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第十三話・私が思っていた進路とちがう
教室の景色(視点混合)
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【誠慈視点】
萌乃とは奇跡的に仲直りできたけど、俺が1週間も学校を休んでいた事実は消えない。きっとクラスの皆は、誰も俺が大袈裟だとか弱いヤツだと笑ったりしない。でもいくら頭で言い聞かせても、自分の醜態を知る人の前に出るのが恥ずかしいという気持ちを消し切れなかった。
週明けの月曜日。今日こそは学校に行こうと、制服に着替えて玄関に向かう。靴を履いて後はドアを開けるだけなのに、最後の一押しが中々できず、しばらく立ち尽くしていると
ピコン。
スマホにメッセージが入った。こんな朝早くに誰からだろう? 画面を見ると、メッセージは萌乃からで
『ここ、どこだろう?』
と画像付きのメッセージ。朝からナゾナゾ? 俺の家の近所みたいだけど、いきなりなんだろう?
俺は首を傾げながら
『うちの近所みたいだけど、なんで?』
意図を尋ねると、すぐに萌乃から返事が来て……。
【萌乃視点】
場所が分かりやすいように、大きな看板の下に立っていると
「萌乃!」
制服姿の誠慈君が、小走りで近付いて来た。私は自分からも近付きながら
「ゴメン。朝から迷惑かけて」
これから学校なのに、こんなところまで迎えに来させてしまったことを詫びると
「それはいいけど。これから学校なのに、どうしてこんなところに?」
誠慈君の質問に、私は気まずい想いで
「……誠慈君を迎えに来た」
昔、不登校になった時、私はそのまま学校に行けなくなった。問題を起こして長く休んだあと、再び人前に出るのは怖い。公園で誠慈君は「自分が恥ずかしい」と泣いていた。彼にも私のように弱い心があると知ったから、1人で学校に来るの、怖いんじゃないかなと心配になった。
誠慈君の家は分からないけど、あの公園で待ち合わせて、一緒に学校に行けないかな?
気を遣わせないように内緒で来たものの、ポンコツの私は一度来ただけの場所を覚えられず、迷子になった。そして今に至る。
「余計な心配して、朝から迷惑をかけてゴメン……」
迎えに行くつもりが、逆に迎えに来させるなんて、どれだけ役立たずなのか。自分が情けなくて、しゅんと謝る。
でも、そんな私に誠慈君は
「全然、余計なんかじゃないよ」
早朝の日差しより晴れやかな笑顔で
「男の癖に恥ずかしいけど、萌乃の言うとおり、久しぶりに学校に行くのがちょっと怖かったから、迎えに来てくれて嬉しい」
幸福そうに頬を染めながら、こちらに手を差し出すと
「学校、一緒に行こうか」
「うん」
それから手を繋いで駅まで歩いた。走るほどではないけど、電車に乗るのが遅くなったせいで、ギリギリの時間に到着した。2人で教室に入った瞬間、クラスの子たちの視線がバッと集中する。でもそれは全然、怖い意味じゃなくて
「う、うわぁぁ」
「もしかして2人、一緒に来たの!?」
「良かったぁ!」
愛見さんを筆頭に、女子は泣きながら喜んでくれた。私が愛見さんたちに囲まれている間に、誠慈君は友木君のところに向かって
「……この間はありがとう」
ボソッとお礼を言う誠慈君に
「おー。感謝しろ」
友木君はゲームから顔を上げると、悪戯っぽく笑って言った。
子どもの頃につまづいてから、私はずっと学校が苦手だった。誠慈君や愛見さんたちと仲良くなってからも、決して居心地のいい場所じゃ無かった。
それなのに今は窓から差し込む朝日のせいだけじゃなく、皆が笑っている教室の景色が、とても眩しく温かく感じた。
萌乃とは奇跡的に仲直りできたけど、俺が1週間も学校を休んでいた事実は消えない。きっとクラスの皆は、誰も俺が大袈裟だとか弱いヤツだと笑ったりしない。でもいくら頭で言い聞かせても、自分の醜態を知る人の前に出るのが恥ずかしいという気持ちを消し切れなかった。
週明けの月曜日。今日こそは学校に行こうと、制服に着替えて玄関に向かう。靴を履いて後はドアを開けるだけなのに、最後の一押しが中々できず、しばらく立ち尽くしていると
ピコン。
スマホにメッセージが入った。こんな朝早くに誰からだろう? 画面を見ると、メッセージは萌乃からで
『ここ、どこだろう?』
と画像付きのメッセージ。朝からナゾナゾ? 俺の家の近所みたいだけど、いきなりなんだろう?
俺は首を傾げながら
『うちの近所みたいだけど、なんで?』
意図を尋ねると、すぐに萌乃から返事が来て……。
【萌乃視点】
場所が分かりやすいように、大きな看板の下に立っていると
「萌乃!」
制服姿の誠慈君が、小走りで近付いて来た。私は自分からも近付きながら
「ゴメン。朝から迷惑かけて」
これから学校なのに、こんなところまで迎えに来させてしまったことを詫びると
「それはいいけど。これから学校なのに、どうしてこんなところに?」
誠慈君の質問に、私は気まずい想いで
「……誠慈君を迎えに来た」
昔、不登校になった時、私はそのまま学校に行けなくなった。問題を起こして長く休んだあと、再び人前に出るのは怖い。公園で誠慈君は「自分が恥ずかしい」と泣いていた。彼にも私のように弱い心があると知ったから、1人で学校に来るの、怖いんじゃないかなと心配になった。
誠慈君の家は分からないけど、あの公園で待ち合わせて、一緒に学校に行けないかな?
気を遣わせないように内緒で来たものの、ポンコツの私は一度来ただけの場所を覚えられず、迷子になった。そして今に至る。
「余計な心配して、朝から迷惑をかけてゴメン……」
迎えに行くつもりが、逆に迎えに来させるなんて、どれだけ役立たずなのか。自分が情けなくて、しゅんと謝る。
でも、そんな私に誠慈君は
「全然、余計なんかじゃないよ」
早朝の日差しより晴れやかな笑顔で
「男の癖に恥ずかしいけど、萌乃の言うとおり、久しぶりに学校に行くのがちょっと怖かったから、迎えに来てくれて嬉しい」
幸福そうに頬を染めながら、こちらに手を差し出すと
「学校、一緒に行こうか」
「うん」
それから手を繋いで駅まで歩いた。走るほどではないけど、電車に乗るのが遅くなったせいで、ギリギリの時間に到着した。2人で教室に入った瞬間、クラスの子たちの視線がバッと集中する。でもそれは全然、怖い意味じゃなくて
「う、うわぁぁ」
「もしかして2人、一緒に来たの!?」
「良かったぁ!」
愛見さんを筆頭に、女子は泣きながら喜んでくれた。私が愛見さんたちに囲まれている間に、誠慈君は友木君のところに向かって
「……この間はありがとう」
ボソッとお礼を言う誠慈君に
「おー。感謝しろ」
友木君はゲームから顔を上げると、悪戯っぽく笑って言った。
子どもの頃につまづいてから、私はずっと学校が苦手だった。誠慈君や愛見さんたちと仲良くなってからも、決して居心地のいい場所じゃ無かった。
それなのに今は窓から差し込む朝日のせいだけじゃなく、皆が笑っている教室の景色が、とても眩しく温かく感じた。
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