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トクベツな 前編
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「か、書けた……」
七月十三日の夜。
苦戦しながらもコンテスト用の作品を書ききった。
プロット段階から玲衣くんに「これじゃあ多分一万字行かない」と言われてエピソードをつけ加えたり。
いざ書き出してみたら思ったより文字数が多くなって十日たっても終わりまで書けなかったり。
最後には規定の三万字ギリギリ、あと百文字多かったらオーバーしちゃうってところだった。
「あとは明日見直しして、あらすじを書いて……うん、ギリギリ間に合った!」
安心して、ボフッとベッドに寝ころんだ。
学校では相変わらず美乃梨ちゃんたちから嫌味は言われるし、美乃梨ちゃんはコンテスト用の作品を公開更新して早くも完結しちゃってるし。
その美乃梨ちゃんの作品はコンテスト参加作品の中では一番上に表示されてるほど読まれてるし。
気にしちゃダメだって思っていてもどうしても気になって……。
あせって、上手く書けないときもあった。
でもそれを乗りこえて完結まで書けたんだ。
一万字も書けるかなって思っていたのに、どうしても書きたいことを入れて行ったら一万字どころか三万字近くになっちゃったし。
「あ、そうだ。玲衣くんに書けたって報告しておかなきゃ」
締め切り数日前になっても私が書き終わらなくて、玲衣くんヤキモキしてたみたいだし。
それでも早く書けって急かしてこない辺り、やっぱり玲衣くんは優しいな。
「……みんなにも、こんなに優しいのかな?」
ふとそんなことを考えちゃって、モヤッとしたものが胸に広がる。
私以外の女の子にも、玲衣くんはあんなに優しいのかな?
他の子にも、頭をポンポンしたりするのかな?
想像すると、モヤモヤがどんどん濃くなっていく。
イヤだなって思うのは、私が玲衣くんの特別でありたいって思ってるからなのかな……やっぱり。
「あーダメダメ! 今はコンテストのことだけ考えなきゃ!」
声といっしょに心のモヤモヤを吹き飛ばしてスマホのメッセージアプリを開いた。
【コンテスト用の作品、最後まで書けたよ!】
玲衣くんにそうメッセージを送ると、すぐに返事が来る。
【お疲れ様! いつもだったら下読みしてからだけど、今回は時間ないから公開してコンテストに応募しとけよ。俺はサイトの方から読むから】
【うん、わかった】
メッセージを送り返して、私は早速公開ボタンをタップした。
そのまま応募するコンテストにチェックをして更新する。
更新が終わると、丁度一件の通知が届いた。
『あなたの【二度目の初恋】がブックマークされました』
さっそくブックマークしてくれた人がいるみたい。
「……これ、もしかして玲衣くんかな?」
公開しておけって今さっき言われたばかりだから、その可能性は大きいと思う。
この作品を玲衣くんが読んでくれてる。
今までも読んでもらっていたけれど、この作品は私にとってちょっと特別だから……なんだか恥ずかしい。
はじめてのコンテスト参加作品。
受賞なんて出来るとは思っていないけれど、ちょっとは期待しちゃう。
色んな意味でドキドキしながら、今だけは完結の余韻にひたった。
***
一回だけだけれど見直しもして、あらすじも書いた。
そうして無事コンテストに応募出来た私は、また次の作品の構想を練ってる。
三万字近い作品を書けたっていうのは自信にもなったみたいで、次は五万文字を目標にしたいなぁって思ってるんだ。
いずれは十万字くらいの長編も書けるようになりたい。
そのころには、ランクイン出来るくらいの実力はついてるかな?
少しずつだけど自分の成長を感じつつ、教室でノートにネタを書き出していたときだった。
「やっぱり美乃梨はすごいって!」
「コンテストの作品の中でずっと一番じゃん!」
「えへへー。ありがと、私もうれしいんだー」
少しはなれた席で美乃梨ちゃんたちの会話が聞こえる。
思わずチラッと見ると、美乃梨ちゃんの友だちの一人と目が合っちゃった。
その彼女の表情に意地悪そうな笑みがうかんで、嫌な予感がした。
「それに引き換え莉緒ちゃんの作品はパッとしないよねー」
「そうそう。コンテストページの一ページ目にすら載らないんだもん」
あー、はじまっちゃった。
最近の嫌味はコンテストの作品に対してばかり。
美乃梨ちゃんの作品が人気だから、それと比べて私の作品はダメだってけなしてくる。
そんなこと、言われなくてもわかってるよ。
気にしないようにしてるけど、やっぱり気になっちゃって毎朝コンテストページを確認しちゃってるから。
でも、だからこそ次の作品に意識を持って行こうとしてるんだ。
成長してるって実感はあるから、それを糧に次々と作品を書いていくしかない。
「よしっ」
私は小さくかけ声を口にして意識を切り替える。
あとはもう、わき目もふらずノートに集中した。
七月十三日の夜。
苦戦しながらもコンテスト用の作品を書ききった。
プロット段階から玲衣くんに「これじゃあ多分一万字行かない」と言われてエピソードをつけ加えたり。
いざ書き出してみたら思ったより文字数が多くなって十日たっても終わりまで書けなかったり。
最後には規定の三万字ギリギリ、あと百文字多かったらオーバーしちゃうってところだった。
「あとは明日見直しして、あらすじを書いて……うん、ギリギリ間に合った!」
安心して、ボフッとベッドに寝ころんだ。
学校では相変わらず美乃梨ちゃんたちから嫌味は言われるし、美乃梨ちゃんはコンテスト用の作品を公開更新して早くも完結しちゃってるし。
その美乃梨ちゃんの作品はコンテスト参加作品の中では一番上に表示されてるほど読まれてるし。
気にしちゃダメだって思っていてもどうしても気になって……。
あせって、上手く書けないときもあった。
でもそれを乗りこえて完結まで書けたんだ。
一万字も書けるかなって思っていたのに、どうしても書きたいことを入れて行ったら一万字どころか三万字近くになっちゃったし。
「あ、そうだ。玲衣くんに書けたって報告しておかなきゃ」
締め切り数日前になっても私が書き終わらなくて、玲衣くんヤキモキしてたみたいだし。
それでも早く書けって急かしてこない辺り、やっぱり玲衣くんは優しいな。
「……みんなにも、こんなに優しいのかな?」
ふとそんなことを考えちゃって、モヤッとしたものが胸に広がる。
私以外の女の子にも、玲衣くんはあんなに優しいのかな?
他の子にも、頭をポンポンしたりするのかな?
想像すると、モヤモヤがどんどん濃くなっていく。
イヤだなって思うのは、私が玲衣くんの特別でありたいって思ってるからなのかな……やっぱり。
「あーダメダメ! 今はコンテストのことだけ考えなきゃ!」
声といっしょに心のモヤモヤを吹き飛ばしてスマホのメッセージアプリを開いた。
【コンテスト用の作品、最後まで書けたよ!】
玲衣くんにそうメッセージを送ると、すぐに返事が来る。
【お疲れ様! いつもだったら下読みしてからだけど、今回は時間ないから公開してコンテストに応募しとけよ。俺はサイトの方から読むから】
【うん、わかった】
メッセージを送り返して、私は早速公開ボタンをタップした。
そのまま応募するコンテストにチェックをして更新する。
更新が終わると、丁度一件の通知が届いた。
『あなたの【二度目の初恋】がブックマークされました』
さっそくブックマークしてくれた人がいるみたい。
「……これ、もしかして玲衣くんかな?」
公開しておけって今さっき言われたばかりだから、その可能性は大きいと思う。
この作品を玲衣くんが読んでくれてる。
今までも読んでもらっていたけれど、この作品は私にとってちょっと特別だから……なんだか恥ずかしい。
はじめてのコンテスト参加作品。
受賞なんて出来るとは思っていないけれど、ちょっとは期待しちゃう。
色んな意味でドキドキしながら、今だけは完結の余韻にひたった。
***
一回だけだけれど見直しもして、あらすじも書いた。
そうして無事コンテストに応募出来た私は、また次の作品の構想を練ってる。
三万字近い作品を書けたっていうのは自信にもなったみたいで、次は五万文字を目標にしたいなぁって思ってるんだ。
いずれは十万字くらいの長編も書けるようになりたい。
そのころには、ランクイン出来るくらいの実力はついてるかな?
少しずつだけど自分の成長を感じつつ、教室でノートにネタを書き出していたときだった。
「やっぱり美乃梨はすごいって!」
「コンテストの作品の中でずっと一番じゃん!」
「えへへー。ありがと、私もうれしいんだー」
少しはなれた席で美乃梨ちゃんたちの会話が聞こえる。
思わずチラッと見ると、美乃梨ちゃんの友だちの一人と目が合っちゃった。
その彼女の表情に意地悪そうな笑みがうかんで、嫌な予感がした。
「それに引き換え莉緒ちゃんの作品はパッとしないよねー」
「そうそう。コンテストページの一ページ目にすら載らないんだもん」
あー、はじまっちゃった。
最近の嫌味はコンテストの作品に対してばかり。
美乃梨ちゃんの作品が人気だから、それと比べて私の作品はダメだってけなしてくる。
そんなこと、言われなくてもわかってるよ。
気にしないようにしてるけど、やっぱり気になっちゃって毎朝コンテストページを確認しちゃってるから。
でも、だからこそ次の作品に意識を持って行こうとしてるんだ。
成長してるって実感はあるから、それを糧に次々と作品を書いていくしかない。
「よしっ」
私は小さくかけ声を口にして意識を切り替える。
あとはもう、わき目もふらずノートに集中した。
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