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第二十四話: 大好きなの

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 「ゆ、ユリウス。」

 セラはそっと、ユリウスの手に触れる。まっすぐにユリウスを見つめた。心臓が大きく音を立てる。自分の思いを伝えるだけなのに、なぜこんなに緊張するのだろう。

 「もう、瞬間移動で神殿に来たらだめよ。」

 「セラ……だが、俺はセラを守るために強くなった。君が大変な時はいつもそばにいたいんだ。わかってくれ。」

 「私も、そうよ。」

 「え……?」

 「私も、ユリウスの傍にいたいわ。だから、私が貴方の傍に行く。」

 ユリウスから受け取った指輪を取り出し、両手でぎゅっと包んだ。

 (私に、勇気をちょうだい。)

 「ユリウスのことが、大好きなの。誰にもユリウスを奪われたくない。」

 「セラ……!」

 「3日前の問いをもう一度聞いてもらってもいいかしら?」

 ユリウスは大きく目を見開いた。それから震える声でセラに尋ねる。

 「セラが大好きだ。俺と、結婚してくれないか?」

 セラは満面の笑みで答えた。

 「はい。」

 ユリウスはセラから指輪を受け取り、ゆっくりとセラの指に指輪をはめた。

 「俺と出会ってくれてありがとう、セラ。」

 強く、セラを抱きしめた。セラはそのぬくもりに体を預ける。

 「出会ってくれてありがとう。ユリウス。大好き。」

 ユリウスはゆっくりとセラから体を離すと、彼女の唇にキスをした。


   ◇◇◇


 その日の夜。セラとユリウスは手を取り合い、月明かりの元、静かに草原を歩いていた。

 「人生で一番月がきれいに見えるよ。」

 「そう?満月が少し欠けているわよ?」

 「だって、セラと手を繋いで見る月が、一番美しく見えるんだ。」

 そう言って、ユリウスはセラを抱き上げる。

 「ちょっと、ユリウス!」

 ユリウスはセラを抱き上げてくるくると回る。

 「ああ、幸せだ。なあ、セラ。セラがそばにいてくれるなんて、俺は世界で一番幸せ者だ!」

 「……私もよ、ユリウス。」

 セラの言葉でユリウスはますます表情を崩して笑う。二人にはお互いしか見えていなくて、最高の幸運に包まれていた。

 ーーーーー二人に危機が迫っていることに気が付かずに。


   ◇◇◇
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