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四章 校外学習そして
かどわかし④
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「ってっめぇ、何してやがる⁉」
そう叫んで土足で入って来た陸斗くんは、杉沢さんを殴る勢いで近付いて来る。
実際に殴られると思ったんだろう。杉沢さんは私から離れた。
「おっと、こわいこわい」
そう言って距離を取る。
陸斗くんは殴らずに済んだその手を私に回し、抱きしめてくれた。
抱きしめられて、純粋にドキドキした。
「来たな日高。今度こそ一発殴って――」
空気の読めなさそうなお兄さんがそう言ったけれど、陸斗くんにひと睨みされると黙ってしまう。
「ひぇっ⁉」
……ヘタレだこのお兄さん。
「もう来ちゃったのか、残念」
ヘラヘラと笑う杉沢さんが私を見て続ける。
「もう少しでその可愛い唇奪えたのになぁ」
からかうような言葉だったけれど、ついさっき無理やりキスされそうになったことを思い出し怖くなった私は陸斗くんの袖を無意識にギュッと掴んだ。
「誰がテメェなんかに奪わせるかよ」
そう言って陸斗くんは私を守る様に抱きしめる腕に力を込めた。
離さない。
そう言ってもらえているみたいで、嬉しかった。
キュッと胸の辺りが締まる感じ。
ああ、これがキュンとするってやつだ。
どうしよう、自覚した途端好きが止まらない。
トクントクンと、優しく、でも確実に早く心臓が鳴っている。
きっと、私の顔は真っ赤だろう。
溢れるほどの感情が制御出来なくて、声を抑えるのが精一杯だった。
「まあ、仕方ないか。時間切れってやつだ……面倒なことにはなりたくないしな」
杉沢さんはそう言って萎縮しているお兄さんの方を見る。
……うん、お兄さんのせいで面倒なことになってるもんね。
呆れから、私も少し冷静さを取り戻す。
「それはこっちのセリフだってーの。もう会いたくもねぇ」
陸斗くんの言葉に、杉沢さんは「へいへい」とひらひら手を振った。
ついさっきまで向けられていたからかうような雰囲気すらなくなり、杉沢さんが私たちへの興味を無くしたのが分かる。
陸斗くんもその様子に気付いてか、「行こうぜ」と言って私に立つよう促した。
肩を抱かれ支えられるようにして縁側に行く。
靴を履き終わってさあ帰ろうかと立ち上がると、突然陸斗くんがしゃがんだ――と思ったら突然の浮遊感。
慌ててとっさに掴んだのは陸斗くんの制服の襟部分。
横抱き――いわゆるお姫様抱っこをされてると気付くと、耳元で陸斗くんの声がした。
「首に腕まわして、ちゃんと掴まってろ」
好きな人の声をゼロ距離で聞いて、ゾワワと体が震える。
どうしたものかと思いながら言う通りに彼の首に腕を回した。
重くないのかな……?
そんな不安を吹き飛ばすかのように、陸斗くんはスタスタ歩いて行く。
というか、私一人で歩けるんだけど……。
「陸斗くん? あの、重いでしょ? 私歩けるよ?」
そう提案したのに……。
「俺がこうしていたいんだよ。……連れ去られたって聞いて、気が気じゃなかった」
そう言って私を抱く腕に力が入る。
「またあのバカな舎弟だとは思わなかったけど、俺のせいで巻き込まれたんだってのは分かり切ってたからな」
あのバカなお兄さんで良かったのか悪かったのか……そんな感じでため息をつく。
まあ、お兄さん明らかに不良っぽい感じだったし。
美智留ちゃんたちがどう説明したかは分からないけれど、陸斗くんの中学の頃の関係者だってのは想像に難くなかったんだろう。
「ごめんな。……無事で良かった」
殊勝に謝ってくる陸斗くんに、また胸がキュンッとなる。
「……でもな」
でも、すぐにわずかな怒りが込められた声に変わり、私は身を固くした。
「さっきのはどういう事だ? キスされそうになってたよな? 何でそんなことになった?」
冷たさを感じるほどの眼差しで見下ろされ、私は震える唇で弁解をする。
「あ、私にもどうしてなのか分からないよ? ただメイクしたらあんな風になっちゃって」
「それだ……」
何故か脱力する陸斗くん。
ついでに体にも力が入らなくなったのか私は降ろしてもらえた。
「あのなぁ、お前にメイクされるとゾクゾクするんだよ。真剣な目で真っ直ぐに自分だけを見て来る。あれは、マジでヤベェ……」
思い出すようにそう言った後、何かを耐えるように口元を手で覆う。
そしてしっかりと私を見た。
「男が全員そうなるってわけじゃねぇだろうけど、あの杉沢もお前にメイクされてそう思ったんじゃねぇか?」
「……確かに、そんなことを言ってた気がする……」
ゾクゾクしたとか言っていた様な……?
「まあ、今回は間に合ったみてぇだからいいか……。また会いに来るほどの執着まではなかったみてぇだし」
「はぁ……」
よく分からないけれど、特に問題はないみたいだってことは分かった。
そんなやり取りを終えた頃、複数人が走ってくる足音が聞こえた。
「灯里!」
美智留ちゃんの心配そうな声が聞こえる。
目を向けると、班のメンバーがみんなでこっちに向かって来ていた。
「灯里、良かった無事で」
泣きそうな顔で安堵する美智留ちゃんは、そのまま私を抱きしめる。
さくらちゃんなんてもう涙を浮かべていた。
工藤くんや花田くんも相当心配してくれたのか、私の無事な姿を見てホッと安堵の息を吐く。
「みんな、心配かけてごめんね。何もされてないから、安心して」
実際にはキスされそうになったけれど、未遂だから問題ないだろう。
なんて思いながら美智留ちゃんの背中をポンポンと叩く。
すると安心したからか、それとも私がケロッとしすぎていたからなのか。
美智留ちゃんはがばっと顔を上げて口を開いた。
「もう! 本当に何が何だか。灯里は付いて行っちゃうし、日高は先生には言うなって言うし! 連絡取れたと思ったら日高はすっ飛んでいくし!」
と、どんどん文句が溢れてきていた。
美智留ちゃんの言葉で、先生には連絡していないんだと言う事を知る。
良かった、と思った。
陸斗くんのためにも、騒ぎにはして欲しく無かったから。
「ねえ、聞いてるの? ちゃんと説明して!」
そう叫ぶ美智留ちゃんに、どこから説明するべきかと悩んでいると花田くんが声を上げた。
「いや、まずは急いで集合場所に行こう。ちょっと時間ギリギリになりそうだし」
スマホを見ながらそう言っているのを見て、みんな同じように時間を確認する。
「って、マジでギリギリじゃねぇか⁉ 急ごう!」
工藤くんの声を皮切りに、みんなで走り出した。
そうして走ったおかげで集合時間五分前には何とか到着する。
みんなで息を切らしながら、「そろそろ集まれー」と言う先生の声に従った。
歩きながら外していたメガネを掛ける陸斗くんを見て、私もコンタクトを取ってメガネを掛ける。
他のクラスメートにまで素顔を見せるわけにはいかないもんね。
バスに乗って、みんなで学校へと帰る。
バスの中ではさくらちゃん、美智留ちゃんとも座る場所は近かったけれど、他にもクラスメイトや先生がいる。
そんな中で攫われていたことを話すわけにもいかず……。
結果、学校に着いてから解散となり、明日時間を作ってちゃんと話す。という事になった。
私と陸斗くんは顔を見合わせ、仕方ないかと項垂れる。
班のみんなには陸斗くんの素顔もバレてるし、こんなことになったからには元総長だったことも話さないといけないだろう。
後で予定を確認した後、SNSで連絡を取ろうと言ってこの場は解散したのだった。
そう叫んで土足で入って来た陸斗くんは、杉沢さんを殴る勢いで近付いて来る。
実際に殴られると思ったんだろう。杉沢さんは私から離れた。
「おっと、こわいこわい」
そう言って距離を取る。
陸斗くんは殴らずに済んだその手を私に回し、抱きしめてくれた。
抱きしめられて、純粋にドキドキした。
「来たな日高。今度こそ一発殴って――」
空気の読めなさそうなお兄さんがそう言ったけれど、陸斗くんにひと睨みされると黙ってしまう。
「ひぇっ⁉」
……ヘタレだこのお兄さん。
「もう来ちゃったのか、残念」
ヘラヘラと笑う杉沢さんが私を見て続ける。
「もう少しでその可愛い唇奪えたのになぁ」
からかうような言葉だったけれど、ついさっき無理やりキスされそうになったことを思い出し怖くなった私は陸斗くんの袖を無意識にギュッと掴んだ。
「誰がテメェなんかに奪わせるかよ」
そう言って陸斗くんは私を守る様に抱きしめる腕に力を込めた。
離さない。
そう言ってもらえているみたいで、嬉しかった。
キュッと胸の辺りが締まる感じ。
ああ、これがキュンとするってやつだ。
どうしよう、自覚した途端好きが止まらない。
トクントクンと、優しく、でも確実に早く心臓が鳴っている。
きっと、私の顔は真っ赤だろう。
溢れるほどの感情が制御出来なくて、声を抑えるのが精一杯だった。
「まあ、仕方ないか。時間切れってやつだ……面倒なことにはなりたくないしな」
杉沢さんはそう言って萎縮しているお兄さんの方を見る。
……うん、お兄さんのせいで面倒なことになってるもんね。
呆れから、私も少し冷静さを取り戻す。
「それはこっちのセリフだってーの。もう会いたくもねぇ」
陸斗くんの言葉に、杉沢さんは「へいへい」とひらひら手を振った。
ついさっきまで向けられていたからかうような雰囲気すらなくなり、杉沢さんが私たちへの興味を無くしたのが分かる。
陸斗くんもその様子に気付いてか、「行こうぜ」と言って私に立つよう促した。
肩を抱かれ支えられるようにして縁側に行く。
靴を履き終わってさあ帰ろうかと立ち上がると、突然陸斗くんがしゃがんだ――と思ったら突然の浮遊感。
慌ててとっさに掴んだのは陸斗くんの制服の襟部分。
横抱き――いわゆるお姫様抱っこをされてると気付くと、耳元で陸斗くんの声がした。
「首に腕まわして、ちゃんと掴まってろ」
好きな人の声をゼロ距離で聞いて、ゾワワと体が震える。
どうしたものかと思いながら言う通りに彼の首に腕を回した。
重くないのかな……?
そんな不安を吹き飛ばすかのように、陸斗くんはスタスタ歩いて行く。
というか、私一人で歩けるんだけど……。
「陸斗くん? あの、重いでしょ? 私歩けるよ?」
そう提案したのに……。
「俺がこうしていたいんだよ。……連れ去られたって聞いて、気が気じゃなかった」
そう言って私を抱く腕に力が入る。
「またあのバカな舎弟だとは思わなかったけど、俺のせいで巻き込まれたんだってのは分かり切ってたからな」
あのバカなお兄さんで良かったのか悪かったのか……そんな感じでため息をつく。
まあ、お兄さん明らかに不良っぽい感じだったし。
美智留ちゃんたちがどう説明したかは分からないけれど、陸斗くんの中学の頃の関係者だってのは想像に難くなかったんだろう。
「ごめんな。……無事で良かった」
殊勝に謝ってくる陸斗くんに、また胸がキュンッとなる。
「……でもな」
でも、すぐにわずかな怒りが込められた声に変わり、私は身を固くした。
「さっきのはどういう事だ? キスされそうになってたよな? 何でそんなことになった?」
冷たさを感じるほどの眼差しで見下ろされ、私は震える唇で弁解をする。
「あ、私にもどうしてなのか分からないよ? ただメイクしたらあんな風になっちゃって」
「それだ……」
何故か脱力する陸斗くん。
ついでに体にも力が入らなくなったのか私は降ろしてもらえた。
「あのなぁ、お前にメイクされるとゾクゾクするんだよ。真剣な目で真っ直ぐに自分だけを見て来る。あれは、マジでヤベェ……」
思い出すようにそう言った後、何かを耐えるように口元を手で覆う。
そしてしっかりと私を見た。
「男が全員そうなるってわけじゃねぇだろうけど、あの杉沢もお前にメイクされてそう思ったんじゃねぇか?」
「……確かに、そんなことを言ってた気がする……」
ゾクゾクしたとか言っていた様な……?
「まあ、今回は間に合ったみてぇだからいいか……。また会いに来るほどの執着まではなかったみてぇだし」
「はぁ……」
よく分からないけれど、特に問題はないみたいだってことは分かった。
そんなやり取りを終えた頃、複数人が走ってくる足音が聞こえた。
「灯里!」
美智留ちゃんの心配そうな声が聞こえる。
目を向けると、班のメンバーがみんなでこっちに向かって来ていた。
「灯里、良かった無事で」
泣きそうな顔で安堵する美智留ちゃんは、そのまま私を抱きしめる。
さくらちゃんなんてもう涙を浮かべていた。
工藤くんや花田くんも相当心配してくれたのか、私の無事な姿を見てホッと安堵の息を吐く。
「みんな、心配かけてごめんね。何もされてないから、安心して」
実際にはキスされそうになったけれど、未遂だから問題ないだろう。
なんて思いながら美智留ちゃんの背中をポンポンと叩く。
すると安心したからか、それとも私がケロッとしすぎていたからなのか。
美智留ちゃんはがばっと顔を上げて口を開いた。
「もう! 本当に何が何だか。灯里は付いて行っちゃうし、日高は先生には言うなって言うし! 連絡取れたと思ったら日高はすっ飛んでいくし!」
と、どんどん文句が溢れてきていた。
美智留ちゃんの言葉で、先生には連絡していないんだと言う事を知る。
良かった、と思った。
陸斗くんのためにも、騒ぎにはして欲しく無かったから。
「ねえ、聞いてるの? ちゃんと説明して!」
そう叫ぶ美智留ちゃんに、どこから説明するべきかと悩んでいると花田くんが声を上げた。
「いや、まずは急いで集合場所に行こう。ちょっと時間ギリギリになりそうだし」
スマホを見ながらそう言っているのを見て、みんな同じように時間を確認する。
「って、マジでギリギリじゃねぇか⁉ 急ごう!」
工藤くんの声を皮切りに、みんなで走り出した。
そうして走ったおかげで集合時間五分前には何とか到着する。
みんなで息を切らしながら、「そろそろ集まれー」と言う先生の声に従った。
歩きながら外していたメガネを掛ける陸斗くんを見て、私もコンタクトを取ってメガネを掛ける。
他のクラスメートにまで素顔を見せるわけにはいかないもんね。
バスに乗って、みんなで学校へと帰る。
バスの中ではさくらちゃん、美智留ちゃんとも座る場所は近かったけれど、他にもクラスメイトや先生がいる。
そんな中で攫われていたことを話すわけにもいかず……。
結果、学校に着いてから解散となり、明日時間を作ってちゃんと話す。という事になった。
私と陸斗くんは顔を見合わせ、仕方ないかと項垂れる。
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