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番外編 その2  竜の娘の、その旅路。

道の先には

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 ――――


 それからラキサとテオは、歩き続けた。
 目指すその、最後の場所……それは。

「ラキサさん、大丈夫?」

 今度は高い岸壁がそびえる、山脈地帯の間を進二人。
 岸壁には道らしいものがあるが、足場は良いとは言えない。吹きすさぶ風も冷たく、結構体力も使う。

「うん。私は、大丈夫」

「それは良かった。あと少しで、到着するはずだから、あと少し頑張って」

 先道しているテオは、励ますように言った。



「ラキサさんには、どうしても伝えたいことが、あるんだ。
 とっても、大切な話が、ね」
 


 ――――

 
 山脈の合間を縫うように歩き、もうずいぶんと奥に、そして高度も高い位置へと到達していた。
 今は階段のように岩の足場をのぼる、ラキサ達。
 一本道のその先には、まばゆい日の光が照り輝く。
 
「あそこを抜けたら、いよいよ到着だよ」

 テオは先に見える光を指さし、言った。

「あそこが……かしら」

「うん。あそこが、僕の――」
 
 そう話している間にも、二人はすぐそこまでたどり着こうとしていた。
 
 ――あの先にある場所は、どんな……場所なんだろう――

 残りは、もう僅か。
 先に待つものに期待しながら、ラキサはテオに続いて、道の先へと、進んだ。




 ――――

 登り路を進んだ、その先には……。

「ここは、村?」

 山脈の奥地にあったのは、 一見どこにでもあるような、小さな村だった。
 
 住んでいる人間もちらほら見え、近くにいた一人の若い青年が、村にやって来たラキサ達に気が付いた。

「おや? まさかここに訪れる者が現れるなんて、ずいぶん久しぶりだね。
 ようこそ、私たちの暮らす村、ルインズドラへ」

「ルインズ……ドラ?」

 それがこの場所の、名前らしい。
 そうラキサが思っていると、青年は今度は、テオの方へと親しげに目を向ける。

「それに、テオも一緒か!
 おかえり、テオ。旅に出たと言う話だったが、まさか、女の子を連れて戻って来るなんてな」

 青年の言葉に、テオは少し照れたようだ。

「あはは。それはちょっと、ね。だって、彼女は……」

「ほう?」

 と、青年は再びラキサに顔を向け、じっくりと彼女の姿を眺める。

「えっ、と、どうか、しましたか」

 知らない人から見られ、ラキサは緊張する。
 対して、青年は何やら、悟ったような様子を見せた。

「……成程、な。テオがどうして彼女を連れて戻って来たのか、分かる気がするぜ」

 テオはその言葉に、頷く。

「まあね。
 これから僕は、彼女に村の案内をしたいって思うんだけど、大丈夫かな?」

「ああ。だけど、ちゃんと長老にも挨拶を、忘れないようにな」


 テオは、わかっているよ、と言うような顔を、青年に向ける。

「それじゃ! 僕は長老に挨拶してから、彼女に村を案内するよ。
 ……行こう、ラキサさん!」

 そう彼は、ラキサの手を引いて、青年のもとから去って行った。



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