離婚前提の仮面結婚のはずが、妊娠してしまったのですが…?〜夫は最初から私じゃない誰かを愛していました。〜

五月ふう

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33. 元、婚約者だ!

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Side ティーナ

 私は、レオンが横たわるベットの横に座り、ぎゅっと両手を合わせていた。

(どうして、、、?なぜ、、、、?)

そんな気持ちでいっぱいだった。だってレオンはもうすでに、赤の他人なのに。私がレオンを不幸に巻き込んでしまったんだろうか。

「大丈夫だよ、ティーナ。脈は正常だし、呼吸もきちんとしている。」

そう言いながらブレイブは、私の手にそっと触れる。爪が手のひらに食い込んで、真っ赤になっていた。

「何が原因かはわからないけど、休めばきっと彼は目を覚ます。今、お医者さんを呼んでいるから、すぐに原因がわかるよ。」

「…はい。」

 そう言うのが精一杯だった。目を覚ましてほしい。レオンを不幸にしたくて、私はあの家を離れたんじゃない。

「…元婚約者と言っていたが、、なぜ彼と婚約破棄することになったんだ?」
 
  私は俯いたまま、答える。

「くだらない、話です。」
「くだらない?」
「私が歌えなくなって、見限られたんです。音楽団に退団させられると同時に、婚約破棄されました。」

ブレイブは、小さく首を傾げた。

「じゃあなぜ彼は、この国に、ティーナを探しに来たんだ、、、?」

「私にもわからないんです。」

 レオンと私の婚約は育ての親が決めたもの。ある出来事があって、私とレオンは親しい関係とは言えなかった。

『母さんが死んだのは、ティーナのせいだ!』

 もう、7年も前の話。だけど、決して忘れることのできない言葉。それでも兄妹のように育ったレオンが大切な存在であることに変わりはない。
  
 その後、お医者さんがきて、レオンの様子を見てくれた。お医者さんは、冷たいタオルを頭に乗せて、冷静な顔をしている。
 
 「あの…レオンは?」
 
「疲労による気絶です。安静にしていれば問題ありません。」

   私は大きく息を吐いた。なぜ、この人がこの国に来たのかわからない。だが、私はこの自分を見捨てた、元婚約者を恨んではいなかった。むしろ自分と遠く離れたところで幸せになって欲しいと願っている。レオンは今は亡き師匠の息子であり、師匠とよく似ている。

「ありがとうございます。」

 頭を下げ、お医者を見送る。

 それから、私は眠るレオンをじっと見つめた。もう二度と会うことはないと思っていた元婚約者。

(レオンは、なぜこの国に来たのだろう?)

「…ティーナ?」

 そのとき、レオンは目を覚ました。その綺麗な茶色の瞳は私を見つめる。それからゆっくりと私の頬に手を伸ばし、触れた。

(え…?)

「レオン…?」
「おいっ。」

 私が怪訝な顔をしたのがわかったのか、それともブレイブの制しが効いたのかわからないけど、レオンは素早く手を引いた。それから、険しい顔で、私に向かって怒鳴る。

「なぜ何も言わずに国を出た?!」

 レオンの言葉に、私は唇を噛んだ。なぜ、レオンに責められなくてはならないんだろ。レオンはティーナを一方的に婚約破棄した男だというのに。できるだけ平静を保って、答える。

「出たくて、国をでたわけじゃない!それになぜ私がレオンに責められないといけないの?私たちは他人でしょ?」
「元、婚約者だ!他人ではない!」
「元婚約者なんて、誰よりも他人だよ。それよりなぜ、わざわざこんなところまで来たの?仕事はどうしたの?」
「ティーナの借金の取り立てが、ダルトン家に来たんだよ!」
 
 私は強く拳を握りしめる。迷惑をかけるなと、怒鳴りつけるために、わざわざレオンはこの遠い場所までやってきたのか。

「…ごめんなさい。他人だと言って追い払って。」
「そういう問題ではない!なぜ何も言わずに、逃げたのかと聞いている!」

   レオンはひどく怒っている。こんなにレオンに怒られたのは、多分二度目だ。

(なぜ、怒られなくてはならないんだろう。借金は、私のせいではないし…捨てられたのは私なのに。)

「…迷惑をかけたくなかっただけ。ごめんなさい…。」
「たかだか、200万デールだろっ。そのために命を投げ出すなんて、お前は馬鹿かっ!ダルトン家でも、音楽団でも、そんな額、余裕で払えたはずだ!」
「レオンにとったらっっ、たかだか200万デールかもしれない…!でも、私にはっ、頼る場所なんてどこにも無かったんだよ!!」

 そう悲鳴のように叫び、私は家を飛び出した。

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