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アズマ
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「うっわ、マジで美味い!これ食べれただけでも、来た甲斐あったよぉ」
トロトロに煮込まれたビーフシチューに、キャビアの乗っかった何かのパテ、ホタテの貝殻に盛られたシーフードグラタン、それに名前は知らないけど高そうなワインやシャンパンが飲み放題、食べ放題で、最高だよ。
・・・最高なんだけどさ、一人になってからやたら人に話しかけられんのって、何なの?
しかも俺に話しかけて来るやつみんな、なんか、その気のある奴ばっかりなんだよ。
「こんばんは。君、可愛いね。何ていう名前なの?」
だの、
「さっきから見てたけど、肉好きなんだね。良かったら今度一緒に美味しいステーキ食べに行かない?勿論ご馳走するよ」
だの、
「いいね君、すごく好み。ねえこっちで一緒に話さない?」
だの、
ここはゲイ御用達のバーですか!?ってくらい、その手の誘いばっかでさぁ、マルチの誘いじゃなかったのは良かったけど、これじゃ落ち着いて飯も食えないっての!
おかしいなぁ。そりゃ、俺、可愛いしぃ?魅力的だからその気になるのは分かるけどさぁ。こんなお金持ちの集まるパーティで普通こんなにそっちの気がある人って集まるもん?
おかしいおかしいって思いながらも、つい、目の前の美味いものに釣られて、集って来るオヤジや兄ちゃん達を適当にあしらいつつ食べ続けてたんだけど、ついに決定的な事が起こった。
俺がずっと食べ続けてる間も、歌手の○○が来て歌ったり、何かの余興をやってたりしたんだけど、急にクラブみたいな音楽が流れ出したと思ったら、会場全体の照明が暗くなってさ。
いきなりハプバーみたいな雰囲気になっちゃったわけ。
「え?ちょ、何!?」
びっくりして食べる手を止めてきょろきょろしたら、近くにいた男二人がぶっちゅーって濃厚なキスし始めた。それどころか、あっちでもこっちでもキスしたり、お互いの体触りまくっちゃってて、もう、さすがにここで分かった。
要するにさぁ、金持ち主催のそういうアレでしょ、これは。
悪い予感ってこれかぁ~。
あーもう、由貴哉のやつ!何て所に連れて来てくれたんだよ。こんなの、雄大に知られたら、まーたおしおきセックスされちゃうじゃん。
由貴哉も今頃慌てまくってんだろうなぁ。・・・うん、けどまあ、いいやあいつは。
京と新たな扉を開けてしまえ。
「帰ろ」
誰かにロックオンされないように、俺はなるべく気配を消して出口に向かった。と、ポケットのスマホが鳴り出す。やばい、バイブにしておくの忘れてた。
焦って画面を見ると、
「ひぇええ!雄大!」
な、なんでこんな時に限って掛けてくんだよぉ!?
もしかしてどっかから見てんの!?
いやまあ、そんな事、あるわけないんだけどさぁ。
とにかく今は出てらんない。音をミュートしてスマホをポケットに戻すと、あちこちでくっついてる男たちを避けながら、やっと出口に着いた。
だけど、
ふぅー、まるでゾンビから逃げる生き残りの人間になったみたいな気分だったぁ。
なんて思ったのがフラグだったんだよね。
いきなり横から出て来た手に、がしっと手首を掴まれて、
「んぎゃぁああっ!?」
思わず叫んじゃった。
振り向くと、俺の手を掴んでるのは背が高くて、縮れた黒髪に、整った顔立ちの男。
「あ、ああああっ!!あ、あんた」
最後に会った時、俺にデレデレして蕩けてた甘い顔は、今は歪んで強張ってた。
「みっ、湊くんっ・・・!!やっと、やっと会えたっ・・・!!酷いよ、俺の事ブロックしたでしょ!?どうして!?俺、湊くんの事、本気で愛してるのにっ」
「あ、あああ、アズマくんんん!!」
トロトロに煮込まれたビーフシチューに、キャビアの乗っかった何かのパテ、ホタテの貝殻に盛られたシーフードグラタン、それに名前は知らないけど高そうなワインやシャンパンが飲み放題、食べ放題で、最高だよ。
・・・最高なんだけどさ、一人になってからやたら人に話しかけられんのって、何なの?
しかも俺に話しかけて来るやつみんな、なんか、その気のある奴ばっかりなんだよ。
「こんばんは。君、可愛いね。何ていう名前なの?」
だの、
「さっきから見てたけど、肉好きなんだね。良かったら今度一緒に美味しいステーキ食べに行かない?勿論ご馳走するよ」
だの、
「いいね君、すごく好み。ねえこっちで一緒に話さない?」
だの、
ここはゲイ御用達のバーですか!?ってくらい、その手の誘いばっかでさぁ、マルチの誘いじゃなかったのは良かったけど、これじゃ落ち着いて飯も食えないっての!
おかしいなぁ。そりゃ、俺、可愛いしぃ?魅力的だからその気になるのは分かるけどさぁ。こんなお金持ちの集まるパーティで普通こんなにそっちの気がある人って集まるもん?
おかしいおかしいって思いながらも、つい、目の前の美味いものに釣られて、集って来るオヤジや兄ちゃん達を適当にあしらいつつ食べ続けてたんだけど、ついに決定的な事が起こった。
俺がずっと食べ続けてる間も、歌手の○○が来て歌ったり、何かの余興をやってたりしたんだけど、急にクラブみたいな音楽が流れ出したと思ったら、会場全体の照明が暗くなってさ。
いきなりハプバーみたいな雰囲気になっちゃったわけ。
「え?ちょ、何!?」
びっくりして食べる手を止めてきょろきょろしたら、近くにいた男二人がぶっちゅーって濃厚なキスし始めた。それどころか、あっちでもこっちでもキスしたり、お互いの体触りまくっちゃってて、もう、さすがにここで分かった。
要するにさぁ、金持ち主催のそういうアレでしょ、これは。
悪い予感ってこれかぁ~。
あーもう、由貴哉のやつ!何て所に連れて来てくれたんだよ。こんなの、雄大に知られたら、まーたおしおきセックスされちゃうじゃん。
由貴哉も今頃慌てまくってんだろうなぁ。・・・うん、けどまあ、いいやあいつは。
京と新たな扉を開けてしまえ。
「帰ろ」
誰かにロックオンされないように、俺はなるべく気配を消して出口に向かった。と、ポケットのスマホが鳴り出す。やばい、バイブにしておくの忘れてた。
焦って画面を見ると、
「ひぇええ!雄大!」
な、なんでこんな時に限って掛けてくんだよぉ!?
もしかしてどっかから見てんの!?
いやまあ、そんな事、あるわけないんだけどさぁ。
とにかく今は出てらんない。音をミュートしてスマホをポケットに戻すと、あちこちでくっついてる男たちを避けながら、やっと出口に着いた。
だけど、
ふぅー、まるでゾンビから逃げる生き残りの人間になったみたいな気分だったぁ。
なんて思ったのがフラグだったんだよね。
いきなり横から出て来た手に、がしっと手首を掴まれて、
「んぎゃぁああっ!?」
思わず叫んじゃった。
振り向くと、俺の手を掴んでるのは背が高くて、縮れた黒髪に、整った顔立ちの男。
「あ、ああああっ!!あ、あんた」
最後に会った時、俺にデレデレして蕩けてた甘い顔は、今は歪んで強張ってた。
「みっ、湊くんっ・・・!!やっと、やっと会えたっ・・・!!酷いよ、俺の事ブロックしたでしょ!?どうして!?俺、湊くんの事、本気で愛してるのにっ」
「あ、あああ、アズマくんんん!!」
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