具が一人分しか無く、座布団も無ければ当然ひざ掛けの様な物も無い。
本音を言えば帰ってほしい…。
まさか熱があってセックスするとも思えない。
それなら自分といる意味もないだろう…と思える。
そして時刻はとっくに日付をまたいでいる……。
「……いや……水でいい」
目を閉じたままの涼太に
「分かりました。…………あの…手、離してもらっていいですか…?」
申し訳なさそうに引き攣った笑顔を向けた。
コップの水を一気に飲み干すと涼太は再びベッドに横になり目を閉じた。
「──え!?……あ……あの、帰った方がいいんじゃないですか……」
焦って声を掛ける冬音夜を見るでもなく返事をするでもなく涼太はただ無言で目を瞑っている。
まさか今横になったばかりで寝てるとも思えないのに、冬音夜の言葉をまるで聞こえていないかのように無言で通しているだ。
「………自分の家で寝た方が…具合も良くなると思うんですけど……」
それでも食い下がるが、相変わらず瞼ひとつ動かさない。
───無視されてる…………。
「あのっ!俺寝る場所ないんですけど!」
さすがにイラついて、思わず本音が口からついてでた。
「…俺の横で寝ればいいだろ?」
半分程瞼を開け面倒臭そうに言う涼太に
「イヤですよ!移ったらどうするんですか!?……学校あるのに……」
ついまた本音が出る。
「……お前……結構辛辣だな」
涼太は大きく目を見開くと驚いた様にそう言い、そして冬音夜の手を思い切り引いた。
「疲れがピークに溜まると熱が出る。昔からで、誰かに移ったことなんか無い」
別に怒っている訳でも、かと言って面白がっている訳でもなく、当然の様に抱きしめ
「だからお前もここで寝ろよ」
そう言って身体を少しずらして冬音夜の場所を空けた。
シングルのパイプベッドが“重量オーバーだ”とでも言いたげに、どちらかが動く度に悲鳴をあげている。
「……狭いんですけど………」
まだ不満そうにしている冬音夜に
「お前……文句ばっか言うなよ……」
涼太が呆れたように後ろから抱きしめる。
二人でベッドに入りただ一緒に横になっている。
キスも、もちろんセックスもしていない。
冬音夜も不満気にしていながら拒否する訳でもなく、大人しく涼太の腕の中に抱かれている。
「……けどまぁ……マットレスは固いな……」
ボソッと言う涼太を少しだけ振り返り
「文句があるなら帰ったらいいじゃないですか」
冬音夜がまた不満気にしている。
「別に文句は言ってない。感想を言っただけだよ」
そう言うと涼太はもう一度冬音夜を強く抱きしめた。
───固くて狭いけど……寝心地は悪くない……。
冬音夜の鼓動が肌を通して伝わってくるのも涼太を安心させた。
───こんな風に人と寝るのは何年ぶりだろう。
不意にさっき見た夢の静流の顔を思い出した。
いつでも優しく笑っている人だった。
誰からも好かれ、そのくせ自分は誰も好きにならない。
世の中の全てを、どこか軽蔑していた。
そんな事を考えていると、突然耳元でベッドがギシギシと悲鳴を上げ、冬音夜がこちらを向いた。
しかしそれは意図的なものではなく、寝返りだとすぐに気付いた。
子供の様に薄らと口を開け寝息を立てている。
───もう寝てるよ…………
安心したように眠る顔を見つめ、微かに笑うと涼太もゆっくり瞼をとじた。
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